見もの・読みもの日記

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驚きの日本画/川端龍子(山種美術館)

2017-07-06 23:17:08 | 行ったもの(美術館・見仏)
山種美術館 特別展 没後50年記念『川端龍子-超ド級の日本画-』(2017年6月24日~8月20日)

 日本画家・川端龍子(かわばたりゅうし、1885-1966)の初期から晩年にいたる代表作を一堂に集めた回顧展である。会場に掲げられた面長のおじいちゃんの写真を見て、あ、川端龍子ってこんな顔をしていたのか、と初めて知る。私は、わりと最近までこの人を女性だと勘違いしていた(片岡球子と混乱するのである。スミマセン)。作品はよく見ていて、類例のない、あっと驚くような絵を描く日本画家だということは、早くから認識していた。

 本展には、大田区立龍子記念館から、若い頃の作品もずいぶん出品されている。はじめは洋画家を志していたり、雑誌や新聞でモダンなグラフィックデザインの仕事をしていたことは初めて知った。「日本画らしくない日本画」の下地は、このへんにあるのかなと思った。

 龍子らしい大胆な大画面作品の最初に登場するのは『鳴門』。群青の海に白く泡立つ渦の対比が明快である。黒鵜が飛んでいるのが、古い時代の絵巻(二月堂縁起)みたいだと思った。隣りの作品は、起伏の多い大地の上を飛行する巨大な戦闘機。『香炉峰』というタイトルなのは、中国の廬山上空を飛んでいるのだという。黒い頭部と赤い尾翼、日の丸以外、銀色の機体の大半が透明に描かれているのが不思議だったが、地上の野山の緑と茶色が、機体の迷彩色を表現しているという説明を読んで、なるほどと思った。小さな仏塔のようなものが一つだけ見え、画面の端に切れ切れに見える黄色い帯は長江らしい。これは、作者が偵察機に便乗させてもらった経験に基づくのだという。

 さらに目を転じると『草の実』。古代の装飾経のように、濃紺の地に金泥で秋草を描く。正確には、焼金(やききん)、青金、プラチナなど様々な種類の泥を使い分けて、繊細で奥行きのある表現を作り出している。清澄にして耽美。

 後半にもう一つ大画面の『龍巻』がある。天空に巻き上げられた海の生物たちが、逆巻く海に再び落下していく様子を、まるでスローモーションのように描いている。縦が3メートルを超え、壁画のような大画面だが、龍子はもう三尺(90センチ)伸ばしたかったのだそうだ。これは「太平洋」という連作の一だという。『香炉峰』も連作「大陸策」の一だと聞くと、龍子の作品をもっと見てみたくなった。

 ほかにも印象的な作品が多数。大きな金箔を大胆に散らし、地面にたたきつけられた植物を描いた『爆弾散華』には、残酷な美しさを感じた。『夢』は、中尊寺金色堂のミイラに触発されたもの。金色の棺に横たわるミイラの頭部が見え、蝶の群れが待っている。『花下独酌』の歪んだ顔の河童、『黒潮』のトビウオも好きだ。私は初めて見る作品がとても多かった。図録に山下裕二先生が書いているが、「日本美術院系の画家に比べると、展覧会の頻度は極めて少ない」というのは全くそのとおりで、今回、たくさんの作品を見ることができて本当によかった。帰ってから図録を見たら、後期(7/25-)出品の『金閣炎上』(国立近代美術館所蔵)も魅力的である。でも前期の『真珠』、あやしすぎる海辺の裸婦像も見逃せない。

 余談だが、『十一面観音』に描かれた、肩幅が広く胸の厚い、堂々とした観音菩薩像(奈良時代)は、今、どこにあるのだろう? 東博だろうか。 自邸の持仏堂の写真に写っていた、脇侍の毘沙門天像は東博でときどき見るのだが。
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