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個人的見解その1

2011年03月01日 | Weblog
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)

 これは難しい問題である。先日、菅内閣の農水政務官が辞任された。小沢氏への徴罰問題が引き金のようだが、元々菅首相のぶち上げた「平成の開国」への農林水産行政に携わる者として、また農業王国北海道選出議員としての反感が大きかったとみる。

 竹中平蔵氏などもテレビで言っていたけれど、野党時代あれだけ小泉郵政民営化をはじめ一連の規制緩和に大反対しておきながら、規制緩和の代表格ともいえる複数国との経済連携協定に、いとも軽々にのめり込むような発言をする理念・思想の一貫性のなさに危惧を感じる。農業政策だって、選挙目当てとしか見えない農家戸別所得補償をすすめ、国際化に備える姿勢とは遠かった。ただ、「平成の開国」というフレーズが気に入ったとしか言いようがない。

 諫早湾干拓地の水門開放問題にしても、裁判の判決が出ると同時に水門開放に舵を切る決定をしたが、長崎県など地元知事に事前相談は全くなかったようで、知事が怒っている報道を見た。確かに干拓を始める段階で干拓事業に反対だったことに善悪の評価はできないが、すでに干拓地には農業者がその営みを始めている現状を無視して、地元双方の意見を十分聴取することなく、司法判断だけで即断することは、リーダーシップの発揮でも何でもなく、政治家としては問題があるのではないかと思う。

 「民はこれに由(よ)らしむべし。これを知らしむべからず」、「民は信なくんば立たず」と論語のことを以前にも書いた*1)けれど、TPPなど国家の重大事でありながら、一般の国民にはその善し悪しが分かり難い問題の対処は、国民から見て「この政治家が言うことなら」と思えるリーダーの決断でなくてはならない。

 菅首相への支持率は20%前後しかない。同じような世論調査で常に40%以上*2)を維持した小泉首相が進めた郵政民営化は国民の意志であったといえるけれど、時代のトレンドとはいえ菅首相の言うTPPでは、あまりに信頼感に欠ける。

 日本の今まさに正念場にあり、この機に巡り合わせた者として不退転の決意で政府のかじ取りを続けるように菅首相は言うけれど、今や唯一首相をコロコロ替えるのは如何なものかとの無責任な論理だけが首相の味方である。

 日本にとってTPPは、韓国勢に押され気味の電気・電子業界などがさらに水を空けられないための梃入れにはなるかもしれないが、農業は厳しいというのが通説である。それより私には、TPPに潜むその他の自由化が良く分からないので不気味な気がしている。
  
 それは人の移動の自由化である。アメリカは元々移民の国で免疫があり、シンガポールなど、外国人単純労働者も自由に受け入れているようで、女性の外国人労働者には毎月妊娠チェックを行い、妊婦は本国に送り帰す措置を取っているとのこと。日本政府にそのようなドラスティックな施策が出来るとは思えず、歯止め無い安易な労働力の流入は、日本国民の生活をさらに低下させることにならないか。目先、資本家や経営者には好都合でも、一般の身一つの国民にはさらに辛いことにならなければいいが。

 TPPでは、その全容を国民の目に明らかにした上で、将来に向けてあらゆる事態を想定した慎重な検討が必要であり、「平成維新」とか「平成の開国」などと自己陶酔的フレーズを繰り返し、あげくこの国を混乱させているリーダーの続く政党の政権に賛否を委ねるのは危険である。というのが私の個人的見解である。







*1) 平成21年5月13日掲載、本HPエッセー「いい話を尋ねて⑭」参照下さい。文藝春秋2004年5月号特別企画「名著入門」に掲載された白川静先生の「『論語』を読み孔子と対話する」からの引用による。
「民はこれに由(よ)らしむべし。これを知らしむべからず」とは、「従わせることはできても、その政策を理解させることは難しい」という意味。だからこそ「この人たちにまかせておけば大丈夫だ」という信頼が、政治の生命である。
*2)JNN調査による。在任中の支持率は92.8~44.2%。時事通信の調査では30%台のこともあるがここでさえ、退任前1年間でも53.5~39.4%と高支持率を維持していた。飯島勲著、「小泉官邸秘録」(日本経済新聞社2006年刊)による。
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