チェインギャングは忘れない
横関 大 著 講談社 / 2011.11
護送車が襲撃され、五人の男が脱走した。
脱走した男の一人である大貫修二は、記憶を失い停車中のトラックの前で眠っているところを、
ドライバーの早苗に蹴り起こされた。
その頃、数日後に迫った連続殺人鬼「サンタクロース」対策配備の準備をしていた池袋署の神崎と黒木は、
大貫が脱走したという知らせを聞き、秘密裏に捜査をはじめる。
忘れた者、乗せた者、恋する者、探すもの。
無関係に見えたさまざまな事実がつながり、最後に待つのは意外な、されど爽快な真相!
初・横関大さんです。
江戸川乱歩賞受賞作家で、残念ながら受賞作を読む機会がなかったのですが、今回、講談社のモニター読者に当選して、一足お先に読ませて頂きました。
とても読みやすいのが印象で、お話もそれほどヒネリや深さがなく、サクッと読ませるタイプなのかな?と思ったのですが、ラストは思わぬ展開が待ち受けていました。
緊迫の護送車襲撃から始まり、記憶喪失の脱走犯の登場、この先、どれだけのアクロバットな展開が待ち受けているのかと思いきや、一転、穏やかな空気が漂い始め、私もすっかり脱走犯・大貫修二の雰囲気に呑まれてしまいました。
修二と関ることになってしまった早苗・航平親子、修二逮捕のため捜査に当たる二人の刑事、過去に修二と関ってきた人物たち、全ての人が修二のとりこになってしまうという、その愛すべきキャラクターが素晴らしかったです。
ところがっ!その大貫修二が実は?ずっと不思議に思っていたのですが、高校時代に早苗は修二と出会っているのに、顔を覚えていない?そもそも、完璧過ぎる修二の計画の裏には?と、クライマックスは驚きの連続が待っていて、キャラクター共々、面白過ぎる展開に爽快感を感じました。