きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

4月30日の日本民話 牡丹灯籠(ぼたんどうろう)

2010-04-30 10:16:20 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話


4月30日の日本民話


ぼたんどうろう



牡丹灯籠(ぼたんどうろう)

京都府の民話京都府情報


♪朗読再生


 むかしむかし、京の都の五条京極(ごじょうきょうごく)に、荻原新之丞(おぎわらしんのじょう)という男がすんでいました。
 まだ若い奥さんに死なれたため、毎日がさびしくてたまらず、お経をよんだり歌をつくったりして、外へも出ないで暮らしていました。
 七月の十五夜の日の事、夜もふけて道ゆく人もいなくなったころ、二十才くらいの美しい女の人が、十才あまりの娘をつれて通りかかりました。
 その娘には、ぼたんの花の灯籠(とうろう→あかりをともす器具)を持たせています。
 新之丞(しんのじょう)は、美しい女の人に心をひかれて、
(ああ、天の乙女(おとめ)が、地におりてきたのだろうか)
と、つい家を飛び出しました。
 新之丞が声をかけると、女はいいました。
「たとえ月夜でも、かえる道はおそろしくてなりません。どうかわたくしを、送ってくださいますか?」
「ええ。でも、よろしければ、わが家へきて、ひと晩おとまりなさい。遠慮はいりませぬ。さあ、どうぞ」
 そういって新之丞は女の手をとり、家へつれてもどりました。
 新之丞が歌をよむと、女もすぐにみごとな歌でかえすので、新之丞はうれしくてたまりません。
(美しいだけでなく、教養もあるとは。実に素晴らしい)
 すっかりしたしくなって、時がたつのもわすれるうちに、東の空が明るくなりかけました。
「人目もありますので、今日はこれで」
 女はいそいそとかえっていきましたが、それからというもの、女は日がくれると必ずたずねてきました。
 ぼたんの花の灯籠を、いつも娘に持たせて。
 新之丞は、毎日、女が来るのが楽しみでなりません。
 そして、二十日あまりが過ぎました。
 たまたま家のとなりに、物知りなおじいさんが住んでいました。
「はて、新之丞のところは一人きりのはずだが、毎晩若い女の声がしておる。うむ、・・・どうもあやしい」
 おじいさんはその夜、かべのすきまから新之丞の家の中をのぞきました。
 すると新之丞があかりのそばで、頭から足の先までそろった白いガイコツと、さしむかいで座っているのです。
 新之丞が何かしゃべると、ガイコツがうなずきます。
 手やうでの骨も、ちゃんと動かします。
 そのうえガイコツは口のあたりから声を出して、しきりに話をしているのでした。
 あくる朝、おじいさんは新之丞の所へ行き、たずねました。
「そなたのところへ、夜ごとに女の客があるらしいが、いったい何者じゃ?」
「そっ、それは・・・・・・」
 新之丞は、答えません。
 それでおじいさんは、昨夜見たとおりのことを話したうえで、
「近いうち、そなたの身にきっとわざわいがおこりますぞ。死んで幽霊となりまよい歩いているものと、あのようにつきおうておったら、精(せい)をすいつくされて、悪い病気にむしばまれる」
 これには新之丞もおどろいて、今までの事をありのままにうちあけたのでした。
「さようであったか。その女が万寿寺(まんじゅじ)のそばに住んでおるというたのなら、行って探してみなされ」
「はい、わかりました」
 新之丞はさっそく五条(ごじょう)から西へ、万里小路(までのこうじ)まで行って探しました。
 しかし一人として、それらしい女を知る人がありません。
