見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

王朝の写実/五島美術館

2005-10-26 22:42:56 | 行ったもの(美術館・見仏)
○五島美術館 館蔵・秋の優品展『絵画・墨跡と李朝の陶芸』

http://www.gotoh-museum.or.jp/

 恒例の秋の優品展。最終日(日曜日)に、駆け込みで行ってきた。国宝『紫式部日記絵巻』を、久しぶりにゆっくり眺めてみた。

 まず、料紙の幅(高さ)に対して、ずいぶん人物が大きいと感じた。私の、日本の絵巻に対するイメージは、はるかな天の高みから、雲や吹き抜け屋台の間に、小さく人物を捉えたものが多いと思うのだが、この絵巻は、かなりのクローズアップで対象を捉えている。

 いちおう、見下ろす構図はとっているものの、画家が屋根裏に寝そべって眺めているような近さである。特に第三段、酔い乱れた貴族たちを描く図は表情豊かで、女房を引き寄せ、戯れかかる公卿たちはふてぶてしいし、体を斜めにした女房の、顔に乱れかかる黒髪が色っぽい。酒臭い哄笑が耳に響いてきそうである。

 それから、舞台をごまかすような”霞”は全く使われていない。徹底したリアリズムである。第二段では、霞や雲を使わずに、中宮彰子の首から上を、料紙の端で隠して、膝の上の皇子だけを描くことに成功している。この大胆で巧妙な構図も、おもしろいと思う。

 焼き物では、『粉青白地掻落』と呼ばれる技法の、李朝の壺。ラスター彩に似た、エナメルみたいな光沢が美しい。

 また、興味深かったのは「焼経」の類。寛文7年(1667)、東大寺二月堂が修二会(お水取り)の期間中に焼失した折りに、焼け跡で発見された『二月堂焼経』は、料紙の焼け方が美しいということで、人気を博した。五島美術館蔵の『天平焼経断簡』は、経緯不明らしいが、「『二月堂焼経』の断簡の人気に乗じて掛物にしたもの」と解説にあった。『泉福寺焼経断簡』なんて、ほとんど千切れそうな焼け焦げ具合なのだが、「そこがいい」らしい。いいのか~、そんなことで。
コメント
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