2011年の最終日に当たり、FOSS4Gのトレンドを振り返って思うのは、QGISやGRASSという、デスクトップツールの飛躍的な普及だ。ティッピングポイントを超えたというか、臨界点に達したというか、そんな思いだ。あの東日本大震災に際して、OSGeo財団日本支部のコミュニティは、航空写真の幾何補整をごく短時間で行ったのだが、それを成立させた前提条件として、こうしたツールが普及してきていたことが上げられる。
この、QGISとGRASS、FOSS4G分野のデスクトップツールとして代表的なものであり、いずれも実用に十分耐えうるスペックを兼ね備えている。それを日本でどうやって普及させることに成功したのか、少し振り返ってみる。
今から2年半前、2009年の7月、農環研の岩崎さん(@wata909)から、文科省の宇宙利用促進調整委託費の事業公募のニュースと、その提案骨子をメールでいただいた。岩崎さんのプランは、QGISとGRASSで衛星データを容易に取り扱うべく、QGISとGRASSの日本語化と日本語でのチュートリアル整備、そして成果の普及活動をセットにしていた。日本でのFOSS4G普及、特にデスクトップツールの普及の大きな障害が解消されるという野心的なプランだ。そして、私の会社を含む、OSGeo財団日本支部のアクティブなメンバーが所属する大学、企業等が協力する、OSGeo財団日本支部初の共同プロジェクトという大変魅力的な内容だった。
当時、汎用デスクトップGISであるQGISは、古くからのメニューの一部は日本語になっていたが、度重なる機能強化に伴って英語のメニューが増えていた。豊富な機能を誇るGRASSは、ようやくWindows環境で動作するバージョンが使い物になっていたが、このメニューの日本語化については進んでいなかった。さらに、日本語環境で正常に動作しないコマンドもあった。そのため、当時はQGISやGRASSを誰もが使おうというレベルでは無く、日本ではユーザーが限られたままだった。
早速提案書をまとめ、その結果を待った。しかし、2月以上経っても返事が来ない。ちょうど、2009年8月末に、日本の政治史上に残る「政権交代」が起きた。旧自民党政権が決めた補正予算の執行停止、そして事業仕分けの開始という大揺れが起きていたのだが、その影響でこの選考も一時期停止していたのだとは思わず、当然我々は落とされたものだと思い込んでいた。10月末に、突然採択の通知が届くまでは!
日本支部には、誰1人「専属職員」はいない。全員が社会人あるいは学生として、何らかの”仕事”を持っている。その状況で、FOSS4Gツールの日本語化や普及活動を行うのは容易ではない。大抵は、土日や平日夜間などを使い、ボランティアとして活動している。仕事が忙しければ、活動に割ける時間も減ってしまう。MapServerやPostGISなどのようなサーバー系のツールと違って、QGISやGRASSなどのデスクトップツールは、ユーザーインターフェイスがあり、機能の数に応じて、メニュー、ヘルプ、メッセージなどが多数あるので大変に手間がかかる。堂々と「仕事」として十分な時間を割くことができなければ、容易に達成しがたい。そして、普及活動も同様だ。FOSS4Gを事業の柱に据えている私の会社であっても、売上になかなか結びつかないような活動を業務として行うことは通常はできない。そんな障害を、このプロジェクトはクリアしてくれた。
ここ1〜2年のQGISやGRASSのめざましい利用普及は、文科省のこのプロジェクトが支えになったと言っても良い。
2009年度に開始された3カ年のプロジェクトは、時間や費用の問題を抜本的にクリアしてくれた。以来、特に日本語化が遅れていたQGISは、嘉山さん(@pokopen)が業務として取り組むことが出来るようになってから急加速し、今や世界中のローカライズ率でトップランクを維持するまでになった。大阪市大と帝塚山学院大のメンバーによって、GRASSも待望のベクター系のメニューやヘルプなどの日本語化が進み、さらに日本語Windows7で動作するようになって、利用時の敷居が大幅に軽減された。そして、メンバーが手分けをして、GIS学会、FOSS4Gカンファレンスなどにおいて、QGISとGRASSを使った衛星データ活用の講座を行い、また利用のチュートリアルを作成するなど、これまでにない活発な利用普及活動を行えた。
このプロジェクトは、来年(2012年)3月末で終了する。残された3ヶ月間を有効に活用して、さらに普及に努めたい。