 日がしずむころ、万寿寺(まんじゅじ)の境内(けいだい)へ入って休み、北の方へ足をむけると、死者のなきがらをおさめた、たまや(→たましいをまつるお堂)が一つ、目にとまりました。
 古びたたまやで、よく見たところ、棺のふたにだれそれの息女(そくじょ→みぶんのある娘をさす言葉)なになにと、戒名(かいみょう→死者につける名前)が書きつけてありました。
 棺のわきに、おとぎぼうこ(→頭身を白い絹で小児の形に作り、黒い糸を髪として、左右に分け前方に垂らした人形)、とよばれる子どもの人形が一つ、また棺の前には、ぼたんの花の灯籠がかかっていました。
「おお、まちがいなくこれじゃ。このおとぎぼうこが娘に化けていたのだな」
 新之丞はこわくなって、走って逃げ帰りました。
 家へ戻ったものの、夜にまた来るかと思うと、おそろしくてたまりませんので、となりのおじいさんの家にとめてもらいました。
 それからおじいさんに教わって東寺(とうじ)へいき、そこの修験者(しゅげんじゃ→山で修行する人)にわけをうちあけて、
「わたくしは、どうしたらよいのですか?」
と、たずねました。
 すると、
「まちがいなく、新之丞殿は化け物に精をすいとられておられますな。あと十日も、今まで通りにしておったら、命もなくなりましょう」
 修験者はそういって、まじないのお札を書いてくれました。
 そのお札を家の門にはりつけたところ、美しい女も、灯籠を持った娘も、二度と姿を見せなくなったのです。
 それから、五十日ほどが過ぎました。
 新之丞は東寺へでかけて、今日までぶじに過ごせたお礼をしました。
 その日の夜、お供の男を一人つれていたので、東寺を出てお酒を飲みましたが、お酒を飲むと、むしょうに女に会いたくなって、お供の男が止めるのも聞かず、万寿寺(まんじゅじ)へ出かけていったのです。
 万寿寺に着くと、あの女が現れ、
「毎晩、お会いしましょうと、あれほどかたくお約束をしましたのに、あなたさまのお気持ちがかわってしまい、それに、東寺の修験者にも邪魔をされて、本当にさみしゅうございました。・・・でも、あなたさまは来てくだされました。お目にかかれて、本当にうれしゅうございます。さあ、どうぞこちらへ」
「うむ、そなたにつらい思いをさせるとは、まことにすまん事をした。そなたが何者でも構わぬ。これからは、二度と離れぬ」
「・・・うれしい」
 新之丞は女に手を取られて、そのまま奥の方へ連れて行かれました。
 後をつけてきたおともの男は、腰を抜かすほどビックリして、
「た、たっ、大変だ! 新之丞さまが、あの女にさそいこまれて、寺の墓地の方へ!」
と、となり近所にいってまわりました。
 それで大さわぎになり、みんなして万寿寺の北側の、たまやがある所へ行ってみました。
 しかし新之丞は棺の中へひきこまれて、白骨の上へ重なるようにして死んでいました。
 女に精を吸い取られて、新之丞は老人のようにやつれていましたが、その口には笑みが浮かんでいました。
 万寿寺では気味悪くおもって、そのたまやを別の場所へ移しました。
 しばらくして、雨がふる夜には新之丞と若い女が、ぼたんの花の灯籠を持った娘とともに京の町を歩く姿が見られ、それを見た者は重い病気にかかるとうわさが立ちました。
 新之丞の親類(しんるい)の人たちが手厚く供養(くよう)をしましたが、たましいがまよい歩かないようになるまでには、かなりの時間がかかったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 図書館記念日
きょうの誕生花 → ネモフィラ
きょうの誕生日 → 1972年 常盤貴子 (俳優)


