コラム建築雑談 “一笑懸命”

建築家と共に家づくりを支援するプロデューサーブログ

省エネ住宅とは? (第4回)

2012-03-28 09:17:34 | 住宅

気密性を高めるのは何のため?

― 断熱とセットで語られるのが「気密」です。気密に関しては、専門家でもいろいろな考え方があるようですが・・・。

環境や設備の技術者は、断熱とともに気密を徹底しなければならないと考える人が多いと思います。その一方で、建築家のなかには、日本は温暖な国なのだから、家は開かれるべきだ、と主張する人も少なくないようです。
しかし、“開く派”と“閉じる派”が対立して議論することには、あまり意味がないと思います。なぜなら気密は、断熱のためだけに行なうものではなく、適切な換気を行うためにも重要だからです。

―えっ、換気ですか?

 そう。人は呼吸しますし、家の中で料理もすればお湯も沸かす。そのために汚れた空気を捨て、吸うのに健全な空気を入れる換気が不可欠です。しかし、家の中が隙間だらけだったら、いろいろなところから空気が勝手に出入してしまい、適切な換気が行なえなくなります。

 だから、一定程度の気密性は必要なのです。


気密性の指標「C値」の意味
― 気密性を測る指標が「C値」ですね。

 C値は、日本語でいうと相当隙間面積です。家中目張りして、空気が全く漏れない状態ができるとすれば、それが隙間面積0。相当隙間面積は、床面積1m2あたりに隙間がどのぐらいあるかを、「cm2」で示すものです。実際には、窓や扉を全部閉めて室内の圧力を下げたとき、外からどのぐらい空気が流入するかを測定して判断します。

― 木造住宅でのC値の目安は?

 2.0cm2/m2以下にしたいところです。床面積100m2として、2.0cm2/m2はハガキ大の隙間があることを意味します。

 
―次世代省エネルギー基準では、2009年の改正でC値の基準値がなくなりましたが・・・


 なぜなくなったのかは知りませんが、基準値がなくなったから気密性はどうでもよい、ということはありません。私たちの呼吸を考えてみれば分かります。頬や首に穴が空いていたら呼吸がしにくい(図1の右側)。その逆に気密が大切だからと、鼻の穴に脱脂綿を突っ込んだら息苦しくて仕方がない。気密性を確保し、通すべきところに空気を通すことが大切なのです。

換気は風と温度差を利用
― 気密性を高めると、余計な隙間風を防ぎつつ空気の入れ替えがしやすくなるということですね。

 そう、それを計画換気と呼びます。

― 換気扇を使うわけですか。
 
 それだけとは限りません。計画換気とは機械的に換気することだと思い込む人が多いのですが、風の通り道をうまくつくってあげて、必要に応じて人の手で窓や建具を開け閉めすることも計画換気とよんでよいと思います。

― 風通しを考えるためには、その場所の気象条件も知っておかなければなりませんね。

 覚えておきたい言葉として、卓越風があります。これは、その地域で月ごと、または季節ごとに一番吹きやすい風向きを指します。気象庁のデータで大まかな方向をつかむことはできます。
 しかし、たとえば「横浜」といっていも、海側と山側ではずいぶん風の様子が異なることは分かりますね。その地域の風の概況を知ることに加えて、その敷地の周囲で風がどう吹いているかを知ることが重要です。たとえ卓越風が吹いていても、周辺の建物などとの関係で、対象となる敷地には届かないこともあるでしょう。

それを知るには現地調査を重ねるしかありません。
 このように、建物の周囲に吹く自然の風を利用して換気することを風力換気と呼びます。


―自然の風はいつも吹いているとは限りませんが・・・

 風がなくても、温度差があれば空気は動きます。温められた空気は膨張するので、密度が小さくなって上昇します。この温度差を利用して行う換気が重力換気です。煙突効果と呼ぶこともあります。
 高いところに排気口を設ければ、人の身体や照明の発熱、調理の燃焼などで暖められた空気が抜けていきます。そこで、低い位置に給気口を開けておけば、そこから新しい空気が入ってくるわけです。

―家の中を風が流れるような表現の図面をよく見ますね。

 確かに建築家は、よく図面に風の流れを書き込んで見せますが、扉や窓の開け閉めを考えに入れて流線を描いている人はあまりいません。小さな住宅でも、開口部は意外とたくさんあるものです。
 その開口部のどれを開けてどれを閉めるかで空気の流れは違ってきます。住まい手にその開け閉めを無理強いするのでなく、うまく促せるように開口部をしつらえることもデザインだと思います。