FOSS4Gの世界の進歩はとても早くて、今から当時を振り返ってみるとわずか2年半前とはとても思えないくらいの進歩があるのだが、2011年は本当にこのことを実感した一年であった。日本のコミュニティの力に心から感謝の意を表したい。
この、QGISとGRASS、FOSS4G分野のデスクトップツールとして代表的なものであり、いずれも実用に十分耐えうるスペックを兼ね備えている。それを日本でどうやって普及させることに成功したのか、少し振り返ってみる。
今から2年半前、2009年の7月、農環研の岩崎さん(@wata909)から、文科省の宇宙利用促進調整委託費の事業公募のニュースと、その提案骨子をメールでいただいた。岩崎さんのプランは、QGISとGRASSで衛星データを容易に取り扱うべく、QGISとGRASSの日本語化と日本語でのチュートリアル整備、そして成果の普及活動をセットにしていた。日本でのFOSS4G普及、特にデスクトップツールの普及の大きな障害が解消されるという野心的なプランだ。そして、私の会社を含む、OSGeo財団日本支部のアクティブなメンバーが所属する大学、企業等が協力する、OSGeo財団日本支部初の共同プロジェクトという大変魅力的な内容だった。
当時、汎用デスクトップGISであるQGISは、古くからのメニューの一部は日本語になっていたが、度重なる機能強化に伴って英語のメニューが増えていた。豊富な機能を誇るGRASSは、ようやくWindows環境で動作するバージョンが使い物になっていたが、このメニューの日本語化については進んでいなかった。さらに、日本語環境で正常に動作しないコマンドもあった。そのため、当時はQGISやGRASSを誰もが使おうというレベルでは無く、日本ではユーザーが限られたままだった。
早速提案書をまとめ、その結果を待った。しかし、2月以上経っても返事が来ない。ちょうど、2009年8月末に、日本の政治史上に残る「政権交代」が起きた。旧自民党政権が決めた補正予算の執行停止、そして事業仕分けの開始という大揺れが起きていたのだが、その影響でこの選考も一時期停止していたのだとは思わず、当然我々は落とされたものだと思い込んでいた。10月末に、突然採択の通知が届くまでは!
日本支部には、誰1人「専属職員」はいない。全員が社会人あるいは学生として、何らかの”仕事”を持っている。その状況で、FOSS4Gツールの日本語化や普及活動を行うのは容易ではない。大抵は、土日や平日夜間などを使い、ボランティアとして活動している。仕事が忙しければ、活動に割ける時間も減ってしまう。MapServerやPostGISなどのようなサーバー系のツールと違って、QGISやGRASSなどのデスクトップツールは、ユーザーインターフェイスがあり、機能の数に応じて、メニュー、ヘルプ、メッセージなどが多数あるので大変に手間がかかる。堂々と「仕事」として十分な時間を割くことができなければ、容易に達成しがたい。そして、普及活動も同様だ。FOSS4Gを事業の柱に据えている私の会社であっても、売上になかなか結びつかないような活動を業務として行うことは通常はできない。そんな障害を、このプロジェクトはクリアしてくれた。
ここ1〜2年のQGISやGRASSのめざましい利用普及は、文科省のこのプロジェクトが支えになったと言っても良い。
2009年度に開始された3カ年のプロジェクトは、時間や費用の問題を抜本的にクリアしてくれた。以来、特に日本語化が遅れていたQGISは、嘉山さん(@pokopen)が業務として取り組むことが出来るようになってから急加速し、今や世界中のローカライズ率でトップランクを維持するまでになった。大阪市大と帝塚山学院大のメンバーによって、GRASSも待望のベクター系のメニューやヘルプなどの日本語化が進み、さらに日本語Windows7で動作するようになって、利用時の敷居が大幅に軽減された。そして、メンバーが手分けをして、GIS学会、FOSS4Gカンファレンスなどにおいて、QGISとGRASSを使った衛星データ活用の講座を行い、また利用のチュートリアルを作成するなど、これまでにない活発な利用普及活動を行えた。
このプロジェクトは、来年(2012年)3月末で終了する。残された3ヶ月間を有効に活用して、さらに普及に努めたい。
FOSS4Gの世界の進歩はとても早くて、今から当時を振り返ってみるとわずか2年半前とはとても思えないくらいの進歩があるのだが、2011年は本当にこのことを実感した一年であった。日本のコミュニティの力に心から感謝の意を表したい。









