『
気密性を高めるのは何のため?
― 断熱とセットで語られるのが「気密」です。気密に関しては、専門家でもいろいろな考え方があるようですが・・・。
環境や設備の技術者は、断熱とともに気密を徹底しなければならないと考える人が多いと思います。その一方で、建築家のなかには、日本は温暖な国なのだから、家は開かれるべきだ、と主張する人も少なくないようです。
しかし、“開く派”と“閉じる派”が対立して議論することには、あまり意味がないと思います。なぜなら気密は、断熱のためだけに行なうものではなく、適切な換気を行うためにも重要だからです。
―えっ、換気ですか?
そう。人は呼吸しますし、家の中で料理もすればお湯も沸かす。そのために汚れた空気を捨て、吸うのに健全な空気を入れる換気が不可欠です。しかし、家の中が隙間だらけだったら、いろいろなところから空気が勝手に出入してしまい、適切な換気が行なえなくなります。

だから、一定程度の気密性は必要なのです。
気密性の指標「C値」の意味
― 気密性を測る指標が「C値」ですね。
C値は、日本語でいうと相当隙間面積です。家中目張りして、空気が全く漏れない状態ができるとすれば、それが隙間面積0。相当隙間面積は、床面積1m2あたりに隙間がどのぐらいあるかを、「cm2」で示すものです。実際には、窓や扉を全部閉めて室内の圧力を下げたとき、外からどのぐらい空気が流入するかを測定して判断します。
― 木造住宅でのC値の目安は?
2.0cm2/m2以下にしたいところです。床面積100m2として、2.0cm2/m2はハガキ大の隙間があることを意味します。

―次世代省エネルギー基準では、2009年の改正でC値の基準値がなくなりましたが・・・

なぜなくなったのかは知りませんが、基準値がなくなったから気密性はどうでもよい、ということはありません。私たちの呼吸を考えてみれば分かります。頬や首に穴が空いていたら呼吸がしにくい(図1の右側)。その逆に気密が大切だからと、鼻の穴に脱脂綿を突っ込んだら息苦しくて仕方がない。気密性を確保し、通すべきところに空気を通すことが大切なのです。
換気は風と温度差を利用
― 気密性を高めると、余計な隙間風を防ぎつつ空気の入れ替えがしやすくなるということですね。
そう、それを計画換気と呼びます。
― 換気扇を使うわけですか。
それだけとは限りません。計画換気とは機械的に換気することだと思い込む人が多いのですが、風の通り道をうまくつくってあげて、必要に応じて人の手で窓や建具を開け閉めすることも計画換気とよんでよいと思います。
― 風通しを考えるためには、その場所の気象条件も知っておかなければなりませんね。
覚えておきたい言葉として、卓越風があります。これは、その地域で月ごと、または季節ごとに一番吹きやすい風向きを指します。気象庁のデータで大まかな方向をつかむことはできます。
しかし、たとえば「横浜」といっていも、海側と山側ではずいぶん風の様子が異なることは分かりますね。その地域の風の概況を知ることに加えて、その敷地の周囲で風がどう吹いているかを知ることが重要です。たとえ卓越風が吹いていても、周辺の建物などとの関係で、対象となる敷地には届かないこともあるでしょう。

それを知るには現地調査を重ねるしかありません。
このように、建物の周囲に吹く自然の風を利用して換気することを風力換気と呼びます。

―自然の風はいつも吹いているとは限りませんが・・・
風がなくても、温度差があれば空気は動きます。温められた空気は膨張するので、密度が小さくなって上昇します。この温度差を利用して行う換気が重力換気です。煙突効果と呼ぶこともあります。
高いところに排気口を設ければ、人の身体や照明の発熱、調理の燃焼などで暖められた空気が抜けていきます。そこで、低い位置に給気口を開けておけば、そこから新しい空気が入ってくるわけです。
―家の中を風が流れるような表現の図面をよく見ますね。
確かに建築家は、よく図面に風の流れを書き込んで見せますが、扉や窓の開け閉めを考えに入れて流線を描いている人はあまりいません。小さな住宅でも、開口部は意外とたくさんあるものです。
その開口部のどれを開けてどれを閉めるかで空気の流れは違ってきます。住まい手にその開け閉めを無理強いするのでなく、うまく促せるように開口部をしつらえることもデザインだと思います。

