WEL COME
とあるレーターの人がゲームの原画を担当したのでちょっぴり宣伝。
とあるレーターの人がゲームの原画を担当したのでちょっぴり宣伝。これは東方projectの2次創作小説です。
本編と離れた内容を、どうかお許しくださいませ。
では、お楽しみください。
―――何やら遠くから小さな音が聞こえる。
その音は規則的に彼女の耳を刺激し、自然と覚醒させるよう促しているようだった。
彼女……そう、レミリアはその音に従うかのようにゆっくりと自分の目を開ける。
視界は良好とは言えず、水の中にいるようにぼやけていた。
実際レミリアの目から見ても、それは完全に水の中といえる状況――。
これは七曜の魔女、パチュリー・ノーレッジの魔法。
治癒魔法らしい。レミリアの傷跡はもうほとんど残っていなかった。
パチュリーが発動させているとすれば術者は必ず近くにいるはず。
体を水の中で回転させ、あたりを見回す。
薄紫の服、白いメイド服が並んでこちらを見つめている。
「……!パチェ!それに…………咲夜!?」
咲夜はレミリアが起きたのを確認すると、パチュリーに魔法を解くよう伝え、レミリアのもとへ駆け寄ってきた。
魔法が瞬時に解け、ゆっくりと布団へ降ろされる。
治癒魔法は裸の状態でないと効き目が薄いため、レミリアは全裸のまま。
咲夜はそんなことは気にも留めず、レミリアへ抱きついた。
「ちょ……ッ!さ、咲夜……?」
「お嬢様っ!ほんとに……ご無事で……ッ!!」
動揺しつつも。いまの状況を判断する。
咲夜は先程の戦闘で気絶させた。
パチュリーは夢幻の世界から帰ってこなかった。
なのになぜこの2人がここにいるのだろうか。
レミリアが考えていると咲夜は涙目で怒ったような表情を作る。
それは敵意からではなく心配からなのだと、いくらレミリアでも理解できた。
「本当に……心配したんですからね……!お嬢様の身に……もしものことがあったら……私はっ……!」
「咲夜……。大丈夫よ。私は死なないわ……。現にこうやって生きているもの。だから……大丈夫」
「……うっく。……ううっ!ううううう……っ!っうあああああ……!!」
咲夜は泣きじゃくりながらレミリアのことを力いっぱい抱きしめる。
レミリアは咲夜の頭を優しく撫で、大丈夫大丈夫と言いながら慰める。
そんな様子をパチュリーは呆れたような、ホッとしたような顔で見守っていた。
しばらく時間が経過していたのか、もう紅魔館に太陽の光が差し込んでいた。
しかしここはレミリアの部屋。当然光など差し込まない。
そう、この紅魔館では咲夜の部屋以外ほとんど光はさしこんでは来ない。
咲夜、美鈴を除くほかの魔女やら妖怪妖精やらは日に弱く、日光が天敵なのである。
そのため治療は紅魔館1階、レミリアの部屋で行われた。
大図書館で治療を行ってもよかったのだが、いつ霊夢と魔理沙の封印(禁術魔法で固められた本の下敷き)が解かれるかもわからない。
今の状態のレミリアに狂った野良マスパ何ぞ食らったりでもしたら、即効で閻魔大王……四季・映姫のもとへ下ってしまう。
パチュリーは紅魔館の住人である以前に、レミリアの大親友。
彼女はレミリアの死―――、それだけは絶対に避けたかった。
咲夜が目を腫らして嗚咽を漏らしている中、治療はだいたい済んだようだ。
狂人にやられた傷も完全に消え、後は喉が渇くだけだ。
レミリアにとって人間の血は命の柱。
あいにくこの部屋にも、紅魔館にも人間は1人しかいない。
だがその人間が咲夜だとさすがのレミリアも躊躇する。
このまま咲夜の血をいただいてしまうべきか。
少しだけならいいだろう。そんな考えも妖怪と人間では大きな差がある。
咲夜はレミリアが戸惑っている様子に気づき、涙を拭きながらそっと近寄る。
「お嬢様……。早く吸ってください……今は私しかいないのですから仕方ありません」
「さ、咲夜!それは駄目!その体では持たない――」
「大丈夫ですよ、お嬢様。パチュリー様に傷は治してもらいましたから……ね?」
