ただの映画好き日記

観た映画と読んだ本の自分用メモ。

この世界の片隅に 上中下巻 / こうの史代

2017-01-22 | 本 その他


  この世界の片隅に 上・中・下巻

  こうの史代 著     双葉社 / 2008.1


  戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。
  主人公、すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。
  しかし、一日一日を確かに健気に生きていく…。






特に実話ってことではないんですねー。
空襲の回数や被害状況、人々の暮らしは資料を基にしているでしょうが、すずが存在していたワケではないと知り、少し残念に思いました。
『星守る犬』とか『犬と私の10の約束』とか(すみません、戦争のお話ではないのですが…)、とても感動的なお話であればあるほど、作り話と知ってしまっては、どうしても感情移入出来ず、申し訳ないですが、私はシラけてしまいます…。
実在したんだろうなと思うからこそ、どれだけのご苦労だったのだろう…と心から寄り添えるのであって(いやいや、でも、これ以上の辛い経験をされている方達がいらっしゃるのだから…と思いますが)、でも、作り話で泣かされてもなーと、やっぱりそう思ってしまうところがあります。

映画でも感じましたが、曖昧さが目立つのが気になります。
結局、太極旗は何だったのか?空襲の回数や被害状況などは説明されていても、私の知りたかった肝心のところが書かれておらず、これも残念でした。
同じくすずの、「最後の一人まで戦うんじゃなかったのか?」と激昂するシーンも、どちらの意味で発せられた台詞なのか、私には判断がつきませんでした。
映画では伝わりきらなかったものが漫画には描かれているだろうと期待しましたが、残念ながらそうではありませんでした。
もちろん、フィクションでも心を打たれるものはありますが、これはちょっと違ったかなーと思いました。
しつこいようですが、実話だったら、多少の曖昧さにも、すずの気持ちを汲むことができただろうと思います。

それから、遊郭にいる白木リンは周作が結婚したいと思っていた人だったんですね。
幼い頃にすずに出会って、それからずーっとすず一筋だったのだろうと思い込んでいました。
だからこそ、二人が幸せになってくれたら…と思ったのに、本当にすずは、足の悪いお母さんの代わりの働き手…と思われても仕方ないですね。
最初の頃のお姉さんのあの態度もなるほどでした。
もう一つ、水原晢がすずに放った「一緒くたに英霊にして拝まんでくれ」の言葉。
遊郭同様、私の性格が悪くて申し訳ありませんが、若干、意図的なものを感じました。

というワケで、原作を先に読んでいたら映画は観に行っていなかったと思います。
日本中が感動しているところに水を差して申し訳ないので記事にするのはかなり迷ったのですが、
これが世界で公開されるんだなーと思った時、敢えての意見もあっていいかなと思って…、すみません。

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