Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「ロマン・ポランスキー 初めての告白」ロラン・ブーズロー

2013-07-26 01:09:36 | cinema
ロマン・ポランスキー 初めての告白
ROMAN POLANSKI: A FILM MEMOIR
2012イギリス/イタリア/ドイツ
監督:ロラン・ブーズロー
製作:アンドリュー・ブラウンズバーグ
出演:ロマン・ポランスキー、アンドリュー・ブラウンズバーグ


ポランスキーは作品も波乱万丈だが、本人も相当に波乱万丈な人生なので有名。
なのにそういうことを振り返ったりまとめたりしたものがほとんどない、ということから、このインタビュー映画は出来たということだ。

印象に残ったことを列挙しよう。

まず冒頭、パリにいたポランスキー一家が、ドイツがポーランドに侵攻する直前にクラクフに移住したというところで、ポランスキーが「これが運の尽きだ」と言うのだが、いや、全く不運としか言いようがないと唖然としてしまった。あのままパリにいれば母親も姉も命を落とさずに済んだかもしれないのだ。運命の恐ろしさ。

ワルシャワでのゲットーでの体験や、収容所から生還した父親の体験は、のちに『戦場のピアニスト』での豊富なディテールとして再現されている。
夜に女性が連行され撃ち殺されたり、少年ばかりの死体がゲットーに転がっていたり、ゲットーから抜け出して買い物をしたり、護送車に押し込められ所持品すべてが広場に取り残されていたり、そういうもろもろが実体験の再現であったことに驚く。

ゲットーから父親の機転で脱出した幼いロマンが荒野を歩き続けた記憶は、『オリバー・ツイスト』でオリバーがロンドン目指し田舎道を延々歩くシーンに反映しているという。
私見だけど、これは『テス』でも見られる影響だ。荒野を歩き靴も服も泥だらけになるあの疲弊感。

生死も明らかでなかった父親と数年ぶりに再開した際の情景を回想する時、ポランスキーが改めて涙ぐむのが心打たれた。少年にとってそれはどんなにか嬉しく頼もしい再開であったことか。


ポランスキーが映画の世界に入った経緯などはほとんど触れないのはちょっと残念。

シャロン・テートの事件もまた不運ということかもしれない。事件のあった屋敷はポランスキーの前にはミュージシャンが住んでいて、ミュージシャン志望のマンソンはその屋敷を訪れ、冷たくあしらわれたというのだ。もしポランスキーがその屋敷を借りていなかったら…

一方でポランスキー自身のある意味強運も印象的。事件の時はロンドンにいたというから。

事件のあとはマスコミなどか有る事無い事書きたてたということで、シャロンたちか黒魔術に凝ってたとかそういうことを言われたということ。この作品の中では異例なことに、ここで当時のポランスキーの会見シーンが引用される。『真実が明らかになった時、みなさんは恥いることになるでしょう』と。
ここは制作者として絶対織り込んでおきたいポイントだったのだろう。マスコミはいつの時代もこんな感じなのかな。

織り込んでおきたいポイントといえばもう一つ、未成年淫行の件では、起訴後ポランスキーがヨーロッパに『逃亡した』と言われていることに対して、あれは正当な手続きによる渡航だったと強調していた。

あとは最近の逮捕劇の話。

**

ポランスキーと長年仕事をともにしているスタッフによる作品なので
ポランスキーに都合の悪いことや批判的な視点はいっさいないのだが
さんざんゴシップ的にあちこちで書かれてきたことに対するポランスキー側からのちょっとした反撃と思えば
それはそれで価値のあることだろうと思う。
批判的でないということさえわかっていればいいのだろう。

ワタシ個人的には、映画を作り始めた経緯とか、役者としての経験とか
そういうキャリア的なことも知りたかった。
あとは、シャロンもそうだしナスターシャとも関係があったらしいし、エマニュエル・セニエとくっついたりしてるので、女優に手を出す系の人かと思うが(苦笑)そのへんのことも触れていると見応えがあったかもねえ。



最後に、一番気に入っている作品は?(だっけ?)という問いに答えるのだが、
ああ、なるほどなと。



@イメージフォーラム
コメント (3)
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