本当だ。
レミリアが咲夜の体をじっと見てみると、目立つケガはないどころか完治している。
破れてボロボロになっているメイド服にばかり気を取られ、咲夜の肉体に目がいっていなかったようだ。
咲夜は赤面しながら首を左に傾け、白い首筋をレミリアに晒す。
カリスマであったとしても吸血鬼。
その誘惑からは逃れられない。
レミリアは喉を鳴らし、牙を光らせる。
その牙は咲夜の顔を通過し、血の通う首へと。
「んっ……!」
咲夜は小さな声を漏らし静かに目を閉じる。
優しく牙を食いこませ、咲夜の血液を吸い取る。
血は希少品。
血は供物。
血は糧。
数秒――――――。
もしくは数時間だったかもしれない。
秒単位の出来事が何時間にも感じられる……よくあることだ。
柔らかな肌からゆっくりと口を離す。
牙で吸っていた部分から血の糸が引く。
レミリアの翼が大きく広がり、体が潤んでいく。
それとは逆に咲夜は息荒く、呼吸がやっとのような状態のように見えた。
だが命に問題はない。
息が荒いのは快感からだ。
古来から吸血に伴う快感が与えられるのは、幻想郷誰もが知っている常識。(一部を除いて)
それを好き好んで、血を吸われにくる妖怪の変態も多々。
「咲夜……ありがとう」
「い、いえ……はぁはぁ……このくらいなら…………大丈夫で……す」
「そう……。大丈夫そうには見えないけど……」
高揚し、ほんのりと汗もかいている色気のある顔で「大丈夫」なんて言われても逆にある意味で心配だ。
レミリアはバスタオルを1枚体に羽織り、咲夜を自分のベッドまで運ぶ。
献血までしてもらったのに、このまま先の出来事を問い詰めるのも非道だろう。
いまはぐっすり眠ってもらうのが一番だ。
「お休み、咲夜」
「お……嬢様。私は大丈夫―――いたっ!」
レミリアが咲夜の頭を小突く。
咲夜があからさまに「なんで?」という顔をしている。
レミリアはため息を1回ついた後、ポカポカと咲夜の頭をたたく。
「いた!いたたたっ!や、やめてください!」
「やめてほしいんだったら早く寝る!血を分けてもらったのは感謝するけど、健康管理はなっていなようね。そこから時計の短い針が1周するまで動くの禁止っ!」
「ええぇ!?そんなお嬢様!ひど……うぅ――――?」
騒ぎ過ぎたせいか、咲夜はばったりとベッドに倒れる。
疲労と貧血だろう。当たり前だな。
あんな焦った咲夜、レミリアはいまだかつて見たことがなかった。
それだけ心配してくれたのだろう。
レミリアは咲夜に感謝の気持ちを伝えながら布団をかぶせた。
パチュリーもそれに気付くと、分厚い本を持ちながらレミリアに寄ってきた。
「終わった?」
「ええ。貴女も傍観してないで手伝いなさいよ」
「私に手伝って得はないもの。それに……面倒くさい」
(最悪ね、この魔女婆……)
レミリアが失礼な言葉を思った瞬間、分厚い本の角がレミリアの頭を襲う。
痛さに耐えながらパチュリーの言葉を聞く。
「やっと見つけた。この異変の意味をね」
「なんだパチェも調べていたの?私が動くほどのことじゃなかったのね」
「探すのに苦労した。禁書……まだページを開いていないけど、前の所有者が禁忌呪文をかけた後があるようね。容易に触ると何かが発動しかねないわ」
レミリアは用心深くその禁書を観察する。
古い書物のようで、ところどころ破れている。
だが一般人にも分かるような、強大で何層にも束ねられた魔力を感じる。
「気をつけてレミィ。これはいままでにない大規模異変になるかもしれない」
「上等よパチェ。人間にできないことを私たち、妖怪の力で解いて見せようじゃないの」
こうしてレミリアは初めて異変調査に乗り出したのだった。
待ち受けるのは死か闇か。
どちらにしてもインディアンは1人になるだろう。
悪い林檎はどんな罠、悪戯をしてくるのか。
レミリアはそれが楽しみで仕方がなかった――――。
東方忌霊灯(上)〜紅〜
−終−
これは東方projectの2次創作小説です。
本編と離れた内容を、どうかお許しくださいませ。