例えば、高窓の開閉がしやすいように、安全でしゃれたスツールを用意しておく、あるいは扉を半開にしておけるストッパーを設けておくといった配慮が意外に重要です。

宿谷昌則:東京都市大学教授
(日経アーキテクチュアNo.970 P84.より引用)   』




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省エネ住宅とは? (第3回)

2012-03-14 08:54:56 | 住宅

混合しがちな断熱と遮熱の役割

― 断熱のほかに「遮熱」という言葉をよく聞きます。断熱と遮熱とはどう違うのですか。

断熱はこれまで説明してきたように、壁の内部を伝わっていく熱の量を小さくすることです。それに対して遮熱は、日射を吸収しないように反射することや、日射を吸収した結果、温度の高くなった面から出る長波長放射(人が熱を感じる放射のこと、連載第1回参照)が室内に入らないようにすることを意味します。

 垂直の不透明の壁であれば、断熱性は遮熱性を兼ねます。なぜなら、光を透過しない素材では、光は必ず熱になって伝わるので、断熱性があれば伝わってこないのです。

つまり、床・壁・天井では、冬、熱を逃がさないための遮熱にも効果を発揮します。

― では、屋根などに断熱材のかわりに遮熱塗料を塗るのは・・・

塗料の効果はあくまでも「従」です。何かの事情で断熱材をあまり厚くはできない場合に断熱材と遮熱塗料を組み合わせれば、それなりの効果はあるでしょう。注意してほしいのは、遮熱塗料には冬のための断熱性はないことです。

― ガラス窓の場合はどうですか。

 光を通す開口部(図2の下)は、床・壁・天井とは対策が全く異なります。日射のない夜間については一般の壁と同様に考えて、ガラスを複層にするなどの方法を用いますが、夏の昼間の日射のことを考えると、庇や窓の外側での日除けを用いた「遮熱」がとても重要になります。
 このとき、日除けを「窓の外」に設けないと、十分な遮熱効果を発揮しません。


よしずとカーテンの違い
― そういえば、夏、窓の外によしずをかけたりすることが効果的だとよく聞きます。窓の内側にブラインドやカーテンをつけるのとではどう違うのですか?

 ガラスは長波長放射を通しません。したがって、ガラスよりも室内側にある物体に日射が吸収され温められた結果、放出される長波長放射は、ほとんどすべて室内にとどまります。
 冬であれば、ガラスの内側にカーテンを引いても日差しで温められたカーテンから室内に放射が出て、暖かく過ごせますが、同じことが夏に起きたらどうなるでしょうか。

― 想像するだけで汗が出てきそうです。

 夏、室内側にかけたブラインドは、表面温度が低くても35度くらい、高い場合には38度ぐらいまで上がります。床暖房のちょうどよい表面温度がせいぜい26〜28度ですから、それより10度近くも高い。その放射が室内に放出されたらたまりません。
 これに対して、室外側に日除けをつければ、ガラスは長波長放射を透過させませんから、室内が暑くなりにくくなるのです。

 これが「遮熱」ということです。


庇で熱取得率はぐんと下がる
― 開口部に「日射熱取得率」という指標がありますが、これはどういうものですか。

 日射熱取得率(または日射侵入率、η値)とは、ガラスに当った日射を1としたとき、室内にどのぐらい侵入するかを示す数値です。数値が小さいほど日射に起因する熱取得が小さくなり、夏季の冷房負荷は小さくなります。
 日射熱取得は3つの要素から成ります。ひとつは光、すなわち「透過日射」。残る2つは熱で、ガラスや壁・天井が日射を吸収した結果放出される「長波長放射」、これらの面に触れている空気に伝わってくる熱「対流」です。日射熱取得率にはこの3つの成分が考慮されています。

― 日除けを内側につけるのと外側につけるのとでは、日射熱取得率はどのくらい違うのでしょうか。
 
 日除けのない普通の単板ガラスで0.85ぐらい、複層ガラスだと0.75ぐらいで、日射熱取得に関しては単板でも複層でもさほど大きな差はありません。ブラインドを室内側に付けた場合、羽根板の色にもよりますが、せいぜい0.6というところです。それが、窓の外に日除けを付けると0.1〜0.3と、ぐんと小さくすることができます。


― 日除けが外側にあると、部屋の中が暗くなりませんか。

 材質が同じなら、それが内側にあろうと外側にあろうと、通過日射(光)は同じです。明るさに影響はありません。

宿谷昌則:東京都市大学教授
(日経アーキテクチュアNo.969 P76.より引用)   』




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