日本語教師的生活

日本語と日本語教育にまつわるいろいろ。

つなぐ・つなげる・つながる(自動詞・他動詞①)

2017-03-20 22:56:13 | 日記
フリーランス日本語教師です!と宣言してから、(実はそれまでも非常勤講師だったので、
フリーランスと同じようなものだったのですが、)ずいぶん意識は変わりました。組織に
守られていないので、自分で頑張っていかないとお仕事いただけません。そんなこともあ
って、日本語のコミュニティに参加したり、様々な勉強会、セミナーに足を運ぶようにな
りました。
それまで、非常勤とはいえ、一つの学校に長くいたので、知らず知らずのうちにお局化し、
周りが意見を言いにくい雰囲気を作っていたり、これまでの経験だけで授業を進めるとい
うこともあったかも…(汗)
勉強会やワークショップは、そんな自分を反省するいい機会でした。

しかし、それだけでなくセミナーで出会った方とお知り合いになり、日本語教育、その他
にについても情報交換しているうちに、またさらにお知り合いを紹介していただけたり、
その方が、自分の仕事の相手と関係があったり、古くからの知人の知り合いであったり、
とつながりがどんどん広がっていくことに気づきました!
そのつながりの中から、いくつかお仕事も頂けるようになりました。

やっぱり「一歩」を踏み出すことって大切なんだなと、思った次第で…。
世界が大きく変わりますよ。

さて、「つながる」は、當作先生のソーシャル・ネットワーキング・アプローチのキーワ
ードでもありますが、日本語教師的には「つながる」とくると「つなげる」も教えたくな
っちゃいますね。いわゆる自動詞と他動詞です。しかし、この「つながる」には他動詞
「つなぐ」もあって、いわば三角関係なので、ちょっと置いといて。
まずは自動詞と他動詞のお話。

自動詞と他動詞は初級で必ず出てくる重要な文法項目なのですが、どの学習者にとっても
習得が難しい項目の一つです。試しに初級の学生に、今日本語で何が難しいですかって聞
いたら、「助詞と自動詞、他動詞」って答えるんじゃないかなと思います。もともと自他
の区別がない中国語などもありますし、英語とも表現の仕方が違います。
「開く」と「開ける」など同じ漢字を使っていて、形と意味が異なる動詞を自動詞、他動
詞と一般に呼んでいます。でもこれそもそも形が似てるので、どっちがどっちなのか覚え
にくいし、文型で覚えようと思っても、実際の使用場面では、主語も、目的語さえも省略
されちゃうことがあるので、わかりませーんとなる。

とりあえず一度、自動詞、他動詞を整理しましょう。

自動詞、他動詞と言っても、ペアのあるものと、そうでなく独立しているものがあります。
① 自動詞でペアのないもの
自己完結する動作:行く、泣く、座る、立つ、
自然現象:咲く、光る
② 自動詞、他動詞のペアがあるもの
自動詞:開く、閉まる、消える、落ちる、決まる、集まる、見つかる、上がる、並ぶ
他動詞:開ける、閉める、消す、落とす、決める、集める、見つける、上げる、並べる
③ 他動詞でペアのないもの
他者への働きかけのある動作、目的語必要:(本を)読む、(パンを)食べる
④ 自動詞と他動詞が同じ形のもの
解散する、再開する、終わる、ひらく

この①~④の中で、文法の自動詞、他動詞として教えるのは、もちろん②のペアのある
ものです。よくある導入は
例えば、自動ドアなんかの絵を見せて「ドアが開きました」
反対に、手でドアを開けている絵を見せて「先生がドアを開けました」
または、ろうそくの火が風で消えている絵で「火が消えました」
こどもが、ケーキのろうそくの火を吹き消している絵で「子どもが火を消しました」

でも、ちょっと待って。たしかに、その状況を表す文としては間違ってはいないけれど、
これだと学生は誤解しませんか?つまり人が働きかけずに、自動的に起こることや自然
に起こることだけに自動詞を使うんだ!と。
それなら、固―いビンの蓋を一生懸命開けようとして、成功した時、なんて言います?
「開いた!」じゃない?「開けた!」っていう人いるかしら。自然に開いたわけじゃなく
明らかに人が開けたのに。同じようにキャンプでかまどに火をつける時、長い時間かか
ってようやく成功した時も、「やっとついた」ですよね。人がやったことなのに、自動
詞を使う。
どうしてか、というと、視点がその物だけにあるからです。その行為を行った人ではなく
その物がどうなったかだけを言いたい時に自動詞を使います。逆に、誰が行為を行ったの
か言いたい時は、他動詞を使います。先ほどの例文なら「パパがつけたんだよ」とか。

ちなみに他動詞は、必ず人(または動物、これを有情物と言います)主語で意志動詞です。
目的語が必要で、助詞は「を」を取ります。

私が自動詞、他動詞を導入する時は、例えば電気のスイッチを押して、質問します。
Q:先生は何をしましたか。A:電気を消しました。
Q:電気はどうなりましたか。A:消えました。

物がどうなったか言いたい時は「自動詞」、人が何をしたか言いたい時は「他動詞」を
使うと教えています。

日本語が外国人にとって難しいだろうなと思うのは、自動詞と他動詞を理解したとしても
実際の会話では、教科書の例文のようにすべての情報を言わないところです。
たとえば、こんな感じ
「お母さん、このおもちゃ壊れているよ」
「壊れたんだじゃなくて、壊したんでしょ」
これも、「壊れた」という自動詞は、物についてだけ言う(人の行為については言及しない
)のに対して「壊した」という他動詞は、物に対する人の行為を言うということで説明でき
ます。人の行為について言わないので、自動詞を使うと無責任に聞こえることがあるんですね。

アルバイトで「すみません、お皿が割れてしまいました」というと、自分は関りが無いよう
に聞こえて、ちょっと店長はムッとするかもしれません。そのあたりはちゃんと教えていき
たい。逆に、日本的表現としてよく例に出される「お茶が入りました」は、わざわざ私が入
れましたよとアピールしない表現です。お茶が自分から自然に入るはずはないので。
日本人って自分の意識によって自動詞と他動詞を使い分けているんですね。

また日本語って、省エネな言葉だなーと思うことがあります。
サッカー中継で、ある選手がヘディングシュートを決めた時、解説のセルジオさんが、
「あれは当たったんじゃなくて、当てたんですよ」と言ったのを聞いて、こんな短い言葉で
ちゃんと状況が説明できるってすごいなと思いました。この辺りがわかってくると、学生も
自動詞・他動詞が面白くなるんだけどね。

タイトルにあげた「つなぐ」「つなげる」「つながる」は、「つなぐ」と「つなげる」が
他動詞、「つながる」が自動詞です。「つなぐ」と「つなげる」は微妙に使い方が違いま
すが、それについては、いくつか論文もみつかりましたので、そちらにお任せします。
まあ、「手をつなぐ」とは言うけど「手をつなげる」とは言わないよね。

【おまけ】
自動詞と他動詞の形のルールは無いと思うんですが、辞書形の語尾が「す」なら必ず他動詞。
「消す」「出す」「流す」「落とす」等。「~まる」「~める」または「-aru」「-eru」
の対応なら前者が自動詞で、後者が他動詞。「集まる/集める」「決まる/決める」
「上がる/上げる」等。

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