では、お楽しみください。
さまよい続けた大図書館。
やっとのことで地下へと続く階段を見つける。
その階段は果てしなく続き、いまにも飲み込まれそうな闇にレミリアでさえ鳥肌が立つ。
パチュリー1人ではやはりこの階段は無理だろう。
となると小悪魔でも連れて行ったのであろうか。
魔理沙はさっき霊夢と一緒に葬ったし、あとは美鈴と小悪魔ぐらいしか夜起きてはいないだろう。
レミリアは暗い階段をタイマツ頼りに奥へ進んでいった。
今思い返すと、幽閉されているはずのフランドールがなぜ図書館にいたのだろう。
焦っていて気付かなかったが冷静に考えればおかしなことだ。
紅魔館はいま、もしかすると異変に陥っているのではないだろうか。
おかしな耳鳴り。おかしな人間。そしてフランドールの解放。
異変調査なんて霊夢担当の仕事。
だが今回だけは霊夢も異変に混ざっている。
レミリアは推測を立てた。
パチュリーが黒幕かもしれない……と―――。
夢幻の世界に行ったという話も、何かの罠。
そう考えると色々つじつまがあってくる。
でもおかしいところはなぜ、そんなことを企てるのかだ。
そんなことをしてパチュリーに利益があるのか。
加えて人間をああまでする意味がわからない。
最悪の場合、いま現時点での紅魔館での味方はゼロに等しくなる。
レミリア1人での異変調査など前代未聞あったもんじゃない。
まず普通に考えて無理だろう。
レミリア自身もそれは感づいていた。
こんなこと……レミリアの親友であるパチュリーがするはずがない。
そう信じ、暗闇の中を血痕とともに奥へ奥へ進んでいった。
地下2階……周りの壁の装飾は剥がれおち、静まり返っている廃れた階層。
レミリアによって、血の吸われた人間の魂が集う場所。
その意味合いではこの階層でレミリアは一番嫌われる存在だ。
夢幻の世界への扉は閉まっていても、そこで待っていればパチュリーが帰ってくるだろうという考えは浅はかだった。
これでは血が尽きる前に生気が吸い尽くされてしまう。
レミリアは初めて味わう“死”という怪物と対峙する。
覚悟の光がレミリアの目に灯る。
人間の魂と吸血鬼。
いまは双方とも決して強い立場ではないが、数で言えば圧倒的に人間の魂が勝っている。
レミリアは自分の帽子を投げ捨て、水色の綺麗な髪を露わにする。
左手がゆっくりとヒトダマに差し出され、得意の宣戦布告の時間。
「さぁ……いらっしゃい。ヒトダマよ。八つ裂きにしてあげる」
「オオオオオオオオオォォォォォ!!!!!」
一斉にヒトダマ達がレミリアに襲いかかる。
魔法障壁が展開されその壁の中でレミリアは反撃をする。
交わる技と業。
カリスマとしての術を体力の範囲内で使い尽くす。
レミリアの体をヒトダマは容赦なく攻めたてていく。
一際未練の強いヒトダマによって、ついにレミリアの魔法障壁は破られてしまった――――。
レミリアはその反動で地面にたたきつけられる。
起き上がる気力もなく、ヒトダマに生気をついばまれる。
「もうダメ……みたい……ね…………」
紅い虚ろな目をゆっくりと閉じながら、順々に名前を口にしていく。
それはなぜだかレクイエム……鎮魂歌のようだった。
「パチェ……霊夢……美鈴……」
魂が大きくかたまり、最後の一撃を――トドメを繰り出そうとしている。
そしてレミリアは安らかに笑みを浮かべ、最期の言葉を口にする。
「さ……く………や……………………」
閉じゆく瞳が瞬間的に最後に見たものは、見慣れた懐中時計だった。
レミリアの耳に小さく秒針の音が響いた――――――――――。
〜続〜
これは東方projectの2次創作小説です。
本編と離れた内容を、どうかお許しくださいませ。
では、お楽しみください。
胸から腹部にかけて突き抜ける痛みに、何度も何度も耐えながら図書館を散策するレミリア。
もう壱時間はたったか。
思考はうまく働かず、赤黒い血ばかりが彼女の行く道を染めていった。
小さな体に疲れが出れば、壁に寄り掛かったりしながらパチュリーを探した。