例えば、高窓の開閉がしやすいように、安全でしゃれたスツールを用意しておく、あるいは扉を半開にしておけるストッパーを設けておくといった配慮が意外に重要です。
宿谷昌則:東京都市大学教授
(日経アーキテクチュアNo.970 P84.より引用) 』
・・イツモアリガトウ
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住宅建築・住まいのリフォーム相談『日本建築倶楽部(JAC)』
気密性を高めるのは何のため?
― 断熱とセットで語られるのが「気密」です。気密に関しては、専門家でもいろいろな考え方があるようですが・・・。
環境や設備の技術者は、断熱とともに気密を徹底しなければならないと考える人が多いと思います。その一方で、建築家のなかには、日本は温暖な国なのだから、家は開かれるべきだ、と主張する人も少なくないようです。
しかし、“開く派”と“閉じる派”が対立して議論することには、あまり意味がないと思います。なぜなら気密は、断熱のためだけに行なうものではなく、適切な換気を行うためにも重要だからです。
―えっ、換気ですか?
そう。人は呼吸しますし、家の中で料理もすればお湯も沸かす。そのために汚れた空気を捨て、吸うのに健全な空気を入れる換気が不可欠です。しかし、家の中が隙間だらけだったら、いろいろなところから空気が勝手に出入してしまい、適切な換気が行なえなくなります。
だから、一定程度の気密性は必要なのです。
気密性の指標「C値」の意味
― 気密性を測る指標が「C値」ですね。
C値は、日本語でいうと相当隙間面積です。家中目張りして、空気が全く漏れない状態ができるとすれば、それが隙間面積0。相当隙間面積は、床面積1m2あたりに隙間がどのぐらいあるかを、「cm2」で示すものです。実際には、窓や扉を全部閉めて室内の圧力を下げたとき、外からどのぐらい空気が流入するかを測定して判断します。
― 木造住宅でのC値の目安は?
2.0cm2/m2以下にしたいところです。床面積100m2として、2.0cm2/m2はハガキ大の隙間があることを意味します。
―次世代省エネルギー基準では、2009年の改正でC値の基準値がなくなりましたが・・・
なぜなくなったのかは知りませんが、基準値がなくなったから気密性はどうでもよい、ということはありません。私たちの呼吸を考えてみれば分かります。頬や首に穴が空いていたら呼吸がしにくい(図1の右側)。その逆に気密が大切だからと、鼻の穴に脱脂綿を突っ込んだら息苦しくて仕方がない。気密性を確保し、通すべきところに空気を通すことが大切なのです。
換気は風と温度差を利用
― 気密性を高めると、余計な隙間風を防ぎつつ空気の入れ替えがしやすくなるということですね。
そう、それを計画換気と呼びます。
― 換気扇を使うわけですか。
それだけとは限りません。計画換気とは機械的に換気することだと思い込む人が多いのですが、風の通り道をうまくつくってあげて、必要に応じて人の手で窓や建具を開け閉めすることも計画換気とよんでよいと思います。
― 風通しを考えるためには、その場所の気象条件も知っておかなければなりませんね。
覚えておきたい言葉として、卓越風があります。これは、その地域で月ごと、または季節ごとに一番吹きやすい風向きを指します。気象庁のデータで大まかな方向をつかむことはできます。
しかし、たとえば「横浜」といっていも、海側と山側ではずいぶん風の様子が異なることは分かりますね。その地域の風の概況を知ることに加えて、その敷地の周囲で風がどう吹いているかを知ることが重要です。たとえ卓越風が吹いていても、周辺の建物などとの関係で、対象となる敷地には届かないこともあるでしょう。
それを知るには現地調査を重ねるしかありません。
このように、建物の周囲に吹く自然の風を利用して換気することを風力換気と呼びます。
―自然の風はいつも吹いているとは限りませんが・・・
風がなくても、温度差があれば空気は動きます。温められた空気は膨張するので、密度が小さくなって上昇します。この温度差を利用して行う換気が重力換気です。煙突効果と呼ぶこともあります。
高いところに排気口を設ければ、人の身体や照明の発熱、調理の燃焼などで暖められた空気が抜けていきます。そこで、低い位置に給気口を開けておけば、そこから新しい空気が入ってくるわけです。
―家の中を風が流れるような表現の図面をよく見ますね。
確かに建築家は、よく図面に風の流れを書き込んで見せますが、扉や窓の開け閉めを考えに入れて流線を描いている人はあまりいません。小さな住宅でも、開口部は意外とたくさんあるものです。
その開口部のどれを開けてどれを閉めるかで空気の流れは違ってきます。住まい手にその開け閉めを無理強いするのでなく、うまく促せるように開口部をしつらえることもデザインだと思います。
例えば、高窓の開閉がしやすいように、安全でしゃれたスツールを用意しておく、あるいは扉を半開にしておけるストッパーを設けておくといった配慮が意外に重要です。
宿谷昌則:東京都市大学教授
(日経アーキテクチュアNo.970 P84.より引用) 』


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