Jerry Emma Laura Piano

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源太郎、、、あの冬季オリンピックの地へ(完)

2017年03月16日 | 旅行の話

いよいよドイツに別れを告げ、オーストリアのインスブルックへ向かうことになる。距離的には山を越えて100kmもないが、また谷越えの道となる。

昨日は昼前に無事街に戻り、自ら苦労して歩いたわけではないが、疲れてしまった。昼食も各自、そして昼寝をしたが、夜の肉料理に閉口して、軽く飲むだけで就寝した。

雨に祟られたわけではないが、寒さが応えたのかもしれない。重たいカメラは一枚もフィルムを巻き上げることなく戻ってきたので、それも疲れの原因かもしれない。

数時間で高低差2000mを往復したので、肉体の細胞がびっくりしたに違いない。ガルミッシュは標高が600mを超えているので山の天気に結構左右される。

だから、ベストシーズンといっても青空が広がることは、よほど心がけがいい人だろう。霧の中のピークに行けたことだけで良しとしよう。

 

部屋の窓辺に飾ってある鉢植えのゼラニユムの真っ赤な色が、薄曇りをバックにして鮮やかな朝を迎えた。荷物をまとめるほどのことはなく、もういつでも出発できる。

朝食に降りていくと、「おはよう」とすでに教授とAは食べ終わり、珈琲を飲んでいた。

「おはようございます。どうですか風邪ひいていませんか」

「おお、大丈夫だ」

「でしょうね。なんとかと・・・風邪ひきませんから」

・・・・

相変わらず「まずい」朝食だ。それでも二人は源太郎が食べ終わり、珈琲を飲み終わるまで付き合ってくれた。

「今日は移動だけだろ」

「まぁ、そんなところですかね。インスブルックについたら、フンガーブルグからゼーグルーベを経由してハーフェレカー山へ登るゴンドラに乗る予定ですよ」

「また山か」

「ハーフェレカーは2400m弱ですから昨日より500m位低いです。でもインスブルックの標高が600mを切っていますから、ほぼ昨日と同じ標高差になりますね。しかも行き帰りとも高速のゴンドラですから、昨日の夜に飲んでアルコール残っているとやばいですね」

「そうだな。昼飯のビールもほどほどにしておこうか」教授のほどほどの定義がわからない。

「一応、きつけのブランディーは例のフィルムケースに入れて持っていきましょうか」

「いらん」

車はずっとのぼり坂を進み、標高1200mくらいの谷峠を越え、今度は下り坂が続く。そして目の前に広大な空間がみえる。

「インスブルックですよ。真ん中を流れているのがイン川です。インスブルックの中心にある旧市街には黄金の小屋根、宮廷教会、大聖堂、ホーフブルク王宮といった中世の重要な施設があって・・・・特に、ハプスブルク帝国皇帝マクシミリアン1世と女帝マリア・テレジアにこよなく愛されたんですねこの街は。そしてここからブレンナー峠を越えればもうイタリアですよ。そして、インスブルックは、2 度の冬季オリンピック(1964年、1976年)の開催地ですからこれで我々は2か所3回のの冬季オリンピックの地にやってきたことになります」

「源太郎、よくもまあ覚えたもんだな」

「へへ、昨日ガイドブック見てましたから」

「それだけ覚えられるのに、成績はどうだったんだ」

「下から数えないとだめでしたね。そもそも教育者のレベルが低すぎるんですよ。原因は」

「それは俺のことか」

「まぁ、そういうことですか」

 

「結構いっぱい乗り込むなぁ」

「そうですね。ところで、あのはしゃいでる連中はさっきの昼食で結構飲んでましたから、大丈夫かなぁ」

 

ゴンドラはドアを閉じると一気に加速して上がっていく。中間駅まで標高差1300mだ。

するとゴンドラ内の声が静かになり、かすかに「大丈夫か」という声が聞こえる。もう中間点の標高1900mに達した。

乗り換えるためにゴンドラを降りると、一人の男性がうずくまり、二人が解放している。見ると真っ白な顔をして震えている。明らかに高山病だ。

一人がゴンドラ関係者を呼んできて、何やら彼抱え、二人とともにゴンドラ基地まで帰って行った。そして、臨時にゴンドラが下って行った。

「さっきの連中でしたよ。だから飲んでこれに乗っちゃあかんのだよ」

「全くだな」

それから、我々はまた上部ゴンドラに乗り換え、少し歩いてピークまでいった。振り返るとインスブルックの町がよく見える。遠くに空港。蛇行したイン川が止まっているかのようだ。

このイン川は昔よく氾濫したらしいが、地形的に無理はない。

そして再び振り返ると、ライムストーンの山肌がみごとに見える。

これで冬季オリンピックの地への旅は終わる。そのあと田舎町、ザルツブルグ、ウィーンを経て無事帰国した。(それにしても、フイルムの保管が悪かったなぁ)

次の田舎町を最後に掲載しておしまいです。

 