……
…………
………………
寅の刻をさす時計が紅魔館に音を響き渡らせる。
そろそろ血が切れるころ。
咲夜は気絶したままなので、人間をもってくることすらできない。
加えてあの状態なら気絶していようが、してなかろうが関係のないことだが。
今のレミリアの体では、通常のフランドールの足元にも及ばないだろう。
この図書館、半閉鎖された空間でフランドールに襲われた場合、レミリアに生す術はない。
この紅魔館にいる人間の血を吸わなければ。
その対象とされるものは――霊夢、魔理沙、咲夜。
少しずつ分けて吸えば、そんな多量摂取にはならないだろう。
レミリアは踵を返し、元の場所に引き返すことにした。
壁にもたれながら不自由に歩くレミリア。
レミリアは胸中で、情けないと思いながらも目的の場所へと足を運ばせていく。
やつれたまぶたを擦りながら、フランドールが来ないことを切に願う。
1階につながる階段のうち72個目の階段を通りかかったとき、レミリアのすぐ横を災厄が訪れる。
金髪の髪―――。
洋服の赤―――。
宝石の翼―――。
狂わしき絶望の唄、フランドール・スカーレット。
レミリアは即座に傷ついた翼を使い、フランドールと対峙する。
「やっとみつけたお姉さま」
「……最悪か」
小さな口元をつり上げながら、にやりと勝ち誇ったように笑うフランドール。
それと反してレミリアはうっすらと目に絶望の色が浮かんでいた。
フランドールと今戦えば、1分とて持たないだろう。
何か秘策はないかとレミリアはフランドールをにらみながら、必死に考える。
「そんな怖い目で見なくてもいいのに……ちょっと遊んでもらうだけ」
「フラン……あんたに構ってる暇はない。どいて」
「そんなぼろぼろの体でモノが言える立場?フフフ」
確かに、ここでフランドールを挑発すれば自分が危ない。
ここはわざとおだてて、この場を回避するべきだ。
「フランは可愛いです」
「……へ?」
「フラン……ああ私のかわいい妹フラン……(棒読み)」
「お……ねえさま?」
レミリアであってレミリアでない。
もしかするとレミリアであったかもしれない存在が、言葉を発するごとに印象が崩れていく。
彼女は自分をまるでさっきの咲夜のように、両手で自分自身を抱きしめそのあとにその両手をフランドールに差し出し……。
「あなたを私で溶かしてあげる……(感情的)」
「こ……こわい。こわいよ……」
「さぁ……!(淫乱的)」
「きゃぁぁああ!」
レミリアの激しい言葉責めに耐えかねたフランドールは、図書館の奥へと姿を消していった。
全身の力がどっと抜け、壁にへたり込むレミリア。
迫真の演技に大汗をかいた彼女の体は、だいぶ血の気もよくなってきており吸血鬼の治癒能力も働いてきているようだ。
だが、糧となっている血が切れてしまえば動けない。
早くパチュリーを見つけないと。
レミリアは痺れている手を軽く使い、反動をつけて立ち上がった。
フランドールという最大関門を通過した彼女の瞳は、どこか勝機に満ちていた。
そしてまた捜索が開始される――――――――。
〜続〜
これは東方projectの2次創作小説です。
本編と離れた内容を、どうかお許しくださいませ。
では、お楽しみください。
咲夜は眼光に虚ろな灯を秘めながら、揺ら揺らと体を左右に揺らしている。
たまに呻きながら頭を抱えたり、両手でわが身を抱きしめたりなど、理性を抑えようとしているのだろうか。
しばらくレミリアがその咲夜であるかもわからない、ただの生命体を見つめていると獣のような奇声を発した。
さすがにレミリアも驚いたようで、何歩か後退する。
咲夜の息はどんどん荒くなっていき、そのたびに体をまとう気の量も多くなってきていた。
気がつくとさっきまで本に埋まっていた魔理沙と霊夢が、レミリアの背後何メートルか先からゆっくりと歩いてきているのがわかった。
レミリアはこの時初めて“人間”相手に恐怖を感じた。
「ふふ……あはは………」
「……っ!」
