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未然防止を考える その3

2016年12月07日 | ブログ
未然防止のための知識

 設計者がトラブルを未然防止するためには、トラブルに関する知識が必要であり、その知識には、予測のための知識と対策のための知識がある。予測のためには気づきのための知識と詳細解析のための知識、対策のための知識には設計仕様の立案のための知識と設計仕様の評価のための知識が必要となる、とある。

 いずれにせよ、無から有を創出し、世の中に提供して所期の目的に沿った使用に耐えうる製品を作り出すためには、それなりの専門知識が必要なことは改めて言うまでもない。新しい材料を使用するなら当該材料の材質に関する網羅的な知識が必要となる。

 携帯用電子機器ではそれに使用する(充)電池の性能が、補助部品として重要な役割を担うが、最近これの発火事故が国内外で発生している。飛行機内や電車内で発生して周辺に重大な迷惑を及ぼした。電池にとってその寿命が命で、1回の充電で何時間使用できるかが当該製品のセールスポイントとなるため、長寿命の電池が開発されてきた。そこに落とし穴はなかったか。

 リチウム電池は、圧力を掛けると発火することは知られているが、通常の使用において発火するほどの圧力が掛かるとは考えにくい。しかし、設計時のトラブル予測が不十分であり、使用する材料の品質に問題があったか、製造工程での検査を掻い潜る程度の不具合などが絡み合って、繰り返し充電によるストレスに耐えうる限度を低くさせたものであろう。

 新たな製品が、顧客をモニターにしてはならない。どこかで事故が起これば、その原因を潰してゆくことで、設計変更を重ね高品質に仕上げてゆくことが当初からの手筈であってはなるまい。

 新薬の副作用なども、特異的な体質に対する副作用までを事前に十分検証することは至難であるにしても、薬学の専門家、新薬の開発者は、それに対処する経験と知識を持つ必要がある。

 その意味では、携帯電子機器の充電池はじめ各種電子機器・部品の安全性は、実験によって把握し得るから、新薬を世に出す苦労からすれば、容易いと思われる。常識はずれの使い方による危険性は、取扱い説明書に警告する。

 それでも事故が起こるのは、設計段階における知識の構造化が不十分なため、コストを優先させるため使用する材料の品質を落とすようなことがあったり、検査基準を甘くしていた懸念もある。設計から出荷検査まで、トラブルを未然に防ぐためにはそのため十分な知識と加えて強い責任感が必要である。



本稿は、財団法人日本規格協会発行、日本品質管理学会監修、田村泰彦 著「トラブル未然防止のための知識の構造化」2008年9月刊 を一部参考にしています。

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