見もの・読みもの日記

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秋の文化財探訪(3):正倉院展(奈良博)+『吉備大臣入唐絵巻』帰還!

2009-11-04 22:59:34 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 御即位二十年記念『第61回 正倉院展』(2009年10月24日~11月12日)

 文化財探訪ツアー2日目。土曜出勤分を11/2(月)にまわしてのオフである。いつもは、月曜に振替休を割り当てられると涙目なのだが、今回に限っては大歓迎(正倉院展は会期中無休)。正倉院展へは8年間皆勤だが、平日に来たのは初めてかもしれない。8時前に行って、いちばん内側の列に並ぶ。

 奈良博のホームページで「正倉院展」の詳細を見ると「開館:9時」となっているが、通常メニューの「利用案内」に「開館:午前9時30分(その他に臨時に開館時間を変更することがあります)」とあるのは、ちょっと不親切だと思う。さて、この日は、やや観客の出足が遅いように感じたが、8時40分頃には、列も三列に折れ曲がり、例年の土日とあまり変わらない状況になってきた。

 8時50分頃、開場。すばやく状況を判断して、ガラスに張り付かないと鑑賞できない光明皇后御書『楽毅論』に飛びつく。王羲之の臨書としては最高級と言われるそうだが、むしろ私は、女性である光明子が、本書のような名将・名政治家論を、どんな関心で写していたのかが気にかかる。

 続いて、今年の呼びもの『紫檀木画槽琵琶(したんもくがそうのびわ)』へ。裏面の木画も美しいが、表面=捍撥(かんぱち)の狩猟宴楽図がいいなあ。はじめは馬が1、2頭しか見えないが、目が慣れてくると、遠景・中景・近景に大勢の人々が描き分けられているのが分かってくる(でも、遠景の山陰に立ち上がっている虎の姿は、図録写真で、やっと発見した!)。隣りの『琵琶袋残欠』も美しかった。軽やかなターコイズブルーの地色、ぽってりした花文は、唐美人をいろどるのにぴったり。会場には、昭和27年に芝祐泰(しば すけひろ)氏がこの琵琶を演奏したときの録音が流れていた。「第4弦開放」「第4弦第4の柱(じゅう)」…という感じで、1音1音、確かめるように鳴らしていらした。

 と、ここで、ぼんやり足止めを食っているうちに、周囲は人で埋まってしまった。前方に戻ることはあきらめて、とりあえず前へ。西新館の冒頭で待っていた逸品が、見返り鹿の姿を打ち出した『金銀花盤』。直径60センチを超え、想像以上に大きい。それにしてもヘンな鹿だなあ。頭上に載っているのは蓮の花だろうか。図録解説には、唐代の工芸にしばしば登場するとあるが、思い当たらない。金平糖のような金の鋲であらわされた紅葉にも注目。外縁の瓔珞が、とびきり美しいが、これは明治時代の新補だそうだ。

 ほか、面白かったのは『十二支彩絵布幕』、四神を浮き彫りにした『白石鎮子』など。5件出ていた伎楽面は、裏側からも覗くことができて、なるほど、鼻にも穴を開けるんだな、とヘンなところに感心した。今年は「御即位二十年記念」のサービスなのか、見た目の華やかな工芸品の出品が多くて、その分、古文書が少ないような気がした。あと、平日は、小学生の団体なんかも来るんだなあ。何も見られなくて可哀相だと思う。

↓ついに出た、正倉院展オリジナルスイーツ「碁石貯古齢糖(ちょこれいと)」。ただし、モデルになった『木画紫檀棊局(もくがしたんのききょく)(碁盤)』と『撥鏤棊子(ばちるのきし)(碁石)』は、今年は出ていない。2005年に出陳されているので、構想4年をかけて開発されたのかな?(※11/7補記:今年出ている碁盤は『桑木木画棊局(くわのきもくがのききょく)』)


 最後に、個人的には、正倉院の感動も吹っ飛ぶ大ニュースを仄聞。来年4月から始まる平城遷都1300年記念『大遣唐使展』に、なんと、ボストン美術館所蔵『吉備大臣入唐絵巻』が帰ってくるというのである!

 奈良博のサイトには、全く情報がないので、何が目玉になるんだか、見当もついていなかった。そうしたら、正倉院展の会場で、隅のほうに、ひっそり置かれたチラシに曰く、「伝説の絵巻、ついに帰還。」…え、え、え~!! 私は、自分の目を疑った。またチラシに採用されている絵が、地味な場面なのだ。船上の吉備真備の姿も、よく見えないし…。奈良博、50年に1度のGJ!と申し上げてよろしかろう。10年くらい前、同じくボストン美術館所蔵の平治物語絵詞『三条殿夜討巻』が名古屋に里帰りしたときは、期間は短かったが、全部開いて見せてくれたと記憶する。今回はどんな公開方法になるんだろう? 続報が待ち遠しい。

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