咲夜がなんの脈絡もなくいきなり笑い始めた。
それに続いて他の人間も、くすくすと笑い始める。
咲夜は懐からナイフを1本取り出し、レミリアにその刃を突き出す。
そのあとすぐにレミリアに向かって走り出した。
当然、力も符も用いていない咲夜など赤子よりも簡単に殺れる。
ただレミリアにとって、紅魔館のメンバーにとって咲夜の存在は絶対だ。
レミリアだって咲夜は絶対。
殺すなどという発想は全く思いつかなかった。
ナイフがレミリアの心臓部を貫く。
レミリアは軽く吐血するが、地べたにはへたり込もうとしない。
なぜならナイフなんて彼女に効力をもたないからだ。
吸血鬼を完全に人の手で殺すことのできるものは、ただひとつ。
ホワイトアッシュの杭を心臓に打ち込むことだけ。
だから今咲夜のやっている行為は完全に無駄。
でも、レミリアは確かめたかったのだ。
本当に主従の誓を破るのかどうかを。
そんな希望をよそに、魔性の力はやはりその誓さえも壊してしまうようだ。
早くパチュリーに相談しないと、取り返しのつかないことになってしまう。
レミリアがナイフの突き刺さったまま思案していると、続いて魔理沙と霊夢の拳がナイフの通った道を通り、レミリアの体を突き抜ける。
レミリアは血だらけの唇で微笑し、翼を魔理沙と霊夢に向かって大きく広げる。
2人は本棚に再び突き飛ばされ、また本の山に消えた。
次に咲夜の腕をがっしりつかみ、その翼で一気に図書館の天井を目指す。
咲夜がじたばたと闇雲に動くのを、レミリアは憐れみをこめた眼で見下すとそのまま一気に急降下した。
そのまま咲夜の体のみ地面に落下させる。
普通の人間ならば軽く死んでいるところだが、咲夜ならかろうじて大丈夫のようだ。
ほこりを立てながら静かにになる大図書館。
一体パチュリーはどこへ行ったのだろうか。
レミリアはえぐれた胸をおさえながら、パチュリー捜索に当たることにした。
大図書館を歩きつづけるとさすがにこの体では、体力の消耗が激しい。
だが翼は使い過ぎて、痛んでいる。
レミリアは自分の足を使うのが、こんなに辛いものかと痛感した。
「パチェ〜!パ―――げほっげほっ……!」
人間とほとんど同じつくりの吸血鬼の体。
肺の部分を突き刺されたためか、声が血反吐でつっかえる。
だがレミリアは探し続けた。
あの3人の人間のために――――――。
〜続〜
これは東方projectの2次創作小説です。
本編と離れた内容を、どうかお許しくださいませ。
では、お楽しみください。
レミリアが大図書館の入り口までつくと、何やら扉の向こうから言い合っている声が聞こえる。
この声の主は……博麗神社の唯一の巫女、博麗霊夢。
それに、人間の魔法使い、霧雨魔理沙の声だ。
レミリアは不思議に思った。
夢幻の世界に行ったはずの魔理沙が、なぜ大図書館に戻ってきているのだろうか。
中をのぞいてみれば簡単にわかることだと、レミリアは思い切り扉を開け放った。
『マスタァァー……スパアアアァァーク!!』
「!」
いきなり護符の力がレミリアを襲う。
レミリアは自慢の翼を器用に使い、紙一重で符をかわす。
力が発動した方向を怒りと驚きを込めた瞳で睨みつける。
そこにいたのは当然、魔理沙だった。
レミリアが扉を開く前に、霊夢は横に避けていたらしく左の方向からはオーラを放っている霊夢がいた。
こんなに図書館で暴れれば、パチュリーが許さないだろう。
パチュリーはどこだろうと、レミリアはあたりを見渡してみる。
だがレミリアがいくら周辺を見ても、パチュリーの姿は見つからない。
魔理沙と夢幻の世界に行ったと咲夜に聞いたが、あれはウソだったのだそうか。
いや、主従の関係であるレミリアと咲夜。
そう簡単に裏切ったりはしない。
その関係さえも崩せる強大な力が働かなければ、絶対に崩れはしないだろう。
ならパチュリーはどこに出かけたのだろう。
夢幻の世界にまだいるのだろうか。
そしたらレミリアの立場としても、ちょっぴり危うくなる。
