福島県知事選挙と県議会議員選挙が10月26日、終わりました。佐藤県政の継続を訴えた内堀雅雄氏が新しく県知事に選ばれ、また県議補欠選挙では前市議の自民党新人が初当選し、約1年間の任期を務めることになりました。今回の選挙は、原発の再稼働や輸出など原子力エネルギーにしがみつく国政に、原発事故被災地からエネルギー政策の転換をせまるという意味でも大切な意義がありました。選挙後に「原発の再稼働や輸出は県知事選の争点にはならない」という声も聞かれます。この選挙の結果から何を学び、本市にどういかすのか、考えてみます。
(伊藤浩之)
■自民本部が恐れた原発の争点化
そもそも今度の県知事選挙で、原発問題を争点にしたくなかったのは安倍政権でした。滋賀県知事選挙で優勢が伝えられていた自民党の推す候補者が落選しました。自民党の県議は、7月1日の集団的自衛権容認の閣議決定で「潮目が変わった」と述べたことが伝えられています。
国政選挙がない中で、有権者に手痛い審判をくだされた安倍政権は、続く福島、沖縄の知事選挙に懸念を抱きました。一連の選挙での敗北は、政権の致命傷になりかねない。その事態を避けるために、福島では「勝てる候補者」にこだわりました。
その姿は異常でした。佐藤県政に問題があると考えた福島県連が、独自に擁立した人物を自民党本部が引きずりおろし、後に起意を表明した内堀氏の支援にまわったのです。
福島県での自民党の敗北が、原発の再稼働や輸出をすすめる政策の足かせになると考えたからに違いありません。「原発の再稼働や輸出」が争点にならないどころか、全国的な視点から見た福島県知事選挙の最大の争点は、ここにあった。一連の経過が示しています。
また、この経過は、自民党単独では選挙に勝てないと自民党本部が考えたことを示します。自民党は県知事選をたたかわずして敗北したといえるでしょう。
■選挙結果が示すもの
知事選挙では原発問題がどのように議論されたでしょうか。
すべての候補者は県内原発はゼロにすることを公約しました。一方、原発の再稼働など県外の原発については、主張が割れました。
内堀氏は、「再稼働には国民的議論が重要。その論点を提示するため、福島の現状、原発災害とは何かを発信し続ける」としました。県外原発には論評しないという姿勢です。
一方、他の候補者は再稼働に反対する立場でした。このうち熊坂義裕氏は、「全ての再稼働を停止すべき。将来の日本が卒原発社会を目指すべきことを主張すべき」としています。
この熊坂氏が8月15日の立候補表明後約2ヶ月の活動で約13万の得票を得ました。再稼働反対の候補者全体では約20万票の得票です。
他県の原発問題に関する論戦を自民党政権が回避しようとする中で、知名度で遅れをとる候補者が出した結果です。まともな論戦があったなら、選挙結果は違った結果になったのではないか。そう思えてなりません。
■県議補選でも
同日選の県議補選の結果からも、そのことが見えてきます。
補選は、日本共産党の吉田えいさく候補、自民党の木田孝司候補、無所属の佐藤健一候補の争いとなり、自民候が当選しました。
ただこの当選も、過去の選挙の流れの中で見ると、自民党が後退した結果だということを見ることができます。
2009年度の県議選で、合計で48%の得票を得ていた自民党が、今回は40%に後退しました。
一方、日本共産党は約15%から27%に得票を伸ばしています。
日本共産党は、この選挙で「市民の願いを県政に届けると同時に、原発再稼働や消費税増税を許さないため安倍政権にきっぱりとした審判をくだしましょう」と訴えました。
ある有権者が、「なんぼ選挙をやっても、社会保障がよくならない。苦労してきたものに報いる政治ができないことが頭にきている。今度の選挙にはいきません」と怒っていたように、現在の政治への批判を棄権という行動で示した方もいました。
一方、今の政治への怒りを吉田候補の訴えへの共感で示した有権者もいました。その結果、吉田候補の得票増につながったと言えるでしょう。
■原発事故の実態全国に
事故の対応でトラブルが続く東京電力福島第一原子力発電所。3年6ヶ月が過ぎても、たび重なるトラブルが発生し、いわき市民をはじめ県民に不安と不信を拡大させています。また風評被害をもたらし、県民を苦しめ続けています。
その中での再稼働の動きに、ある有権者は「福島の実態を全国の人は知っているのだろうか」と疑問を投げかけていました。
事故の発生から時間がたつほど、全国に発信される原発事故の情報は細くなっていきます。県内では今でも連日ニュースになる原発事故も、全国になれば情報量は圧倒的に小さなものになっています。