きょうの新作昔話 → おもいやり
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きょうの日本民話 → ぼたんどうろう
きょうのイソップ童話 → 医者と病人
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4月29日の日本民話 山びこになった男の子

2010-04-29 09:50:33 | Weblog

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4月29日の日本民話


山びこになった男の子



山びこになった男の子
鹿児島県の民話鹿児島県情報


 むかしむかし、あるところに、男の子がいました。
 男の子はお父さんとお母さんの三人でくらしていましたが、お母さんが病気になって死んでしまったのです。
 そこでお父さんは男の子のために、新しいお母さんをもらうことにしたのです。
 ところが新しいお母さんはとてもいじわるで、男の子がにくらしくてたまりません。
 毎日毎日、出来もしないほどたくさんの仕事を言いつけては、男の子をこまらせていたのです。
 ある日、お母さんは、
「山へ行って、つる草を取ってこい!」
と、言いました。
 つる草というのは、ほかの木にまきつく草のことです。
 男の子は色々なつる草を取って、家に帰りました。
 ところが、お母さんは、
「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、言って、男の子を山へ追いかえしてしまいました。
 男の子は暗くなるまで山の中を歩きまわり、前よりもたくさんのつる草を持って帰りました。
 それでもお母さんは、
「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、言って、せっかく取ってきたつる草をみんなすててしまうのです。
 それからというもの、男の子は毎日毎日、朝早くから山へ行ってつる草を取りました。
 でも、どんなつる草を持って帰ってもお母さんは、
「このマヌケ! わたしが取ってこいと言ったのは、こんなつる草じゃない!」
と、言って、男の子を山へ追いかえします。
(どうして? どうしてお母さんは、こんな仕事ばかり言いつけるの)
 悲しくなった男の子が山の中でないていると、まっ白な髪を長くたらしたおじいさんがやって来て、
「どうした? なぜないているのかね?」
と、たずねました。
 そこで男の子は、これまでの事をくわしく話しました。
 すると、おじいさんが言いました。
「よし、よし、そんなお母さんのところへなんか、もう帰らなくてもいい。今日からお前を山の神さまにしてあげよう」
と、言って、男の子を山びこにしてくれたのです。
 山びこになった男の子は、毎日、山の中を走りまわり、人の言葉をまねたり、イタズラをして遊ぶようになりました。
 山に向かって、
「ヤッホー!」
と、言ったら、
「ヤッホー!」
と、返事をする山びこです。
 山の道を歩いていて、突然バラバラと砂がふってきたりするのも、みんな山びこのしわざなのです。
 また、山で働く木こりが木を切っていると、ふいに後ろから、メシッ、メシッと、木の倒れる音もおこすのです。
(なんだ、また山びこのイタズラだな)
 そこで、山びこになった男の子を知っている木こりが言いました。
「山びこよ。イタズラをするのはおよし。せっかく山の神さまにしてもらったのに。また、あのおっかさんのところへ帰りたいか?」
 すると山びこはむかしのことを思い出して悲しくなり、すぐにイタズラをやめるのだという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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4月28日の日本民話 足長手長