 


源太郎、、、あの冬季オリンピックの地へ(6)

2017年03月16日 | 旅行の話

「どうやって行くんだ」

「普通は登山電車で行って、途中からケーブルで頂上、帰りはケーブルで一気降りなんですが、ガルミッシュへの帰りのことを考えて、逆コースをとります。それより天気が崩れるというから、一気に勝負します。ですからゴンドラで標高差2000mを10分ほどで上がりますよ」

「むちゃくちゃだなぁ」

「ええ、我々は山に慣れているし、高山病には無縁ですから、大丈夫でしょ」

「まぁな。それで昨夜は酒の量を抑えていたのか」

「そうですよ。アルコールが残っていて、朝飯も食べないで、この高度差を駆け上がると絶対に高山病になりますからね。でなければ登山電車でゆっくり上がりますよ」

「そうか。まぁ、俺の教えを守っているな」教授に教えられた記憶などない。それより彼のウインドブレーカーでは絶対に寒いはずだ。ベストシーズンだが、この時間の頂上は氷点下のはず。

タクシーはEibseeに間も無く着こうとした時、頂上がガスっているのが見えた。

 

往復共通券を購入し、グットタイミングで我々しか乗っていないゴンドラは一気に上昇を始めた。「おい、霧がかかっているぞ」

「ですね。我々は晴れ男、あのユングフラウ、エベレストも青空でしたが、今回はダメですね。ということは誰かが雨男ということですね」

「俺と源太郎が晴れ男。ということはお前だな」二人はAを見つめた。

「えっ。まあ。山に来て晴れたことはあんまりないんですよ」

「やっぱり」まぁこれも仕方ないことだ。

 

「なんて寒いんだ」

「でしょ」

「それに何にも見えないじゃないか」

「落ちないでくださいよ。足元の下は、何にもないんですから」

「源太郎、写真撮れ」

「いやですよ。こんな状態で私のカメラ壊れちゃいます。それより教授のパカチョンで撮りますから貸してください」

「そうか。いいよそれで」

彼はポーズを決めた。晴れれば向こうに金色の十字架があるんだが・・・とにかく震えるくらいに寒い。同じような考えの東洋人が写真撮影に望んでいたが、お互いに退かないから、「とにかく撮影しろ」ということで意味ない記念撮影をパチリ。

 

「おい、帰るぞ」

「そうですね」じゃ今度は別ルートで行きますよ。別ルートは登山電車の上部駅まで降りてゆく。しかも風があるから揺れる。これ以上揺れたら降りれなくなるので、とにかく運を天に任せた。

接続する登山電車10:00発。これに乗れば昼前に街に着く。また「昼飯は」というに違いない。

出発前に「源太郎。お前の記念撮影をしてやる」と珍しく撮影してくれたが、なんだこのボケボケは・・・・

下山する電車はガラガラ。要はこんな日にここに来るのが「アホ」ということだ。そして車両に乗り込む前に見た「ラック」があまりにも貧弱なので大丈夫かと思いつつ車内の暖かさに幸せを感じた。

電車の中に入って体温が復活した教授は元気になった。

 

明日は、峠越えをして、次の冬季オリンピック開催地のグルノーブルへ。そしてイン川を見下ろす山に登る(またロープウェイ)。明日は天気になぁれ。(続く)



源太郎、、、あの冬季オリンピックの地へ(5)

2017年03月16日 | 旅行の話

「教授、今日はお疲れ様でした」

いつものメンバーとナイトキャップの会がまた源太郎の部屋で開かれている。

ここから、時間を9時間ぐらい巻き戻します。

 

「おい源太郎、昼飯はどうなっている」

「今日の食事は、発表や会議があるので、それぞれ昼食をとってくださいと言っていましたよ(覚えておけよボケ)」と優しく答えた。

「で、どうすりゃいいんだよ」

「この街は観光地でもないのでレストランが小さいし、やっているかもわかりませんよ。1食ぐらい抜いたって死にはしませんよ」

「俺は発表で疲れたんだよ。レストランを探せよ」

会場のロビーを見渡すと、欧米人はさして焦っている様子もなく、コーヒーを飲みながら談笑している姿が見て取れる。アジア系の人たちは群れをなし、どうする、こうすると行き先に悩んでいるようだ。

 

「仕方ないなぁ。川沿いの小さなレストランですが、四席確保してありますよ」

「早く言えよ。さぁ行こう」この声が大きかった。その声を聞き、教授を知っているグループは、「後をついていけば昼食ができるぞ」とぞろぞろついて来ていたようだ。源太郎はAと先陣を切って歩いていたのでそれを知らなかった。

 

「さっき予約していました源太郎です」源太郎は会議を抜け出し(プライベート旅行だから問題ない)朝の散歩で見つけた川沿いの小さな感じの良いレストランに予約を入れていた。奥の川面が見える四人テーブルが綺麗にセットされていた。

 

