Mani_Mani

「音楽や読書好きなので、出会ったCD・本・映像などのことが中心になるかと」と思ってたら単なる垂れ流し日記になってます。

「山椒大夫」溝口健二

2008-12-10 22:33:09 | cinema
山椒大夫 [DVD]

角川エンタテインメント

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1954日本
監督:溝口健二
製作:永田雅一
原作:森鴎外
脚本:八尋不二、依田義賢
撮影:宮川一夫
美術:伊藤憙朔
衣裳:吉実シマ
音楽:早坂文雄
助監督:田中徳三
出演:田中絹代、花柳喜章、香川京子、進藤英太郎

溝口健二の力作
だからというわけではないつもりだが、やっぱり見事な作品だと思ってしまう。
物語が非常にベタな世界なのだが、最近自分が歳をとってきたせいだろうか、こういう泣ける話が妙にしっくりきちゃったりする。
(いや、意外と若い頃から好きだったかも??)
そのせいもあって、よい映画だなあと思ってしまうのかもしれない。


冒頭、国分寺の礎石と思われる円形の石のアップが無言で示される。
これが中盤深い意味を持ってくるが、ここではなんだろうこれは?と不思議な感じだ。
それに続くのは、森の中、小川、けぶる空気の中、妖精のように白装束の男の子が奥から駆けてくる。それにつづき3人の女性が歩いてくる。
なんとも高貴な空気に包まれたショットで、これだけで高貴な身分の親子が厳しい旅を続けているということが伝わってしまう。
すごいなあ。

『山椒大夫』は、中世の説経節をもとに森鴎外が書いた小説を映画化したもの。話としては「安寿と厨子王」というほうが有名なのかもしれない。
で、この男の子、もちろん主人公のひとり厨子王なのだが、若き日の津川雅彦が演じている。う〜ん、ぴちぴちの少年だ(笑)

******

安寿と厨子王の二人の子供、その母、付き人の四人で遠く父が左遷された地へ向う旅の途中のことだ。盗賊が出るという地で宿もなく野宿をしていた四人に、怪しげな巫女が近づく。それはそれは難儀なことで、うちへお泊まりなさい。と言葉巧みに四人をからめとる。実はこれは人買いの手先。翌朝舟で出立しようというとき、船頭たちによって親子は引き離される。激しい抵抗もむなしく、母は佐渡へ遊女として売られ、子供は丹後の国の荘園主山椒大夫のもとに奴婢として売られる。
子供たちは苦しい使役に耐え、長じるも、厨子王は幼少の頃の純真さを失い希望を捨てたかのようだ。

ある日、衰弱した仲間を山奥に捨てに行く際、ふと逃亡のチャンスが訪れる。厨子王は安寿を連れて逃げようとするが安寿は兄だけを逃がそうとする。自分が行けば足手まといとなり結局二人とも捕まる。兄だけなら逃げられる。厨子王を逃した安寿は、山椒大夫に責められ兄の行き先を話してしまうのを恐れて・・・

一方、国分寺にかくまわれ逃げ延びた厨子王は、都へ出て関白さまに自らの身分と奴婢たちの境遇について直訴する。牢獄につながれるも関白の計らいにより救い出され、丹後の国の守となる。すごい出世だ!
厨子王はその地位を利用し、人身売買の禁止、奴婢の廃止、労働への対価の支払などのおふれを出し、山椒大夫を国外追放とする。
晴れて安寿の身請けに向った厨子王だが・・・

志を果たした厨子王は、母のいる地佐渡へ渡り、遊女となっているはずの母を捜す。前年に津波の被害にあったという海辺にいくと、貧しい成りの女が座っている。「あんじゅこいしやほ〜れほれ ずしおうこいしやほ〜れほれ」(ってなかんじの)歌を歌っているので、母とわかる。涙の対面。


ああ、泣けるなあ〜〜

***

親子が別れ別れになるまえの旅のシーンは、冒頭にあったように幽玄の世界。4人がすべるように歩く一面ススキの原。一斉にススキが風に揺れる様の見事なこと。
そして湖畔で遊ぶ子供たちの背景に広がる日本の野山の風景。
完璧な絵がある。

そして湖畔の小舟を舞台の親子の別離劇。

おかあさま!おかあさま!あんじゅ!ずしおう!
お金ならすべてさしあげます!どうか舟をお戻しください!
後生ですから!お戻しください!

いやいや〜;;

『雨月物語』でも夫婦今生の別は湖畔の舟と岸で行われたが、ここでも別離は舟をモチーフとしている点に注目〜〜


後半は一転して奴婢たちの暮らす劣悪な環境をハイコントラストで描く。山椒大夫の過剰に立派な茅葺き屋根の屋敷と、その周りに広がる奴婢たちの掘建て小屋の対比。ぬかるんだ地面、貧相な服装、裸足。脱走を計る奴婢には、額に焼きごての刑が待っている。残忍な山椒大夫、絶叫する奴婢、見守る奴婢たち。みんな真剣だ。もはや演技を通り越している。すごい。

このバラックはオープンセットだそうだが、なかなかのリアリティだ。あのお屋敷もセットだというからすごい。
セットもすごいが、奴婢たちのいでたちや持ち物なんかも全く手抜きが感じられず、むしろ過剰なくらい凝っていて、まったくそのころの映画産業の底力を感じるよ。

なわけで、みどころは前半の幽玄と、後半の迫真のリアリズムよ。

****

そんななかで、母玉木を演じた田中絹代だけが、ちょっと芝居じみていたような気がするのはワタシだけ?(笑)一人だけ浄瑠璃か文楽かという盛り上げ方だったなあ。特にラスト。

安寿の成人してからを演じた香川京子は清楚でいいなあ。
日本映画界大活躍でまだ現役でいらっしゃる。

厨子王(花柳喜章)はまあまあいいんだけど、叫んだときの声が通らないのが残念でしたな。

1954ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞



そうそう、この話、なんでタイトルが「山椒大夫」なんだろう??
どっちかっつ〜と脇役な気もするんだがのお
ま、中世に成立しちゃってるんでいまさらどうしようもないか(笑)

【追記】
それから、『雨月物語』で出て来たのと全く同じ朽ちた土壁が出てくる。
同じオープンセットを使っているのだろうな。


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安寿と厨子王 ヴェネチア国際映画祭 茅葺き屋根 エンタテインメント 進藤英太郎
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