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本日の探書ニュース 石井孝 『幕末悲運の人びと』 有隣新書 1979

2017年05月15日 | 幕末・明治維新

                   ▲石井孝 『幕末悲運の人びと』 1979 有隣堂新書

 

本日の探書ニュース 石井孝 『幕末悲運の人びと』 有隣新書 1979


本日の探書ニュース 石井孝 『幕末悲運の人びと』 1979年 有隣堂新書 

しばらく、「日本の古本屋」参加の古書店を通じてずっとこの本を探していたのだが、ここ数年にわたり、販売している古書店がみつからなかった。再三の探索の結果ようやく、販売している古書店に行き着いた。いよいよ網にかかって釣りあげられそうである。

以前石井孝の『近代史を視る眼』を読んで、同じ幕末維新研究者の原口清と孝明天皇の死をめぐって論争をしていたのだが、論争のもとになった、石井孝の最初のまとまった「孝明天皇の死」をめぐる論文が掲載されていた本である。

ようやく注文していた古本屋の在庫確認中がとれ、近く送付されることになったが、探索ついでにまずは掲げておきたい。

 

▲ 石井孝 『幕末 悲運の人びと』 1979年 有隣堂新書

 

幕末に悲運で倒れた人びとは多数にのぼるが、石井は、以下の4名について論じているらしい。

目次

Ⅰ 挫折した開国政策の推進者 岩瀬忠震

Ⅱ 反維新に殉じた 孝明天皇

Ⅲ「大君制」創設に敗れた 徳川慶喜

Ⅳ悲運の「徳川絶対主義」設計者 小栗忠順

 

ここに書かれた人物は、時間のたっぷりある人ならば、それぞれの人物について、これからも新資料と新しい視角からの検討もふまえて一冊の本にするべき人たちであると思う。

 

孝明天皇の死は、死の直後から、噂はひろがっていた。権力掌握側の疱瘡による病死発表とは別に暗殺説は民衆の間に静かに語り継がれてきた。

戦前は、皇国思想のもと、厳重な監視下にあったから、孝明天皇の死については暗殺説などは人前では公言できず、ましてや、出版されてはいない。

英国外交官アーネスト・サトウが聞いた噂すら、カットされて、出版されていた。


戦後になって、

1953年 ねずまさし 『天皇家の歴史』 三一新書復刊 1976年

 ▲ねずまさし 『天皇家の歴史』 三一新書復刊 1976年

 

 ▲1954年 『歴史学研究』 1954年7月 173号 で、ねずまさしが「孝明天皇は病死か毒殺か」を発表

 

▲ 1980年 田中 彰 『明治維新の敗者と勝者』 NHKブックス368 日本放送出版協会

 

▲1990年 『日本近代史の虚像と実像Ⅰ』 大月書店 に 原口清 「孝明天皇は毒殺されたのか」掲載

▲1996年 石井孝 『近代史を視る眼』 「孝明天皇病死説批判」(1990年)    吉川弘文館 

 

このほか、大宅壮一が『実録・天皇記』、猪瀬直樹が、週刊文春誌で「ニュースの考古学250 維新前夜の「伝染病」と孝明天皇」というタイトルで書いているらしい。

また、中村彰彦が、『諸君』誌上で、麻倉一矢が『歴史読本』誌で「孝明天皇毒殺説」について書いているようだが、まだ未見である。

石井孝の『近代史を視る眼』収載の「孝明天皇病死説批判」(1990年)については、このブログで、5回にわたり紹介したことがある。   ここ▼

石井孝 『近代史を視る眼』1996 吉川弘文館 田中彰『明治維新の敗者と勝者』1980 NHKブックスほか

石井孝 『近代史を視る眼』1996 吉川弘文館 田中彰『明治維新の敗者と勝者』1980 NHKブックスほか 1-2

石井孝 『近代史を視る眼』1996 吉川弘文館 田中彰『明治維新の敗者と勝者』1980 NHKブックスほか 1-3

石井孝 『近代史を視る眼』1996 吉川弘文館 田中彰『明治維新の敗者と勝者』1980 NHKブックスほか 1-4

石井孝 『近代史を視る眼』1996 吉川弘文館 田中彰『明治維新の敗者と勝者』1980 NHKブックスほか 1-5-1

 

石井孝については、インターネットのウィキペディアにも幕末・明治維新の研究者として掲載されているが、晩年は不遇で、本来は、石井孝の著作歴からしても、吉川弘文館あたりから、著作集ないしは全集が刊行されるべきであったのだが、日本の研究者には珍しい忌憚のない意見を述べる「論争家」であったこと、多くの幕末・明治維新研究者が1990年代以降は孝明天皇の死について沈黙する中、「孝明天皇暗殺説」を堅持した数すくない研究者だったことが災いしているのかと推測する。明治維新前後の国際環境についても、著書も多く、味読すべき研究者であると思うのだが。
 
石井孝 はこの本のタイトルのように、日本の研究者では、申し分のない業績をあげているにも関わらず、日本の政治・文化環境は、彼の業績を称えるのを許さず、学問の評価を暗黙裡に落とさせ、「悲運な」老後を送ったのではなかったろうか。日本の近代王権を語るには今でもタブーが存在しているのではないだろうか。
 
前日に鬼塚英昭 『日本の本当の黒幕』について触れていたのだが、もちろん、鬼塚英昭はこの本の第三章の中に「孝明天皇暗殺事件の真相」について書いている。『日本の本当の黒幕』上巻(111頁~133頁)

以前には暗殺説も高く評価していた田中彰は、1990年代以降になると、自説を修正していた。

在野の研究者を除くと、孝明天皇暗殺説を採用する、幕末・維新の専門研究者は絶滅しているのだろうか?

 つづく

 

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