日本共産党いわき市議団

日本共産党いわき市議団に所属する伊藤浩之・溝口民子・渡辺博之・坂本康一各議員の日々の活動や市政情報などをお知らせします。

小名浜港背後地再開発事業―イオンモール水戸内原店を視察

2012-05-08 14:53:24 | 小名浜港背後地開発


 いわき市は、㈱イオンモールと「小名浜港背後地(都市センターゾーン)開発事業協力者に関するパートナー基本協定」を結びました。協定は、計画づくりにイオンモールが協力するという内容であり、計画策定後の開発事業者が決まったわけではありません。
 しかし、同社の提案する構想をもとに計画が進むと、3万5000㎡の売り場面積を持つ大型店舗が誕生し、市内商業に与える影響ははかりしれません。そこで、2005年11月にオープンしたイオンモール水戸内原店が、商店街にどのような影響を与えたかを視察してきました。視察先は、イオンモール水戸内原ショッピングセンター(以下水戸内原SC)、水戸市商店会連合会、水戸市です。



 視察の主な目的は、①イオンモールが目標とする地元商業者を3割入れることの実現性、②営業の長期継続、③周辺への影響、の3点です。
①について
 水戸内原SCの説明では、地元業者の出店は2割程度、しかし同行した水戸市議は片手で数える範囲でしかわからないとのこと。商店会連合会では、イオン側とは「地元」の捉え方が違うのではないかと説明されました。
 出店できない理由としては、①営業時間が午前10時から午後10時と長く家族経営のような小規模店は業務がきつく出店しにくい、②出店は賃貸等のため費用面での折り合いがつかない、などです。
 費用負担については、テナントの賃料(歩合制で10%を基本。状況に応じて話し合いで決定)の他、端末料(イオン専用のレジ)、消火器、共益費の継続的な負担などの説明がされました。
 2011年5月号の雑誌「選択」に掲載された(大阪にある)イオン泉南SCのケースでは、賃料の他、月に営業補償費、売上の1.2%の販売促進費、駐車場負担金、出店者協議会費、ロッカー使用料などのあらゆる名目での負担。これにとどまらず、出店時には「初期費用」として共用スペース内装費、現場管理費、内装管理費、レジスター工事費、消火器設置費用、電話施設料金などの負担があるとのことでした。
 契約内容は、SCごとに異なるとの説明でしたが、商店会連合会副会長は「地元は手を挙げない。一般に固定家賃に変動家賃、共益費などが発生すると、資力、気力、財力、商品、人材に優れていないと難しい」と話します。
 以上からは、少なくとも地元テナント(地元とする判断基準も明確にすべき)出店率を目標通り3割で永続させることが必要であり、そのための地元枠の固定的確保や地元業者への特別優遇策をとらせることなどを考慮すべきでしょう。
②について
 水戸内原SCの敷地は、所有地と借地ですが、借地の場合、事業の撤退がしやすくなります。いわき市では、エブリアの中核店だったダイエーが黒字にもかかわらず、水戸店の閉店にともない撤退しました。いわき店だけになると物流コストが割高になるという理由でした。大型店は、地域や住民のニーズよりも自社ニーズを優先して事業の進退を決めることがあります。こうしたことを繰り返さない、長期営業の継続にとって必要な最良の出店方法を求める必要があるでしょう。
③について
 商店街連合会副会長は、SC出店は「じわりじわり影響した」と話します。商店街では、若い世代が開いた店が崩壊してきた、また通行量が歴然と減少してきたといいます。しかし、これがSC出店に伴うものと直接裏付けるデータは乏しいと話します。大型SCの出店は、ただちに影響を与えることがなくても、地元の小売業者をじわじわと弱らせていくものだということが見えてきます。

 


 いわき市では、これまでの大型店立地や震災などで、商店街はすでに打撃を受けており、大型SCの進出は立て直しをいっそう容易ならざるものとしていくことは明らかです。
 同時に、これまで市がすすめてきたまちづくりとの整合性の問題も出てきます。平一丁目再開発事業やいわき駅前再開発事業も、中心商店街に回遊性とにぎわいをつくることを目的に実施され、莫大な財源が投じられました。あらたに大型SCを誘致することで本市中心部への市民の流れが減少すれば、これまでの投資財源をドブに捨てるようなことになりかねません。
 一方、消費者には大型SCの出店に歓迎の声もあるのは事実です。
 小名浜港背後地への大型SCの進出は、本市まちづくりにとって重要な問題です。現状では事業者と消費者の間には、まちづくりをめぐって意見の相違があります。その時に大切なのは、「本市復興のシンボル事業」という錦の御旗を振りかざして、遮二無二にすすめることではないはずです。
 市は、いわき商工会議所や観光まちづくりビューローを窓口に、経済界の声を広く聴きながらすすめたいと議会で答弁しましたが、その取り組みは緒についたばかり。他地域の事例にも学び、震災と原発事故からの復興という観点から見たまちづくりにとって、小名浜港背後地開発計画はどうあるべきかについての市民的議論をすすめ、大多数が納得できる計画とするようあらためて求めていきたいと思います。



■イオンモール水戸内原SCの立地・施設規模など
 場所は、水戸インターチェンジから車で3分、常磐線「内原駅」から徒歩10分、前橋市と結ぶ国道50号線バイパスに面した交通要衝地。水戸駅から車で30分程度と水戸市中心部からも広域からの集客にも絶好の立地。
 水戸内原SCは、商圏を約14万世帯41万人(自動車で30分圏内)で想定、総事業費160億円。敷地面積125,992㎡、延べ床面積151,688㎡の鉄骨造地上5階建て、商業施設面積71,710㎡、4,000台の駐車場。イオンを核店舗に180の専門店、レストラン、診療所、薬局、理美容店、郵便局、シネマ・コンプレックスを備え、一つの町が丸ごと入っているという印象。