2010-04-28 07:28:28 | Weblog

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4月28日の日本民話


足長手長



足長手長
福島県の民話福井県情報


 むかしむかし、山々にかこまれた会津(あいず→福島県)の盆地(ぼんち)には、小さな村がいくつもありました。
 村の人たちは毎日朝早くから畑へ向かい、いっしょうけんめい働きました。
♪大きくなあれ、ほーいやさー
♪たくさんなーれ、ほーいやさー
 秋になると、畑には作物がゆたかにみのります。
「豊作(ほうさく)じゃ、豊作じゃ!」
「今年も、たくさんとれたぞ!」
 こうして会津の人々はよく働き、ゆたかに幸せにくらしていました。
 ところが、ある年のこと。
 どこからともなく大きなおそろしい怪物(かいぶつ)が長い手足で雲をかきわけて、空の向こうから現れたのです。
 その怪物は足長手長(あしながてなが)という、夫婦の魔物(まもの)でした。
 夫の足長はその名のとおりとても足が長く、どんなに遠くても足をのばせばとどきます。
 妻の手長はおそろしく手が長く、すわったままどんな遠いところの物でもヒョイとつかむことができました。
 この足長手長の夫婦は、会津の土地をなぜか気に入ってしまったようです。
 妻の手長は磐梯山(ばんだいさん→福島県の北部、猪苗代湖の北にそびえる活火山。標高1819メートル)の頂上(ちょうじょう)にすわり、夫の足長は会津盆地をひとまたぎしています。
「手長よ、そろそろ始めるか」
「はいよ、足長」
 二人の魔物は声をかけあうと、すぐに足長の足がグングンとのびはじめて、あちらこちらにある雲をつかんでは会津盆地の上に集めます。
 雲は畑しごとをしている人たちの頭の上をおおい、みるみるうちにあたりは暗くなっていきました。
「今度はおめえだ、手長や」
 すると手長はその長い手で、猪苗代湖(いなわしろこ→福島県の中央部、湖面標高514メートル。最大深度94メートル。周囲63キロメートル。面積103平方キロメートル)の水をすくってばらまきます。
 それはものすごい大つぶの雨となって、畑仕事をする人々の上にふりかかりました。
「あっはっはっは、見てみろ、あのあわてぶり!」
 足長と手長のせいで、毎日毎日、会津は暗い雨の日がつづきました。
 村の人たちは、ほとほとこまりました。
「このままではたいへんだぞ! おてんとさまが出ないおかげで、家のダイコンがさっぱり大きくならん」
「家もだ。このまま作物がくさっちまったら、おらたちどうなるだ?」
「うえ死にじゃあ。はらをすかして死ぬしかねえ」
「なんとか、雨がやんでくれんかなあ」
 こんな村の人たちのようすを見て、足長手長は大喜びするのです。
 そしてまた、何かイタズラをを考えたようです。
 そのうちに雨はやんで、雲のすきまからお日さまが顔を出しました。
「おお、お日さまじゃ! これでたすかるぞ!」
「よかった、よかった」
 大喜びの村人たちが、空を見上げたときです。
 雲のすきまから、おそろしい怪物が顔を出していたではありませんか。
「あーっ、何じゃ、あれは!」
 足長手長は、ふるえる村人たちを見ておもしろがると、
「あはははは。こうやって、太陽をかくしてやるよ」
と、手長が手をのばして、太陽の光をかくしてしまいました。
 それだけではありません。
 次のイタズラは、首をのばして作物に大きく息をふきつけ、作物を根元からふきとばすのです。
 次から次へとイタズラをくりかえす足長手長を、村人たちはどうすることもできません。
 そんなある日の事、ボロボロの衣をまとった弘法大師(こうぼうだいし)という名のお坊さんが、この会津の村にやってきました。
「これはひどい、あまりにもひどい」
 お坊さんはあれはてた村のようすにおどろいて、村の人たちに話をききました。
「うーむ。それは聞きずてならんことじゃ。よし、わしの力でその魔物をこらしめてやろう」
 お坊さんは、すぐに磐梯山の頂上にのぼりはじめました。
 そして頂上に着くと、大声でいいました。
「足長手長! わしはここをとおりかかった旅の僧じゃ。姿を見せんか!」
 お坊さんの声に、足長と手長が現れました。
「わっはっはっは、なんともきたない坊主じゃな」
「足長手長。わしのいうことをよく聞け! お前らは、どんな事でもできると思っとるだろうが、どんなにがんばってもできん事があるぞ」
「何をいう。この世の中に、わしらにできぬことは何一つないわ」
「そうか、ならばわしのいったとおりの事をやってみろ。もしできなければ、お前たちはすぐにこの会津の土地を出ていくのだ」
「よしわかった。どんな事かいってみろ」
「うむ。それはだな」
 お坊さんは、ふところから小さなつぼをとりだしていいました。
「足長手長よ。お前らはずいぶんと大きななりをしている。二人一緒に、こんな小さなつぼに入ることはできんじゃろう? どうじゃ、まいったか。わっはっはっは!」
「なにをぬかす。できたらお前の命をもらうぞ! いいな! ではいくぞ、手長」
「あいよ、足長」
 二人は声をかけあうと、みるみるうちに小さくなってつぼの中へ入ってしまいました。
 そのとたん、お坊さんはつぼのふたをしめると、衣をちぎってしっかりとつぼをつつんでしまいました。
「こら! なんじゃあー! ここからだせ! ふたをあけろー!」
 つぼの中で足長手長が、大声をあげながらあばれます。
「バカもの! 人々を苦しめたばつとして、お前ら二人はこのままずっとこのつぼの中に入っておれ!」
 お坊さんはそのつぼを磐梯山の頂上にうめると、大きな石をのせて、二度と出てこられないようにしました。
 つぼの中で足長手長がくやしがってあばれておりましたが、お坊さんの術がかかっているのか、つぼのふたはビクともしません。
 やがて二人はあきらめたのか、しずかになりました。
「お前たちはこれからはこの山の守り神として祭ってやるから、村人たちのためにつくすがよいぞ」
 こうして、足長手長は弘法大師によって退治されたのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 二輪・自転車安全日
きょうの誕生花 → えにしだ
きょうの誕生日 → 1974年 鈴木奈穂 (タレント)