この惨状を見ておいて、なにもしなかったとしたらきっと憤怒することだろう。
レミリアは魔理沙と霊夢を片づけることを、最優先事項に回した。
「そこの人間2人。こんなに私の館の中を荒らしておいて、どういうつもり?責任とってもらうわよ」
「ああ?うるせぇな。お前みたいなちびっこに負けるかよっ!」
「そうね。お茶会の最中に邪魔が入るなんて、神社を掃除するより面倒なことだわ。先にあんたから殺してあげる」
魔理沙はもともとの口調だとしても、何かおかしい。
2人の言葉には生気がなく、目も虚ろだ。
絶対この2人には何らかの異変が起きている。
(調査の必要がありそうね)
レミリアはそっと溜息をつきながら、両手を天に挙げる。
2人は同時に身構えたが、すでにその行動すら無駄だったようだ。
『ミゼラブルフェイト……』
レミリアの言葉とともに、紅く妖艶な光沢を放つ鎖が魔理沙と霊夢を縛り上げる。
そのままひときわ大きな本棚にたたきつけた。
小さな振動とともに、本の雨が2人の人間に降り注ぐ。
悲鳴も上げられないまま、本の山の1部と化した。
霊夢の陰陽玉が、むなしく足元を転がっていった。
レミリアはその陰陽玉を手に取ると、何やら玉から声が聞こえる。
その声に耳を澄ますと、こんなことを文字ていた。
『月は雫、太陽は器、狂気の刻が告げるだろう。終焉の宴は人の素に』
レミリアの脳に難しい言葉が流れ込んでくる。
自分では意味がわからないと確信したレミリアは、さっそくパチュリーを探す作業に移行した。
「パチェ〜?パ〜チュ〜リ〜?パ――――」
閃光が目の前を走ったと思うと、手玉に取っていた陰陽玉が2つに割れた。
光の軌跡を辿ってみると、1つナイフが壁に刺さっていた。
そのナイフをよく見ると、咲夜が使っているナイフと同形のものだった。
必然的に咲夜が犯人だ。
夜ということもあって、図書館内は暗くなっている。
おかげで吸血鬼の目では咲夜を見つけられない。
暗い室内、咲夜の声だけが耳に響く。
「お嬢様……!早く……お逃げになってください。もう……自我が保て……ま……せん」
「……咲夜?」
何かが変だ。
そう感じ取ったレミリアは、翼も使わずに咲夜を探すのに走り始めた。
さっきまで大広間にいた咲夜が、パチュリーを待たずにここに来るなんておかしいことだ。
いつもならパチュリーの許可があるまで、大図書館内には入らない。
レミリアは咲夜の声のした方向に走りつめると、やっと咲夜らしき人物の影を見つけた。
息を切らしたレミリアは呼吸を整え、咲夜に向かって歩みよる。
一方咲夜のほうは、なんだかレミリアから退いているように見えた。
咲夜は走ってもいないはずなのに、不思議と息が上がっている。
レミリアはやっと咲夜の全体像がとらえられた。
「お……ジょうさ……マ」
「……!咲……夜!」
その時の咲夜の瞳は、さっきの2人同様……いやそれ以上に光が消えていた―――――。
〜続〜
これは東方projectの2次創作小説です。
本編と離れた内容を、どうかお許しくださいませ。
では、お楽しみください。
紅魔館のある普通の夜のことだった。
館の主人、紅い月ことレミリア・スカーレットがいつものようにハーブティで喉を潤していると……館に小さな超音波がながれた。
「なに……?変な音が耳に……パチェが何かやらかしたのかしら」
レミリアは小さな不安を心に秘めて、大図書館へ飛翔して向かっていった。
向かっている最中もレミリアの耳には、小さく細かな超音波が鳴り続けておりレミリアはパチュリーに軽く殺意が芽生えた。
彼女が向かっている大図書館とは紅魔館で1,2を争うほどの大きさだ。
500年ちょっと住んでいるレミリアさえも、図書館で迷うことがあるという。
館の大広間にレミリアがつくと、紅魔館で唯一の人間……十六夜 昨夜に出くわした。
レミリアは一端飛ぶのをやめ、華麗に床に着地した。
「あら咲夜。こんな時間に屋敷を掃除なんて……人間はもう寝る時間でしょう?」
