見もの・読みもの日記

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週末は和歌山:蘆雪溌剌(和歌山県博)+城下町和歌山の絵師たち(市博)

2016-11-02 22:51:11 | 行ったもの(美術館・見仏)
和歌山県立博物館 特別展『蘆雪溌剌(ろせつハツラツ)-草堂寺と紀南の至宝-』(2016年10月18日~11月23日)

 奈良での仕事にかこつけて、週末は関西を周遊してきた。土曜日は、まず和歌山へ。京都の画家・長澤蘆雪(1754-1799)が、白浜町の草堂寺をはじめ、紀南(和歌山県南部)地域に残した作品を紹介する特別展を見る。私は蘆雪大好き!なので、これまで2000年の『長澤蘆雪展』(千葉市美術館)も、2006年の『応挙と蘆雪』展(奈良県立美術館)も、2011年の『長沢芦雪』(MIHOミュージアム)も見ている。もちろん本展も見逃すわけにはいかないと思って、早くからチェックしていた。

 和歌山県立博物館には何度も来ているが、いつもだいたい仏教美術が目的だったので、今回はちょっと勝手が違う。まず、いちばん広い展示室に墨画の襖が並んでいた。草堂寺の襖絵である。「朝顔に鼬図」、おすましするイタチがかわいい。「竹鶴図」の鶴の足元には「蛙図」。牛と子牛、子犬、サル、虎、鳩など、このひとは大きい動物も小さい動物も大好きだったんだなあと感じる。妙に巧い「雪梅図」があると思ったら、これは師匠の応挙の作品だった。全体として、ずいぶん劣化が進み、描線が見えにくくなっているものもあるのが気になった。

 第2室以降は、草堂寺関係の文書・棟札・扁額・仏像などが並んでいて、え?蘆雪の作品はこれだけ?と一瞬ガッカリした。しかし、展示を見ていくと、草堂寺が宝永4年(1707)大地震と津波に襲われたこと、天明6年(1786)に再建された本堂に蘆雪が作品を残したこと、そもそも応挙が若い頃に草堂寺第五世の棠陰和尚と「本堂に揮毫する」約束をしたことがあり、その約束を果たすため、弟子の蘆雪を派遣したことなどが資料からよく分かって興味深かった。1707年の宝永地震といえば、最近読んだ『南海トラフ地震』の一例で、いつまた来るか分からないものじゃないか、と思うとぞっとした。また次の大地震・大津波が来たら、蘆雪の襖絵が後世に残るか分からないなあと思った。ちなみに会場に置かれていた小冊子「先人たちが残してくれた『災害の記憶』を未来に伝える」IとIIをいただいてきた。

 絵画では、若冲の彩色画『鸚鵡図』と墨画『隠元豆・玉蜀黍図』(ともに草堂寺所蔵)を見ることができて、思わぬ得をした気分。後者は、この春、東京都美術館の若冲展で大混雑の中で見たもの。なお、天明年間、草堂寺六世の寒渓和尚が若冲作品を出羽国の人から入手し、知人に与えたという話が文書に残っているそうだ。「海運を通じてこうした文物の往来があったのだろうか」と図録の解説にあるのが興味深い。

 再び蘆雪に戻ると、成就寺の襖絵『唐獅子図』12面はいいわ~。獅子がみんな豚鼻。中央で立ち上がってたてがみを逆立てている一匹はゴジラみたいだ。草堂寺の『四睡図』は府中市美術館で見て、印象的だったもの。いつどこで見ても幸せな気分になれる。持宝寺の『十六羅漢図』、草堂寺の『唐人物風俗図』2幅など、私は蘆雪の描く唐人(中国人)の図が好きだ。自由でやんちゃで無作法で、いかにも中国語のおしゃべりが聞こえてきそうな表情をしている。このひと、絶対、水滸伝とか稗史小説が好きで、今なら武侠ドラマの話で意気投合できただろうなあと妙に親近感が湧く。それにしても、紀南の蘆雪ゆかりの寺は、まだ無量寺しか行ったことがない。ほかもぜひ行ってみなくちゃ(いつまであるか分からないと思って)。

和歌山市立博物館 特別展『城下町和歌山の絵師たち-江戸時代の紀州画壇-』(2016年10月22日~11月27日)

 この日は蘆雪展以外ノープランだったが、市立博物館でも面白そうな展示をやっていることが分かって、寄ってみることにした。和歌山には何度か来ているが、市立博物館は初めてである。南海の和歌山市駅からすぐで、立地はいいが、なんだか古くて暗くて辛気臭い建物だなあと思いながら中に入った。

 しかし展示は面白かった。江戸時代の和歌山ゆかりの画家の作品など186件を展示。徳川幕府の御用絵師の流れをくむ紀伊狩野家(へえ、そんなのがあったのか)、紀州藩のお抱え絵師たち、来和(和歌山に来た)の有名画家たち、さらには紀州のお殿様も作品も。紀州の文人画家の一押しは祇園南海のようだが、私はこのひとはよく知らない。桑山玉洲は好きだ。『雲鶴暁清図』はたぶん府中美術館で見たことがある。『野馬図』は初見で、同時代の中国絵画っぽいと思った。

 大勢の画家を取り上げるため、ひとり1、2作品しか紹介されていないのだが、気になる画家と作品にたくさん出会った。順不同で、笹川遊原とか阪本浩雪とか塩路鶴堂とか森月航とか。珍しい題材だと思ったのは、お抱え絵師の岩井泉流の『遊豫画苑』で、紀州六代藩主・宗直の狩猟三昧を描いている。展示されていたのは「海驢(アシカ)狩」の場面で、小舟で海中の岩山に渡り、アシカの群れに鉄砲を向けている。え?どこの話?と思ったけど、1800年代には、紀伊半島の近海にもアシカがいたらしい。展示図録は労作だが、もう少し図版が大きいとよかったのに、と思った。
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