きょうの新作昔話 → とんち勝負
きょうの日本昔話 → 力太郎
きょうの世界昔話 → ハエとミツバチ
きょうの日本民話 → 足長手長
きょうのイソップ童話 → ヘルメスと職人たち
きょうの江戸小話 → 法力


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4月27日の日本民話 ヘビがカエルをのむわけ

2010-04-27 06:55:56 | Weblog

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4月27日の日本民話


ヘビがカエルをのむわけ



ヘビがカエルをのむわけ
大分県の民話大分県情報


 むかしむかし、神さまが世界中の生き物をつくったのですが、どの生き物もつくったばかりで、何を食べさせるのかまだ決めていませんでした。
 生き物たちは何を食べていいのかわからないので、おなかがペコペコです。
 そこで生き物たちは、かわるがわる神さまのところへ行って、
「早く、食べ物をきめてください」
と、おねがいしました。
 すると、神さまが、
「明日の朝、食べ物をきめてやるから、みんな集まるように」
と、おふれを出しました。
 よろこんだ生き物たちは、夜の明けるのを待って、神さまのところへ出かけました。
 さて、ヘビがノロノロとはっていると、後ろからカエルがやってきました。
「なんだなんだ、地べたをノロノロとみっともない。もう少しはやく進めないのかね」
「そんなこと言っても、おなかがすいて、目がくらみそうだよ」
 ヘビが力のない声で言いました。
「ふん。そんなにノロノロしていては、昼になってしまうぞ。まあ、お前は後からやってきて、おれのおしりでもなめるんだな」
 カエルはヘビをバカにして、ピョンピョンとんでいきました。
 生き物がみんな集まると、神さまは次々に呼び出して、それぞれの食べ物をきめました。
 でも、カエルは、なかなか呼ばれません。
 怒ったカエルは、神さまの前に飛び出して言いました。
「早くわたしの食べ物をきめてください。わたしが一番先にやってきたのですよ」
 神さまは、うるさいカエルをジロリと見て言いました。
「よし、お前は虫を食べるがよい」
「えっ? わたしの食べ物は虫ですか!?」
 カエルは、ガッカリです。
 それでも食べ物がきまったので、ホッとして帰ろうとすると、神さまが言いました。
「待て。お前にはもう少し言うことがある。お前はここへ来る時、ヘビをバカにして、おしりでもなめろと言ったであろう」
「まあたしかに。だってそれは、ヘビがあまりにもノロマですから」
「いいわけはよろしい。のぞみどおりに、これからはヘビにお前のおしりをなめてもらうことにしよう」
「とっ、とんでもない!」
 カエルはビックリして反対ましたが、神さまは許してくれません。
 その時から、ヘビはカエルを見つけると、すぐにおしりから飲み込んでしまうのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 婦人警官記念日
きょうの誕生花 → しらねあおい
きょうの誕生日 → 1987年 鈴木杏 (俳優)