「いえ……パチュリー様が図書館から出るまで結構暇だったので……お嬢様はいずこへ?」
咲夜は小刀を仕込んだほうきを片手に、気だるさを抑えていた。
レミリアは妹のフランドール・スカーレットとは違い、メイドには優しい方だ。
人間の体の気遣いも忘れない。
「私は……そう。さっき変な音が流れたでしょう?それをパチェに訊きに行こうと。咲夜も聴いたわよね」
レミリアの質問に咲夜は首を振りながら否定の表現をした。
それにレミリアは少しばかり驚いてから、聴こえたのは自分だけなのかと自問自答した。
耳鳴りなんて、ここ数百年聴いてもいないからその“耳鳴り”自体を忘れてしまったのだ。
レミリアはわからないまま、咲夜に同じ質問を繰り返す。
「咲夜……。貴女は本当に聴いていないのね?……人間には聴こえないのかしら」
「さぁ……?お嬢様に聴こえて、私に聞こえないのも可笑しいですね。やはり、パチュリー様に訊くのが一番早いでしょう」
「そうね……。ありがとう咲夜……今晩は冥界からの風が強いらしいから、毛布をかけて寝なさいよ」
「お気づかいありがとうございます、お嬢様」
その言葉にレミリアは軽く返事を返すと、再び大図書館へ向けて翼を広げた。
館の廊下をまたしばらく飛んでいくと、今度は七色に光る翼……フランドール・スカーレットに出会った。
フランドールは暇そうにあくびをしながら、図書館に置いてあった“人体蘇生ノ書”を読んでいる。
レミリアはフランドールを素早く避けると、そのまま大図書館へ向かおうとする……が、やはり吸血鬼。
敏感なのは血のせいか、フランドールの力なのかは分からいがレミリアのことを逃しはしなかった。
「ちょっと待って、お姉さま」
「忙しいの」
「ちょっと待って、お姉さま」
「忙しいの」
「おい、待てよ」
レミリアはため息交じりに、翼を縮めフランドールに向き直る。
フランドールは本を自分の横に置き、レミリアをニコニコ顔で見つめてくる。
いや、正確にいえば睨んでいた。
「どこ行くの?」
「普通に……パチェのところだけど、なに?」
「ふふん♪どうせさっきの超音波のことでしょう?」
「……やっぱりフランには聴こえてたのね」
フランドールは得意げに自分の髪を撫であげる。
レミリアに感じ取れて、フランドールにも感じ取れる。
そしてパチュリーが聴こえていたのなら、人間には聴こえないということにもなる。
だが、それだけでは人間に聴こえていないという確信は得られないだろう。
人間界にいる者に訊くのが最良の策だ。
レミリアの脳内に浮かんだその人の名前は……博麗神社の普通の巫女、博麗霊夢だ。
確かに霊夢は訊きやすいかもしれない。
それに、いつも異変を感じ取っている霊力の高い霊夢が超音波の音を感知できなかったら、人間に聴こえないということになる。
「そろそろ行かせて。パチェが眠ってしまうでしょう?」
「まぁまぁ、そう急がなくたっていいじゃない。それに、パチュリーは今魔理沙と一緒に、夢幻の世界に行っちゃたわ」
夢幻の世界と言えば、大図書館の地下にある夢幻の門をくぐっていける場所である。
普段パチェリーはヒッキーなので、大図書館からほとんど動かないが今日に限っては何かおかしい。
レミリアは瞳に紅い光沢を光らせながら、いつもより大きく翼を広げ大図書館へ急いだ。
フランドールは呆気にとられて、今度は止めることさえできなかった。
レミリアの逃亡新記録更新である。
「急がないと丑の刻になってしまう……その前に夢幻の門をくぐらないと」
丑の刻になってしまったら夢幻の門は閉じてしまう。
夢幻の門は生物が寝る時間帯に開くことを設定されているため、人間の時間にして午後6時から午前2時までしか開いていないのだ。
やろうと思えば、レミリアの能力で門が閉じる運命をも変えることができるが、そしたらパチュリー達の運命さえもねじ曲がってしまう。
それだけは避けたい。
レミリアは夜の紅魔館を全力で駆け抜けた。
この耳鳴りが、幻想郷を揺るがす大きなきっかけとなることをまだ知らずに…………。
〜続〜