見もの・読みもの日記

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宗教と気分/日本の右傾化(塚田穂高)

2017-04-21 23:51:51 | 読んだもの(書籍)
〇塚田穂高編著『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書) 筑摩書房 2017.3

 本当は一気に読める面白い本だが、引っ越しを挟んで読み終わるまで3週間もかかってしまい、印象が散漫になってしまった。「壊れる社会(ヘイトスピーチ、レイシズム)」「政治と市民」「国家と教育」「家族と女性」「言論と報道」「蠢動する宗教」の6部構成で、それぞれ数編ずつ、計21人が寄稿している。

 どれも面白かったが(一番最後に読んだということを差し引いても)宗教の右傾化に関する章が印象深かった。そもそも私は、右傾化という思想に全く共鳴できず、「日本スゴイ」に快感を覚えたり、文化や宗教の違う人々を排撃したりする人々は、何か私とは違う「宗教」を信奉しているとしか思えないので。本書には、戦前の国体論的な神道に流れをくむ神道政治連盟を取り上げた論考もあるが、むしろ、「右傾化」とは結びつかないはずの創価学会・公明党が、今や自民党に「内棲」化してしまった経緯(自民党からの恫喝が決定的な原因なのか)を論じたものや、統一教会=勝共連合や幸福の科学=幸福実現党などの新興宗教に関するものが面白かった。要するに信者たちは、何か自分の存在根拠となる集団がほしいのかな、と思う。そして、古い社会では宗教が果たしていた人と人の紐帯の役割が、民主主義の社会では政治にとって代わられているのかもしれない。でも、右傾化する宗教としない宗教(特に新興宗教)は何が違うんだろう?など、いろいろ考えさせられた。

 それから、強い危機感を感じたのは教育の問題である。1980年代後半以降、日本の教育がじわじわと侵食されてきたことがよく分かった。でも保守派は日本を強くし、国際社会における日本のプレゼンスを高めたいはずで、それなら親や教師のいうことを聞く子供を作っている場合じゃないと思うのに、彼らはそう考えないようだ。家族と女性についても同様である。私は強い個人、他人に過度に依存しない、したがって他人を攻撃したり搾取したりしない個人を育てることが、誰でも暮らしやすい社会をつくることにつながると思うのだけど、そう考えない人は多いのだな。まあ宗教としては、家族の形は神が創造したとか、家庭を守るのは女性とか、信じることは勝手だが、それを他人に押し付けることに政治が介入するのは、よろしくないと思う。

 安保法制とか共謀罪を考えることも重要だが、教育や家族など、より身近な問題で何が起きているかをまとめて振り返るには好適な論集だった。
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