くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「東北怪談の旅」山田野理夫

2010-01-17 05:57:00 | 古典
不思議な話なのです。今まで聞いてきた説話ように整備されていない。妙に落ちが浮いているものもあれば、前半と後半が遊離しているのもある。語りとして伝えられるうちに、二つが混じりあってしまったものや、中途が省略されたものがあるのではないでしょうか。
山田野理夫「東北怪談の旅」(自由国民社)昭和49年発行です。古本屋で発見。東北各地に伝わる怪異を163話集めたもの。
どこかできいたような話も多いのですが……。まずひとつ、紹介いたしましょう。秋田に伝わる「オタカの首」です。
角館の寺に捨て子されたオタカは、京市という男の嫁になります。京市が商売に旅立つと、老婆がやってきて、仕事の邪魔をします。また明日来ると聞いて、困ったオタカは天井うらに隠れますが、みつけられてなんと食われてしまうのです。首だけが残ったため、老婆は戸棚にしまっていなくなります。
翌朝、旅から帰った京市は、オタカがいないので不審がりますが、戸棚をあけたらオタカの首が着物の袖にかぶりつきました。慌ててもう一方の袖で隠し、宿場に出ていきます。腹が減ったため旅籠に入れば、運ばれてきた膳をオタカも食べたがり、袖からゴロリと落ちるのです。ものすごい食欲なので驚く京市。空になった丼を首にかぶせ、帯でぐるぐる巻きにして膳に結びつけてしまいます。
旅籠を飛び出して逃げると首が追ってきます。京市は蓬と菖蒲の茂った原に隠れてやり過ごす、という話なのですが。
えーと、この話、端午の節句の謂れと似てますよね。追ってくるのが山姥じゃなくて妻の首だけど。それにあの老婆は何者なのですか。
こんな話もあります。
ある男はしみったれなので、妻をめとらず下女を雇うことにしました。家は養子をとるつもり。夜になると下女をひきいれます。自分には息子がいるので、その子を養子にしてほしい。そういってもなかなか承知しないので、業をにやして男を殺してしまう。すると台所にあった雑巾が下女の顔に吸い付いて、窒息させてしまうのです。「古ぞうきんはしつと深いといわれる」。えっ! 説明はそれだけ?
さらに、「インモラ」という話があるのですが、これは、尾花沢のあき寺にやってきた僧がなまけ者で、お経も短いと紹介したあと、僧が寝てからバタバタと大鳥が飛び回るということが書かれています。「これはインモラといって、経文をおこたる僧に出るのである。インモラはバタバタと音を立てるだけだ」
説明のないところが妙に落ち着きのなさを感じさせるのですが。
豪胆なのをひとつ。津軽の港町に材木の買い付けにきた男の一人が、旅籠代がもったいないと古屋敷に泊まります。破れ障子が風になり、その升の一つ一つに目が現れて、男をじっと見つめるのです。
男は騒ぎもせずに、一つずつ目を手にとって袋物に入れてしまい、それを江戸に帰ってから眼科医に売り払ったというのですよー。ひぇー。
昔話にある定形のようなものが崩されるので、すわりが悪い気がしてきます。肩透かしをくうというか。
いちばん驚いたのは、「コクリ婆」でしょうか。湯殿山の近くで道に迷った僧が、古寺を見つけて戸を叩くと老婆が出てくる。僧に、自分は罪深い女なので、成仏できないと語ります。
いや、おのれを罪深いと思われるのは成仏できる身だ、その罪を語れといわれて、老婆は寺の墓を掘りおこして死骸を食べていることを告白します。
おまえが噂にきくコクリ婆か。そうだ。
「その晩。コクリ婆は僧を殺して食ったので、まだいまでも成仏できずにいるそうだ」。
キョーレツ! なぜ「コクリ婆」と呼ばれるのかもよくわからないし、このぶっきらぼうで説話からは程遠いラスト!
でも、それだから気になるのかもしれません。出典はどこなのかしら。知りたいな。
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