--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

西オングルテレメトリーデータ回収取材&生ゴミ炭化装置火入れ式

2006-03-03 | 南極だより
今日はおいしいカレーを食べに行ってきました。
そういえばKさんと会うのは渡井さんの壮行会をやって以来です。
kさんや渡井さんと会うときは、たいてい世界の料理を食べに行きます。
壮行会はネパール料理でした。
昭和基地では河村さん、角さんのおいしい料理を食べていると聞いていますが、どんなお料理なのかな?
では、渡井さんからの南極だよりです。
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2006年3月2日(木) 曇り 
西オングルテレメトリーデータ回収取材&生ゴミ炭化装置火入れ式


新聞取材で西オングルテレメトリーデータ回収に中の瀬戸まで同行した。
そもそもこのオペの目的は夏期間中に尾崎@宙空隊員が設置した装置のメモリが、およそ一ヶ月で一杯になるのでメディアを交換することにある。
メディアは512MBのCFカード1枚。
今回のオペレーションのために4人の精鋭部隊が急遽編成された。

澤柿@野外主任、森@FA、山本@宙空、そして尾崎@宙空隊員である。
秘密兵器も持参だ。
この時期西オングルに渡る中の瀬戸は開いているため海を渡る道具が必要だ。
そこで登場するのがアキレスゴムボート。
オールはもちろんのこと、漕ぐ人用の椅子まで完備されている。
しかも浮体は2室構造になっており、どちらかに穴が開いても沈することはないのである。
そう、このオペの売りは中の瀬戸をボートで渡るということに尽きるのだ!

手順はこうだ。

まず最初に澤柿さんと尾崎さんがゴムボートを漕いで西オングルに渡る。

東オングル側ではゴムボートにつないだザイルを森さんが確保。
渡りきったら西オングル側でボートに一緒に積んできたザイルで西オングル側にアンカーを取る。

その後、空になったボートは東オングル側で手繰り寄せ、森&山本さんで西に渡る。
今度は西オングルから引っ張ってもらえるので楽ちんだ。

さてこの装置H100、スカーレンにあるものとほぼ同型なのだが、何故西オングルだけメディアの交換が必要なのか?
なんとH100とスカーレンではデータをイリジウムで日本へ転送しているのだ。
ところがこの費用がばかにならなく数百万円するらしい。
ということで安い(?)労働力が使える西オングルは人力でデータ回収をすることになったのである。
今後も一ヶ月に一度、データ回収大作戦が敢行あれるはずだ。
海が完全に凍れば氷上ルートを取れるようだが来月は微妙。

その後は引き続いて生ゴミ炭化装置の火入れ式に参加する。
中の瀬戸から戻ると丁度火入れ式が始まる10時の10分ほど前であった。
絶妙な時間である。

火入れ式は要人を招いて盛大に行われた。
搬入の際にはそのままでは入らず、装置を横にしてパイプをコロにして転がし、レバーブロックを用いて起こしたのだそうだ。
今回導入した装置は単に生ゴミを焼くのではなく、310℃で蒸し焼きにし、出てきた排煙も820℃、8時間で焼きつくしてしまうという、それはそれは凄い装置なのである。

しかしながら記者は制御板内に怪しく点る白熱電球に無性に愛着を感じてしまった。
#本来は電気回路部の温度を下げすぎないようにする重要な役目があるのだ。
この装置によって排出される炭は3回分でドラム缶一本分ほどになる。


-----本日の作業-----
・「日刊昭和」取材(西オングルテレメトリーデータ回収、生ゴミ炭化装置火入れ式)

・CO計調整
・モニタリング月例報告作成
・心理調査
・「日刊昭和」原稿執筆

<日の出日の入>
日の出  5:06
日の入  19:58
<気象情報3月2日>
平均気温-4.9℃
最高気温-2.4℃(1059) 最低気温-9.7℃(0345)
平均風速6.4m/s
最大平均風速13.2m/s風向E(2200) 最大瞬間風速17.1m/s風向E(2242)
日照時間 2.9時間

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HFレーダーアンテナから得られるデータの回収に向かったということですね?
昨日澤柿さんのブログに書いてあって、おもしろそう(ごめんなさいお仕事なのに)・・と思っていたところでした。地図も出てます。
中の瀬戸は30mほどだということ、暖かい気候であればジャブジャブと歩いて渡りたいくらいの距離ですが南極ではそうもいかない(たぶん暖かくても深ければそうはいかないと思うけれど)。
そしてゴムボートはひとつ、それを2回運行して渡るために結構大変な作業になっているのだなぁと思いました。
確かに、完全凍結してしまえば楽ちんにデータ回収に行けそうです。
でも、こんなことをするのもまた楽しいとみんな笑っていうのだろうなぁ。
オーロラ観測は始まっている!にも書いた3点のポイントのうち2つは直接日本にデータが送られてしまうのですか。
S100とスカーレンのデータを昭和で見るときには、日本から送ってもらう?
なんだか不思議。
で?結局テレメトリー小屋まで行ったのは山本さんと尾崎さん?森さんと澤柿さんも?
どんなところか興味津々で読んでいたのだけれど、振り返って見れば冒頭に「中の瀬戸まで同行」と書いてありました。
そっか、渡井さんは次の取材が待っていたのか。

さて、もう一つの取材のようすです。
生ゴミ炭化装置の搬入に関しては、隊員さんのブログで読んでいたのですが、今まで使っていた装置を出すのも(これは立てたまま出せたようです)、新しいのを搬入するのも(これは横にしないと入らなかったようです)出入り口ぎりぎりで、すごい作業だったのですね。
環境保全の隊員さんはじめ12名の隊員さんがこの搬入作業にあたられたとのこと、お疲れ様でした。
この搬入作業を見ても、煙まで焼き尽くしてしまう装置の機能を見ても、越冬隊長以下、要人を招いて火入れ式をする価値はあると思いました。
無事に火入れは済んだようですが、これから順調に稼働するように祈っています。
生ゴミ炭化装置、夏宿の汚水処理装置と47次で持ち込んだ「汚さない努力」が今後の南極観測に生かされていきますように。

しかし、820℃もの高温に達する装置なのに、電気回路部には温度を下げすぎないようにするために白熱灯が使われているというところがなんともささやかでかわいらしい。
それは手が冷たいときに、机上の電気スタンド(白熱灯)に手をかざしてしまうのにちょっと似ている?

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