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貸金業者の提起する訴訟の中には、明らかに消滅時効期間を経過している債権の取り立てを目的とするものがあります。訴状自体に、最終弁済日が平成13年とか14年と書いてあり、それ以降の入金はまったくないようですので、おそらくは消滅時効は完成しているのだろうなと思います。
ただ、そういう請求であっても、被告が答弁書も提出せず、期日において欠席すれば、もはや弁論を終結するほかなく、元金の数倍の遅延損害金が加わり、請求額が元金の数倍に膨れ上がってるものについても認容判決をすることになります。
そうした債権は明らかに「不良債権」ですから、たぶんバルクセールで業者に安く買い叩かれているのだろうと推測されますが、債権の実質価格は考慮できず、額面通りの判断をするほかありません。
たまに、答弁書に「消滅時効を援用する」とはっきり書いてくる被告もいるのですが、そうした場合には原告は早々に訴えを取り下げてしまいます。中断事由がなく、消滅時効を援用されると勝ち目がないのでしょう。
それにしても、消滅時効というのは、実に不思議な制度です。
消滅時効は「援用」といって、その旨、裁判で主張しないと裁判所は勝手に判断できないと法律で定められています。自ら借金をしておいて、時効を援用して債務を免れるのは「不道徳」だということで、当事者からの「援用」が必要になるのですが、そもそも、そうした制度を知らない債務者も多いようです。
確かに、借りたお金を返さない被告も悪いのでしょうが、返済期日が来てもたいした督促もせずに、10年も放っておいて、遅延損害金を膨らませるだけ膨らませて、訴えを提起し、債務名義を取得する原告もあまり「道徳的に」褒められたものでもないように思います。
私は、答弁書も提出せず期日に出頭もしない被告については仕方がないとしても、答弁書を提出し、出頭した被告に対しては、消滅時効期間が経過していると思われる場合には、そのことを説明し、一度、法律相談を受けて、どうするか決めなさいといって弁論を終結せず、期日を続行するようにしています(貸金業者の代理人は明らかに不満そうですが・・・)。
ところが、せっかくそうした示唆をしても、次回期日までに書面も提出せず、そのまま欠席してしまう被告もいたり、どんな法律相談を受けたかわかりませんが「時効」のことは一切主張せず、他の的外れの主張をする被告もいて、がっかりさせられます。
消滅時効のことを理解し、それをきちんと主張できるような人は、そもそも、こうした業者から借り入れをすることはなく、被告となることは少ないのかもしれません。
先日も、消滅時効が経過していると思われる請求で、被告が出頭してきたので、消滅時効の説明をしようと思っていると、原告である貸金業者の代理人が、したり顏でいきなり請求の減縮を申し立ててきました。なんと、弁論期日の前日にわずかな額の弁済を受けたというのです。これは、明らかに時効完成後の一部弁済によって、消滅時効の援用を封じるものだと思われるのですが、被告に確認すると「はい、払いました。」と答えます。消滅時効のことを説明すると、そんなことは今、初めて聞いたし、自分は年金生活をしている身の上なので、元本額、しかも長期の分割でないと支払えないので和解したいと言います。原告は、当然、いまさら和解に応じるはずもなく、結審を求めてきます。とりあえず、消滅時効の制度と、一部弁済に伴う消滅時効援用権の喪失の仕組みを説明して、あとは法律相談にいって相談してみなさいということで期日を続行したのですが、私の話を聞いている被告の表情は乏しく、理解も怪しく、たぶん、適切な主張はできないだろうなと思いました。
お金を借りて返さない方が悪いのか、高利で貸して放っておいて元本の数倍の延滞利息まで取り立てる金融業者が悪いのか、私にはよくわかりません。
ただ、一部弁済による消滅時効の援用権の喪失についての最高裁判例は、一部弁済を受けた債権者の側では、もはや消滅時効は援用されないだろうという期待、信頼が生じ、それを保護するために「信義則上」債務者の時効援用を許さないとしたに過ぎないのですから、消滅時効が完成していることをはっきりと認識し、その援用を封じるために、甘言を弄し、被告の無知につけ込んで僅かな弁済をさせる貸金業者についてまで、信義則上、相手方の援用権を喪失させる理由はないようにも思えます。現に、そうした判断をした簡裁判決もあるのですが、控訴審においては判断が分かれているようです。信義則適用の一場面なので、微妙な判断になるのでしょう。
消滅時効の援用における「不道徳」や「信義則」って一体どういうことなんでしょう。
 


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コメント
 
 
 
村主隆行裁判長様≒東京地裁民事交通部 (秦野真弓 しんのまゆみ)
2015-11-26 02:30:14
東京地裁民事交通部合議係にて,村主隆行裁判長様主宰,交通事件傍聴。村主裁判官様は,札幌地裁労働集中部時代→画期的判決のある,優しい方
問題は,私の傍聴した交通裁判[2000年に交通事故に遇われた原告様が,後遺症症の為,今になり提訴した事象=時効になりやしないか,私,心配した事]
私は法律知識皆無.[ショーメツジコウ]知りません。でも,折角の機会.ショーメツジコウの事,ネット検索したい
 
 
 
Unknown (はるな)
2015-11-26 10:43:02
他人から金を借り返済しない奴に時効など必要ない。銀行からも相手にされずサラ金で高利の金を借りたとしても、担保がないのだから当たり前。金も信用も財産もないやつに融資するんだからせめて金利位高くしないと商売にならないし、借りた後になって過払いとか言って弁護士事務所に駆けこんで最終的に弁護士の餌食になっている。これて誰が悪いて、借りた奴でしょう。労役制度でも作ってほしい.ほんとなんいもないやつほどたちが悪く強い者はない。
 
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