Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「イレブン・ミニッツ」イエジ・スコリモフスキ

2016-10-02 16:33:07 | cinema
【ネタバレ含みます】

冒頭から唸らざるを得なかったのだけど、
うーんなんなんだこの1カット1カットみなぎる
独創性は。

バイクでガーッと走って来て回り込んで止まるとカメラはそれに並走して来て最後は地面から見上げる目線になり、バイクとビルの上を旅客機が低空でゴーッと通り過ぎるとか、こんなの意図して撮れるもんなんだろうか。

ホテルの廊下をウロウロするだけのオトコだけどあの閉塞感と怪しい空気はなに?彼は時系列おかしくないかな、目の傷ってあの時できたんじゃないのかな、違うのかな。

救急車で安アパートの入り口に到達して、救急隊員が階上に走るんだけど、そこでなにやら起こるが、それが音だけで画面はなぜか入口脇の石の壁にズームインしていき、壁を伝う水滴の流れが逆流する。なんなんだよおもお。

あとイヌ目線には笑った。執拗に飼い主を追う目線だが、近くを他の犬が通るとキッとそちらを一瞥してワン!と一喝するとか、芸がこまかい。

ヤクの売人くさい彼がオフィスビルペントハウスに行くエレベーターで変な虫だかなんだかに翻弄された挙句、最上階の部屋はなにやらリンチ風の変な男の声で不吉な言葉が響き、気が狂いそうになるとか。
あの声は、少年が強盗に入ると縊死体があった質屋で、モニターが勝手に光り出しそこで流れる声だ。主人の死に何か関係があるに違いない。

その少年が目撃した未確認飛行物体。

ヤクの売人の親父のホットドッグ屋は出所前なにをやらかしたのか。

安アパートの上ではそもそも一体なにが起きたのか。


異様な画面の連続の中で、回収されない謎が溢れんばかりに注ぎ込まれる。
終盤のドミノ倒し的惨劇は最高だが、すべては謎のままのカタストロフ。
スッキリするようだがぜんぜんしない!
前宣伝で最後にすべて回収するのかと勝手に思っていたが、全然そうではなかった。素晴らしい。

それに、出て来た人物ほぼ全てが最後にいっぺんにひどい目にあう。たまらん。

これがスコリモフスキの現在なのか。
正直言ってもう大好きである。
長らく、人生の幸運はタルコフスキーとジャック・タチとデヴィッド・リンチを知ったことだと言ってきて、その後そこにポランスキーとクローネンバーグを付け加えてきたが、いよいよスコリモフスキをリストに加える時が来たようだ。。。


個人的には、ホットドッグ屋であることが感動。『早春』を思い出すからだけど。

あとリンチに影響を受けてないかね、どうかねイエジー?

@ヒューマントラストシネマ有楽町
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