PRIMO信号処理研究所 / Synchro PRIMO Lab.

周波数測定、位相差測定に関する新しい数理。
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瞬時周波数の定義でおこるジレンマ

2017-04-22 02:43:45 | 信号処理

  まったく同じ振幅で異なる周波数の2つの信号を混合した際の「瞬時周波数」はどう計算すべきか。

 三角関数の和積の公式から sinθ1 + sinθ2 =sin (θ1+θ2)/2  * cos(θ1-θ2)/2  となるのですが、これは、「2成分の信号」と「1成分に振幅変調された信号」は、本質的に区別できないこと意味しているのではないでしょうか。

 つまり、瞬時周波数と瞬時振幅を正確に測定しようとしても、このジレンマの答えを整理することが先決だと考えています。実際、振幅が同一で周波数が異なる2成分の瞬時周波数はややこしい形をした公式になっています(解析信号で考えると導出できます。面倒です・・・) しかしこのアプローチでは、「位相角が微分できない箇所」が発生してしまいます。 ここでもう一歩踏み込むと・・・「1サイクルでの平均値」は計算でき、これは周波数1、周波数2の平均値になり、前述の「和積変換」と同じ答えがでてきます。

 つまり、Fourier変換で複数成分の和と考えているかぎり、上記のジレンマには気づきません。最近はやった解析信号で得られる「瞬時位相角θ」の微分から ω=dθ/dt とやってもやっかいな問題に出くわしてしますのです。基本周波数F0は、瞬時周波数を「1周期」で平均して計算できるなら、既知の常識と一致します。しかし、1/2 周期の信号が交じると、解析信号の軌跡(閉曲線)が2周で閉じる形となり、「どこまでが1周期?」という問題が発生します。

 このような瞬時周波数に対する疑問・考察は 1990年後半から2010年あたりまでIEEEでちらほら見かけましたが最近はめっきり。

 もしやと思って「三角関数」の発展の歴史を調べてみたのですが、チェビシェフ級数でさえ 19世紀末。1900年をすぎて電子回路技術と理論が急成長。その間に、その次代で知られていたさまざまな手法が導入されたのでしょう。想像ですがその1つがリサージュ図。図形の外形から位相差がわかる便利なものでししたが、その閉曲線に着目した数理は登場していません。 その理由も考えてみたのですが、電磁気でならう「グリーンの定理・ストークスの定理」で面積分・閉曲線の積分がひとつの傍証。ストークスはマックスウェルと同時代の人で、マックスウェルの良き相談相手だったらしい。なので体系がまとまってくるのは19C末だったでしょう。

(追記) 上記の考えは、D論を書くときから気付いており、"Die Singularitaten Der Lissajous'schen Stimmgabelcurven" (私訳:音叉のような形状をとるリサージュの特異点)という古書を購入、読んでみました。x(t) = sin (at+ b) のように「周波数項」と「初期位相項」にわける考えはありますが、Lissajous軌跡の形状の分類にページを割いており。当時の数学では「閉曲線」や「閉曲線面積」に着目するには無理があったような印象です。

 https://www.bookdepository.com/Die-Singularitaten-Der-Lissajousschen-Stimmgabelcurven-1875-Wilhelm-Braun/9781168311795

 こう考えると、(私が試みた)ある軌跡の「面積」「軌跡からの面積算出」というのは、19C後半から20Cにかけて可能になってきたのであって、オシログラフの登場した1920年にはほとんど知られていなかったことになります。 その後・・・もし・・・位相差測定を時間差測定で代用できる技術が一般化していたなら、位相差計算の数理をまともにあつかった研究が無かったとしても不思議ではありません。

 現代の研究者・エンジニアは先人たちの考えた手法を身に着けています。しかし、時代背景や技術開発のながれに取り残された分野はどこかにあるはずです。もしあるとしたら、「みんな知っていること」ではなく常に疑問をもつ・・・心がけで真理をみつける心構えが必要だと思うのです。

 もうひとつ苦言を呈するなら、FFTの乱用。任意の波形を正弦波の和として考えると実用上の威力は抜群です。しかし、もともとFourier級数は微分方程式を解くための方法であって、その後の数学者達によって現在のFourier積分となり、Freuency-Timeドメインの解析が可能になったのです。Wiener, Gaborのように数式だけでやっていればよかったのかもしれませんが、1950年以降、計算機科学で有用性が見直され、1964年? のFFTの登場で一気にブレークします。 しかし元々周波数を測るための道具でなかったFourier Transform がF0推定に使われることには、未だに違和感を覚えます。「基本周期とは何か」という Fundamental な議論が不完全のように私には見えるのです。。。

  上記の「2成分の瞬時周波数」、三角関数の和積変換からは、「F0は2つの周波数の平均」となりますが、一カ所で位相角φが微分できない点をどう解釈するのか・・・ 今後成分を増やしていくと「特異点」がどんどんでてくるでしょう。

 

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