「教授、どこの店ですか」

「ああ、源太郎がセットしている店に行く、お前らも来ればいい」また、いい加減な会話をしたのが問題の始まりだった。

教授らが店に着くと、「おい源太郎、お客さんが増えたぞ。店先のテーブルでいいじゃないか」

「バカじゃないか。俺は四席予約していたと言ったじゃないか」

「席が空いているんだから、いいだろ」

 

店のオーナーにこの内容を説明すると「一番良い席をセットしていたのに、それはないよ。あっちの席にするのか」「申し訳ない。この席に二人でいいかい」「それは構わないよ」となんとかなだめ、Aと席に着いた。表側の連中のテーブル席では大きなビールジョッキが早速配膳され元気な声を上げている。

 

Aと源太郎が座った席は、綺麗なテーブルクロスの上に花が飾られ、レースのカーテン越しに川面が見え、わずかだけれど水の音さえ感じられる贅沢な空間だった。オーナーが自ら対応してくれる。お互いにハウスワインをお願いし、すでにお願いしていたトラウトのムニエルをゆっく味わった。

「源太郎さん、いいんですかね。あっちをほっといて」

「冗談じぁない。ここまで来て新橋のサラリーマンできるかよ。だから日本人は嫌いなんだ。あれじゃ道ゆく人たちが、東洋の猿が昼間から宴会開いていると思うじゃないか」

「東洋の猿は言い過ぎですよ。せめてニホンザル」

「バカだなぁ。そんな希少な猿と一緒にしたら、ニホンザルが迷惑だよ」

「それにしても、このムニエルうまいですね。この店知っていたんですか」

「知らないさ。この店どころかここは初めてだし、当たりくじというか、散歩の時に出会ったおじさんのおかけさ」

「でもドイツ語でしょ」

「あぁ、簡単さ。fischとrestaurantだけ単語を覚えて入れば、あとはイタリア人特有のジェスチャーでOK」

「源太郎さんはイタリア系でしたっけ」

「ああ、1/16だけど(笑)、そう思って入れば、どこの国の人にでもなれるのさ。足の長さと鼻の高さは負けるけど、15/16が東洋だから・・・」

 

「ほんと美味しい。魚が食べたかったんですよね」

「だろ、これならUさんを誘えばよかった。教授に食わせるくらいなら・・・それに比べあいつらはまた肉とビールかよ」

「ですね」

「ところで、明日の予定はどうなっているの。会議に出るの」

「どうされます」

「私もあなたもプライベート参加だし、あの会議に出たところで専門外だからドロンしようと思って。実は朝ちょっと早いけど、ホテルからタクシーで山岳鉄道の基地まで行って、ドイツ最高峰の山に登ろうと思うんだ」

「登山ですか」

「いや、歩かないよ。山岳鉄道とケーブルだね。行きませんか」

「行きます。行きましょう」

「詳しくは夜に、教授に内緒で」

 

で、9時間進めます。

「源太郎、明日はどうなる」

「えぇ、私はフリータイムでからちょっと出かけてこようと思っています」

「一人でか」

「ええ、一人が気楽ですから」

「どうせ教会にでも行って、懺悔か、パリでもそうだったなぁ」

「Aはどうする」やばい、尋問が始まった。

「私は、ブラブラ散策しますよ。教授は会議ですよね」やばい、導火線に火をつけた。

「俺か、会議は終わって夕方まで暇だ」

「そうですか、ゆっくりなさってくださいよ」

「なに、お前ら何か企んでいるだろ」

「いいえ、ゆっくり寝ていますよ」

 

翌朝、二人は一番早く朝食をとって、指定した時間にタクシーが来るのを待っていた。さすがに、昨夜も飲み会があったので誰も起きてはこない。ところが・・・・

「お前ら早いな」

「教授こそ早いですね」不覚にもパーテーションの陰で教授の存在に気づかなかった。

「その格好。どこに行くんだ」

「ええちょっと。散歩ですよ」

「訳ないだろ。寒くもないのに二人ともそのセーターはなんだ」

「寒いですよね」「何か隠しているな」

・・・・

「そのリュックは、源太郎、そのカメラはいつもは持ち歩かないだろ。どこに行く」

・・・・

「お客様、タクシーがまいりました」タイミングが悪すぎる。従業員が声をかけて来た。

「ありがとう。すぐに行きます」仕方ない話すか。

「実は、ここには山岳鉄道の起点で、ドイツ最高峰の山に行けるんですよ。ツークシュピッツエ山で3000mをちょっと切る山ですが、山頂まで登山鉄道とケーブルで行くんですね。じゃ行ってきます」

「なにぃ。ちょっと待て、5分待て。すぐ来るから」と教授はダッシュで部屋に戻って行った。その速さは尋常ではない。「お前は、ジャイアンか」

「さぁ、いくぞ」とさっさとタクシーに乗り込んだ。

「その軽装で行くんですか」

「大丈夫だよ」

結局、教授と行動する羽目になった。人間油断は大敵である。(続く)