Mani_Mani

「音楽や読書好きなので、出会ったCD・本・映像などのことが中心になるかと」と思ってたら単なる垂れ流し日記になってます。

「晩春」小津安二郎

2008-12-01 23:42:42 | cinema
晩春 [DVD]

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1949日本
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
出演:笠智衆、原節子、月丘夢路、杉村春子

くったくなく笑わせていただきました
もちろんしっとりした情感のようなものを味わいながら
小気味よいカットのつなぎの妙技を味わいながら
脚本のはしばしで現れる「遊び」を心で楽しみました。

****

笠智衆のよさなのかもしれませんが、
言葉のしつようなくりかえしが随所にみられ、
それが妙に面白いのでした。

杉村春子を相手に今様のお嫁さんの結婚式での「食べっぷり」について
「そりゃ食べるよいまの若い人は
あんただって今だったら食べるね」
「そうかしら」
「いや食べるよ」
「でもあんなにあっけらかんとされたんじゃ」
「いや食べるよ、食べるね、うん、食べる」

とかいう会話をひょうひょうとされると思わずこちらも声を出して笑ってしまう。
映画館だったら密かな連帯感とともに満場で含み笑いをするだろう。
いい感じだ。

(あと、のりちゃんのお婿さんの名前についての会話もなかなかに笑えるが、みてのお楽しみだ。)

こういう会話も、対面切り返し、人物の背面から、二人をやや遠景から、等のショットのつなぎで構成されているので、役者のアドリブとかではない、綿密に計算されて撮られていることがわかる。
意外とテンポのよいリズミカルな編集で、派手ではないが見ていてノリのようなものが出ている。

のりちゃんと父の住む家の中も、さまざまなアングルでカメラが据えられており、その切り替えがすばらしい。どんな間取りなんだろうと興味を抱くような構成感がある。

****

1階の居間と父の仕事場は和風だが、2階ののりちゃんの部屋にはしゃれた椅子とテーブルがあって、さりげなく世代間の違いを表しているのも面白い。

二つの物語が撚り糸のようになっていると思う。
●娘を嫁にやる父親の物語

●父親に嫁に出される娘の物語
それぞれに結婚という機に思うことがあり、それぞれよく感じられるつくりになっているのがうまい。
糸が撚ってあるのは、やや近親愛めいた親子間の近さによる。
それと終幕、父親と娘のりちゃんの友人とでかわされるお酒によって二つの世代はゆるやかにつながりを持つ点によって。

のりちゃんの旦那となるひとはついにスクリーンには登場しないのもよい。
よく出来ている。

****

あと、顔の演技。
原節子は冒頭、茶会で礼をしたあとふと上げる顔から、
周囲から一つ抜きん出た満面の笑みを見せる。
ここで印象づけた笑顔がずっとのりちゃんの印象を支配するのだが、
父親の再婚話がでたときから、表情は一変する。
彼女はほとんど顔による演技だった。

一方、笠智衆は一貫してほとんど同じ表情をしている(笑)
一世一代の嘘をつくときもひょうひょうと同じ顔をしている。
彼はほとんど演技をしていない。
周りがどんどん動いていくことで、彼の相対的な動きが感じられるとでもいうべきか。

杉村春子はサイフを拾う(笑)
あのシーンはほんとに面白い。
最後までサイフを届けたかどうかわからないし
拾った直後におまわりさんが通りかかるのも
不思議でよい。

どこまで考えられているのかと考えると、
もう隅々まで考え尽くされた作りなのだとわかるのだが、
見ているとそのことを忘れてしまう。

忘れないで対抗して、そこに込められた表現のための労力を思うことで、
この映画はますます暖かくなるように思う。

****

舞台は主に鎌倉にある家なのだが、父の助手さんとノリちゃんが自転車でちょっと遠出するシーンがあり、七里ケ浜から鵠沼、辻堂あたりの海岸線の風景が映し出されるのが、個人的には感無量。

そこはワタシの育った場所。しかもこの時代、そこには海岸砂浜以外なにもない。近くに見える江ノ島にも灯台(展望台)の姿はない。原風景のさらに前時代の風景なのだった。滂沱。

あのあたりは占領軍の演習場になった過去があり、そのため周辺のちょっとした標識なども英語表記だったのだが、それもしっかり映っていた。

時は去り、二度と戻らない。。


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