そうした時だからこそ、原発事故の実態を、市民の怒りの視点から全国に向けて発信し、原発の再稼働をはじめとした国のエネルギー政策に変更を求めた。今回の選挙に示された有権者の意思だと思います。
本市にも、こうした立場から全国に向けて情報発信をすることを求めています。
交通安全・大人への注文が耳に痛い/交通安全市民大会
10月28日、いわき市交通安全市民大会が開かれました。大会では、交通安全に業績のあった個人や事業所を表彰するとともに、小中学生の交通安全作文とポスターコンクールの表彰を行いました。また、交通事故の根絶に向けて、全席でのシートベルトやチャイルドシートの着用、飲酒運転の追放などを盛り込んで交通事故の根絶を呼びかける「交通安全市民の誓い」を採択しました。
さて大会では、金賞を受賞した交通安全作文とポスターの受賞者が、作品の披露と創作の背景などを発表します。聞いていると耳に痛い内容でした。
特に考えさせられたのが、作文の小学校低学年の部で金賞を受賞した小学3年生の女子児童の「交通安全について」という作品でした。
子どもたちの危ない行動を指摘するだけでなく、大人の行動にも問題点を指摘していました。
飛び出しや赤信号での横断など、「大人の人がそんなことをしたら、小さい子はまねをしてしまうと思うので、よくないと思います」と大人の行動を戒めます。
そして自転車の乗り方では、ヘルメットをかぶらない、二人乗り、携帯電話を使用しながらの乗車などが見受けられ、「大人の人も小さい子のお手本になるようなのり方をしてほしいと思います。そうすればじこもへるんじゃないかなと思います。楽しくじてん車にのれるように大人も子どもも、ルールを守ってほしい」と訴えます。
さらに車の運転。信号が青から黄色に変わっても猛スピードで走ってくる車、赤信号をつっきる車。「やってはいけないことを平気でやっているのでふしぎでしかたがありません。大人の人がそんなことをしていたら、子どもに何も教えられないし、わるいことを注意もできないと思います」
耳に痛い指摘です。こうした子どもたちの指摘に率直に耳を傾け、自分たちの行動を律しなければならない。そんな思いを持ちながら、作品の発表を聞きました。
作品はこうまとめられていました。「みんながルールをまもって、思いやりの気もちをもっていれば、じこは少しずつへっていくような気がします。じぶんだけがよければいいんだという考えをしないで、かなしいじこをへらせればいいなと思います」
子どもたちの、この気持ちに応える大人でありたいと思いました。
※写真は大会パンフに掲載された小学校高学年部の金賞作品です。
(伊藤浩之)
■自民本部が恐れた原発の争点化
そもそも今度の県知事選挙で、原発問題を争点にしたくなかったのは安倍政権でした。滋賀県知事選挙で優勢が伝えられていた自民党の推す候補者が落選しました。自民党の県議は、7月1日の集団的自衛権容認の閣議決定で「潮目が変わった」と述べたことが伝えられています。
国政選挙がない中で、有権者に手痛い審判をくだされた安倍政権は、続く福島、沖縄の知事選挙に懸念を抱きました。一連の選挙での敗北は、政権の致命傷になりかねない。その事態を避けるために、福島では「勝てる候補者」にこだわりました。
その姿は異常でした。佐藤県政に問題があると考えた福島県連が、独自に擁立した人物を自民党本部が引きずりおろし、後に起意を表明した内堀氏の支援にまわったのです。
福島県での自民党の敗北が、原発の再稼働や輸出をすすめる政策の足かせになると考えたからに違いありません。「原発の再稼働や輸出」が争点にならないどころか、全国的な視点から見た福島県知事選挙の最大の争点は、ここにあった。一連の経過が示しています。
また、この経過は、自民党単独では選挙に勝てないと自民党本部が考えたことを示します。自民党は県知事選をたたかわずして敗北したといえるでしょう。
■選挙結果が示すもの
知事選挙では原発問題がどのように議論されたでしょうか。
すべての候補者は県内原発はゼロにすることを公約しました。一方、原発の再稼働など県外の原発については、主張が割れました。
内堀氏は、「再稼働には国民的議論が重要。その論点を提示するため、福島の現状、原発災害とは何かを発信し続ける」としました。県外原発には論評しないという姿勢です。
一方、他の候補者は再稼働に反対する立場でした。このうち熊坂義裕氏は、「全ての再稼働を停止すべき。将来の日本が卒原発社会を目指すべきことを主張すべき」としています。
この熊坂氏が8月15日の立候補表明後約2ヶ月の活動で約13万の得票を得ました。再稼働反対の候補者全体では約20万票の得票です。
