見もの・読みもの日記

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真説・張作霖政権/馬賊で見る「満州」(澁谷由里)

2007-11-29 23:45:49 | 読んだもの(書籍)
○澁谷由里『馬賊で見る「満州」:張作霖のあゆんだ道』(講談社新書メチエ) 講談社 2004.12

 浅田次郎『中原の虹』を読んで、俄然、張作霖という人物に興味を持った。「張張作霖爆殺事件」といえば、中学高校の教科書にも載る(たぶん)大事件である。私は、もっと子どもの頃、マンガの日本歴史シリーズで、この事件を読んだ記憶さえある。しかし、簡単に読める新書や選書で、張作霖を取り上げたものは、本書くらいしかないようだ。

 本書においても、張作霖という「個人」は、あまり明確なイメージで現れない。そもそも資料が乏しいのか、著者が関心を払っていないためか、よく分からないが、たぶん前者なのではないかと思う。

 本書には、小説『中原の虹』と共通する、さまざまな人物が登場する。中でも面目躍如なのが、張作霖の片腕といわれた民政家の王永江。私は、小説を読むまで全く名前を知らなくて、創作キャラか?と思ったくらいだが、実は、金融財政改革・警察制度の整備・鉄道建設・大学設置など、張作霖政権の堅実な実績を、一身に体現する人物であるらしい。彼については、小説よりも本書から学べることが多い。

 一方、好好閣下こと張景恵。小説(第4巻)では印象的な見せ場のある副頭目だが、のちに「満州国」の第2代国務総理となり、敗戦後は人民裁判で漢奸と断じられて、収容所内で病死したという、寂しい晩年が語られている。

 また、本書の冒頭には、1995年にNHKが行った張学良氏への長時間独占インタビューが紹介されている。そうか、張学良氏って、2001年までご存命だったのか! 小説『中原の虹』の読者の何割くらいが、この事実を認識しているだろう。(では、王者のしるし、龍玉は今どこに?)

 全体に散漫な印象の残る本書であるが、興味深く思ったのは、そもそも長江以南の漢族に、満州を「中国の一部」と思う感性は希薄だったという指摘である。しかし、漢族移民の子・張作霖および張学良政権が、日本の介入によって駆逐され、抗日戦争に突き進む中で、はじめて「回復すべき中国の一部」という意識が共有されるようになったのではないかという。

 トリビアをひとつ。満州では匪賊を「胡(鬍=ひげ)子」とも呼ぶ。昔、18人の兄弟が顔にひげを描いて変装し、金持ちを襲って貧乏人を助けた。彼らは「後の十八羅漢である」という(東北馬賊史)。羅漢は匪賊の別名なのか。だから映画「オーシャンズ11」の中国語題は「十一羅漢」だったのか!?

 もうひとつ。張作霖の周囲には、複数の日本人軍事顧問が差し向けられていた。張作霖政権を監視・傀儡化する目的だったと考えられるが、中には張作霖に本気で信頼かつ”寵愛”(→本書の表現)され、ついには日本軍部を離れてしまった町野武馬の例もある。なんだか戦国武将の主従関係みたいである(このひと会津人なんだな)。調べていたら、国会図書館に町野武馬の録音記録があるらしい。うわー貴重だなー。聴いてみたい。
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1 コメント

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拙作サイトの参考にさせていただきました (消印所沢)
2010-05-05 23:40:44
 はじめまして.
 消印所沢と申します.
 唐突にレスさせていただくご無礼をお許しください.


 さて,このたび拙作サイト
「軍事板常見問題&良レス回収機構」
におきまして以下のQ&Aを作成する際,
貴ページを参考にさせていただきましたので,
報告させていただきます.
http://mltr.ganriki.net/faq08d03t.html#19562

 引用の範囲内かと存じますが,
もし差支えがございますようでしたら,
遠慮なくお申し出いただければ幸いに存じます.


 それでは今後ともよろしくお願い申し上げます.
 草々

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