きょうの日本昔話 → 赤ん坊と泥棒(どろぼう)
きょうの世界昔話 → クマたいじのゆうしゃ
きょうの日本民話 → ヘビがカエルをのむわけ
きょうのイソップ童話 → 屋根の上の子ヤギとオオカミ
きょうの江戸小話 → 三人かご


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4月26日の日本民話 テングと旅をした男

2010-04-26 06:25:35 | Weblog

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4月26日の日本民話


テングと旅をした男



テングと旅をした男
滋賀県の民話滋賀県情報


 むかしむかし、比叡山(ひえいざん)にあるお寺の修理(しゅうり)に立ちあっていた、木内兵左衛門(きのうちひょうざえもん)という若い(さむらい)が、とつぜん行方不明になりました。
 兵左衛門(ひょうざえもん)はお酒が好きで、遊びも好きだったので、かってに山をおりて町にでもいったのだろうと、だれもが思っていました。
 ところが、兵左衛門がはいていたぞうりが、お寺の玄関先(げんかんさき)と内庭(うちにわ)に片方ずつ落ちていたのです。
 もっとさがしてみると、へし曲げられたとひきさかれた帯が見つかったので、たいへんなさわぎになりました。
「兵左衛門は玄関からでようとして、だれかにひきずられて内庭をぬけ、山の中へつれていかれたのだろう」
「刀を曲げるなんて人間ではない。まさか、テングにさらわれたのではあるまいな」
 もう日は暮れて、あたりはまっ暗です。
 工事の仲間も一緒に火をたいて、兵左衛門の事を心配していると、大工(だいく)の若者が、
「人の声がするぞ」
と、いって、暗やみの中へ走っていきました。
 するとお堂の屋根の上で、羽のあるあやしい者が立っていて、下へおろしてくれというのでした。
 よく見るとそれは、行方不明になっていた兵左衛門で、羽に見えたのはやぶれた雨傘(あまがさ)でした。
 はしごをかけて屋根からおろされた兵左衛門は、とてもつかれたような荒い息をしています。
 兵左衛門の話によると、夕方に名前を呼ばれたので玄関まで出ていくと、黒い衣を着た若いお坊さんが立っていたというのです。
 お坊さんは顔が赤く、みだれた長い髪の毛を地面までたらしていました。
 そして、
「ちょっと、そこまできてくれぬか」
と、いうなり、兵左衛門の手を強い力でつかみ、内庭のほうへひっぱって行ったのです。
 兵左衛門は刀に手をかけましたが、すぐにうばいとられて曲げられてしまいました。
 それからあばれる兵左衛門をかつぎあげると、お堂の屋根の上へほうりあげたというのです。
 屋根の上には、赤い衣を着た鼻の高い大きなテングがいて、
「いいところへ、つれていってやる」
と、足の下にある丸いお盆のようなものにのるようにいいました。
 兵左衛門が足をかけると、そのお盆はふわりと宙にうかびあがり、兵左衛門はテングと一緒に山をこえ、海をこえて、テングの仲間たちがすむ山々をめぐりました。
 そしてたったいま、お堂の屋根の上にもどってきたというのでした。
「のどがからからじゃ。酒がのみたい」
と、兵左衛門がいうので、宿へもどってお酒をやると、どんぶりで五杯もたてつづけにのみほし、宿がゆれるほどの大いびきをかいて四日間もねむりつづけたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → ふろの日
きょうの誕生花 → えびね
きょうの誕生日 → 1971年 田中直樹 (芸人)


きょうの新作昔話 → うめの実
きょうの日本昔話 → 雨の夜のかさ (豊臣秀吉)
きょうの世界昔話 → 月の見ていた話十四夜
きょうの日本民話 → テングと旅をした男
きょうのイソップ童話 → ネズミと牡ウシ
きょうの江戸小話 → 貧乏神のご開帳


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