四月のテレホン法話(4/1~/15)「木挽(こびき)」

2015-04-01 09:34:53 | 法話
四月のテレホン法話(4/1~/15)


「木挽(こびき)」
 
木挽(こびき)とは人力(じんりき)で、大(お)鋸(が)という大きな縦(たて)挽(び)きの鋸(のこ)で丸太(まるた)を挽(ひ)く仕事と、それを行う職人(しょくにん)達(たち)を称(しょう)していう。「木挽(こびき)の一升飯」という諺(ことわざ)もあるから、ものすごい重労働だったらしい。勿論(もちろん)、平成の御代(みよ)には、人力(じんりき)に頼ることなく、製材所を舞台に、モーター駆動の帯(おび)鋸(のこ)が挽(ひ)いてくれのだが、今(いま)猶(なお)、職人(しょくにん)技(わざ)が求められているのである。
以前法話で話しが、達谷西光寺では平成27年度、慶長20年建立(こんりゅう)の鐘楼の御修復を計画している。でも、これがなかなかの難工事で、困って了(しま)うのである。例(たと)えば、木材の調達。一般の住宅ならば、日本農林規格(JAS)の製材を買えば、それで済む。でも、150貫(かん)、約600キロの洪(こう)鐘(しょう)を末永(すえなが)く吊るためには、中央の八角柱四本を六寸から九寸に替(か)えなければならない。梁も、ほぼ倍の寸法となる。だから、丸太は一抱(ひとかか)えもある大木(たいぼく)ばかりである。
これを揃(そろ)えるのに、じつに長い時間を要したのであるが、去る3月28日の早朝7時に、一関の工業団地にある山一(やまいち)木材(もくざい)の土場(どば)から、最後の丸太(まるた)となる十尺の栗一本とミズナラ二本を運び了(お)え、鐘楼の御修復材(ごしゅうふくざい)が全て揃った。いよいよ午前八時から木挽(こびき)が行われるのだが、原木(げんぼく)から無駄なく木取りするのは、木挽(こびき)職人(しょくにん)の腕の見せ所でもあるのだ。
達谷西光寺の建築工事で多用される栗は、じつにいい建築資材であるが、厄介(やっかい)な性質(たち)で、枯枝(かれえだ)を巻き込んで成長すると、そこから水が入り、洞(ぼら)になったりすることが多い。また、杉やヒバといった針葉樹と異なり、曲った木が多いから、注意深く木(き)取(ど)らなければならない。今回の木挽(こびき)は千葉製材所の先代社長で、達(たっ)谷(こく)西光寺(せいこうじ)番匠(ばんしょう)職(しき)佐藤時男棟梁が立ち会って行なわれた。
栗(くり)丸太(まるた)が台車に備え付けられ鋸(のこ)が入る。忽(たちま)ち、黄色い木肌が姿を現す。挽(ひ)いたその面(つら)を睨(にら)み、木材の素性(すじょう)を見極めながら慎重に進められ、作業が無事に終わったのは午後六時であった。あとは床材のミズナラ等(など)、板(いた)や細(こまか)い材料を残すばかりである。夕刻の薄暗い事務所で御茶を飲みながら、お次(つぎ)は棟梁さんの出番だなあ、と仕事を終えた職人たちが楽しそうに笑うのを聞いて、木挽(こびき)の腕がよくなければ優(すぐ)れた塔堂社殿は成(な)らないとつくづく実感した次第(しだい)である。斯くいう裏方の活躍も、ぜひ伝えておきたいと希(ねが)い、新年度初めの法話で紹介することとした
四月のテレホン法話「木挽(こびき)」4/1~/15

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