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一審民事訴訟事件の新受激増

2009年08月29日 | 瑞月
 裁判所時報(最高裁事務総局発行の裁判所職員向け情報誌)第1488号(21年8月15日号)に,司法統計から見た平成20年の民事・刑事事件概況が報じられています(家事・少年事件については1486号)。
 平成20年には,刑事事件,少年事件,破産事件の新受件数は,平成16年からの減少傾向が続いており,強制執行事件は若干の増加に転じただけであるのに,民事の訴訟事件は,平成16年以来,激増を続けており,折れ線グラフの角度は60度を超える上り勾配です(家事事件の新受件数は,平成2年以後,約45度の上り勾配で増加中)。数字で示すと,地裁の民事訴訟の新受は,平成16年に14万件であったのが,平成20年に20万件(43%増)となり,簡裁の民事訴訟の新受は,平成16年に35万件であったのが,平成20年に55万件(57%増)となっています。
 長引く不況による企業活動の混迷,国民生活の困窮を見事に反映しているといえますが,平成21年に入ってもその傾向は止むことを知らず,私の所属する簡易裁判所の訴訟事件の新受は,今年の6月末時点で4000件に達し,去年の同時点では3000件だったので,33%の増加です。貸金・立替金業者の庶民に対する請求事件及び庶民のサラ金業者に対する過払金返還請求事件が増えているからです。
 ちなみに,最近,私が受けた1ヶ月の新受事件は約180件で,その内80件が貸金・立替金業者が起こした事件,80件が庶民の過払金返還請求事件,残りの20件が通常の市民型事件です。
 貸金・立替金業者の事件では,被告(庶民)の家計の窮状のため,分割払の和解ができない事件が多くなっています。過払金返還請求事件も,サラ金業者の財務状態が苦しいようで,和解が出来にくくなっており,毎週,過払金事件だけでも判決を5~6件書いている状態です。この状態が何時まで続くのか暗たんたる思いです。(瑞月)


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