くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「人質」シラー ほか

2010-01-18 05:31:56 | 〈企画〉
一月も半ばというのに、なかなか「走れメロス」にたどり着けないのは、問題ですよね……。週三時間じゃ終わらないよ教科書!(いや、まあ終わらせますが)
この時期よく思うのですが、「メロス」トリビュート作品の短編集を誰か作ってくれないかなあ。太宰がヒントにしたシラーの「人質」や、北村薫の「違う話」を収録するの。柴田よしき「フォー・ユア・プレジャー」は抄録でいいや。あとは誰だったか「セリヌンティウスの方舟」という本もあったはず。檀一雄のエッセイも入れてさ。そういえば、小学校の教科書にこの作品を題材にした歌もあるんだよね。その他にはないのかなあ。気になる。でも、こんなのをおもしろがる人は余りいないでしょうから、仕方ないですね。
わたしはこの「人質」という詩を長いこと探し求めてきて、見つからないから他の訳者の「人質」をアレンジして授業をすすめてきました。
でも、ふと指導資料集を見たら、そこに載っているではないですか。十年近く探していたのよー。
ただそのままでは印刷しにくいため、打ち直しをしたのですが、後半にさしかかったある場面でふとこんな表現があったのです。
「いくら粗暴なタイラントでも/友が友に対する義務を破つたことを、まさか褒めまい
……タイラントって、わたしには「ウルトラマン」に登場する怪獣という知識しかないんですけど。シラクスの町にも怪獣が? と一瞬考えてしまいました。
でも、辞書に書いてあったのです。「タイラント 暴君」。
えーっ、普通名詞なの? タイラントって!
試しに息子に聞いてみました。登場したのは「タロウ」、「暴君怪獣タイラント」と呼ばれているそうです。なるほど……。
その後ふと気づいたのですが、確かもともとシラーが原作に使った伝説があったはず。だから、「人質」の主人公は確かダモンという名前だったのに、資料は普通に「メロス」になっているけど、いいのかなあ。
そうそう、「東北怪談の旅」にも似た話がありました。殿様が池の主に鉄砲を取られ、家臣に取り返すように命じる。
誰もがしりごみするなか、近習の半沢という侍が池に飛び込む。鉄砲をみつけて帰ろうとすると、白髪の老人が現れ、「それほど鉄砲がほしいなら与えもしよう。それには条件がある。そのほうが鉄砲を佐竹の当主に渡したなら、いま一度ここに立ち戻ってくることだ。いますぐというのではない。三日の暇をやろう」というのです。あれれ。さらに、「そのほうは半沢英二郎ということも解っているのだ。もし約を違えばそのほうは無論、家人のいのちはないと知れ」「イヤ、家人ばかりではない、半沢家一族をもよ」
それで、鉄砲を持って帰った半沢は、家族に会えば未練が残るのでこのまま水底に行くと伝え沈んでいきました。殿様は彼を惜しんで半沢家の加増と家督相続を誓う、というあらすじでした。秋田の話です。本当にこういう話なのか、筆者がひそかにメロスを意識しているのかはわかりませんが、ちょっとおもしろかったので紹介してみました。仙北郡神宮寺獄ノ下洪福寺淵(鐘ヶ淵)の伝説だそうです。

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