他県の原発問題に関する論戦を自民党政権が回避しようとする中で、知名度で遅れをとる候補者が出した結果です。まともな論戦があったなら、選挙結果は違った結果になったのではないか。そう思えてなりません。
■県議補選でも
同日選の県議補選の結果からも、そのことが見えてきます。
補選は、日本共産党の吉田えいさく候補、自民党の木田孝司候補、無所属の佐藤健一候補の争いとなり、自民候が当選しました。
ただこの当選も、過去の選挙の流れの中で見ると、自民党が後退した結果だということを見ることができます。
2009年度の県議選で、合計で48%の得票を得ていた自民党が、今回は40%に後退しました。
一方、日本共産党は約15%から27%に得票を伸ばしています。
日本共産党は、この選挙で「市民の願いを県政に届けると同時に、原発再稼働や消費税増税を許さないため安倍政権にきっぱりとした審判をくだしましょう」と訴えました。
ある有権者が、「なんぼ選挙をやっても、社会保障がよくならない。苦労してきたものに報いる政治ができないことが頭にきている。今度の選挙にはいきません」と怒っていたように、現在の政治への批判を棄権という行動で示した方もいました。
一方、今の政治への怒りを吉田候補の訴えへの共感で示した有権者もいました。その結果、吉田候補の得票増につながったと言えるでしょう。
■原発事故の実態全国に
事故の対応でトラブルが続く東京電力福島第一原子力発電所。3年6ヶ月が過ぎても、たび重なるトラブルが発生し、いわき市民をはじめ県民に不安と不信を拡大させています。また風評被害をもたらし、県民を苦しめ続けています。
その中での再稼働の動きに、ある有権者は「福島の実態を全国の人は知っているのだろうか」と疑問を投げかけていました。
事故の発生から時間がたつほど、全国に発信される原発事故の情報は細くなっていきます。県内では今でも連日ニュースになる原発事故も、全国になれば情報量は圧倒的に小さなものになっています。
そうした時だからこそ、原発事故の実態を、市民の怒りの視点から全国に向けて発信し、原発の再稼働をはじめとした国のエネルギー政策に変更を求めた。今回の選挙に示された有権者の意思だと思います。
本市にも、こうした立場から全国に向けて情報発信をすることを求めています。
交通安全・大人への注文が耳に痛い/交通安全市民大会
10月28日、いわき市交通安全市民大会が開かれました。大会では、交通安全に業績のあった個人や事業所を表彰するとともに、小中学生の交通安全作文とポスターコンクールの表彰を行いました。また、交通事故の根絶に向けて、全席でのシートベルトやチャイルドシートの着用、飲酒運転の追放などを盛り込んで交通事故の根絶を呼びかける「交通安全市民の誓い」を採択しました。
さて大会では、金賞を受賞した交通安全作文とポスターの受賞者が、作品の披露と創作の背景などを発表します。聞いていると耳に痛い内容でした。
特に考えさせられたのが、作文の小学校低学年の部で金賞を受賞した小学3年生の女子児童の「交通安全について」という作品でした。
子どもたちの危ない行動を指摘するだけでなく、大人の行動にも問題点を指摘していました。
飛び出しや赤信号での横断など、「大人の人がそんなことをしたら、小さい子はまねをしてしまうと思うので、よくないと思います」と大人の行動を戒めます。
そして自転車の乗り方では、ヘルメットをかぶらない、二人乗り、携帯電話を使用しながらの乗車などが見受けられ、「大人の人も小さい子のお手本になるようなのり方をしてほしいと思います。そうすればじこもへるんじゃないかなと思います。楽しくじてん車にのれるように大人も子どもも、ルールを守ってほしい」と訴えます。
さらに車の運転。信号が青から黄色に変わっても猛スピードで走ってくる車、赤信号をつっきる車。「やってはいけないことを平気でやっているのでふしぎでしかたがありません。大人の人がそんなことをしていたら、子どもに何も教えられないし、わるいことを注意もできないと思います」
耳に痛い指摘です。こうした子どもたちの指摘に率直に耳を傾け、自分たちの行動を律しなければならない。そんな思いを持ちながら、作品の発表を聞きました。
作品はこうまとめられていました。「みんながルールをまもって、思いやりの気もちをもっていれば、じこは少しずつへっていくような気がします。じぶんだけがよければいいんだという考えをしないで、かなしいじこをへらせればいいなと思います」
子どもたちの、この気持ちに応える大人でありたいと思いました。
※写真は大会パンフに掲載された小学校高学年部の金賞作品です。