くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「一○一教室」似鳥鶏

2017-01-02 10:05:03 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 元日に読むような本ではないかもしれませんが。
 似鳥鶏「一○一教室」(河出書房新社)。
 「爽やかさゼロのダークミステリ!!」と帯に書いてあるからちょっと心配だったのですが、読後感は悪くないので安心してください。
 ただ、小川くんが集中指導を受ける場面が強烈すぎて、肝心の(?)「一○一教室」ではどんなことがあるのか想像がつかないというか……。竹刀とスタンガンで一方的に痛めつけられるってことでしょうか。
 
 私立恭心学園。カリスマ教育者松田が作った全寮制の中高一貫校です。
 高い進学率、不登校や反抗的な行動も直るといわれ、口コミやSNSで評判になり、全国から入学希望者が殺到しています。
 大学院生の藤本拓也は、おばから研究の役に立つかもしれないと誘われてこの学校の体育祭を見学に行きますが、少年たちの軍隊のような行動に違和感を抱きます。
 間をおかずに、ここに在籍したいとこが亡くなる。葬儀に参列した拓也は、その死に不審を抱く沙雪(母方のいとこで、マレーシアから一時帰国中)に協力して学園を探ることに。
 
 柔道部員であり、同級生の死を見つめてしまった小川。女子部になじめない山口。そして、カリスマ教育者としてインタビューに応じる松田。
 これらの視点が交互に出てきて、学園の異常性と洗脳ともいえる「教育」の実態が浮き彫りにされていきます。
 教育の名を借りた権威の横行。内部での陰惨ないじめと学内のカースト。ゲームや娯楽を禁じられ、勉強と部活に特化した生活を送ることで歪められる少年たち。
 勉強させる割には教師たちはなんか暴力ばっかり振るっているようですが……。

 娯楽に飢えた状態の小川は図書室に通って様々な本を読みます。彼がリベラルな考えをするのはこのためでしょう。
 また、山口がおじいさん(この人がまたいい!)に与えられて読んだのは上橋菜穂子です。
 本の影響も、やっぱり教育には欠かせないのでしょうね。
 でも、似鳥さんごめんなさい。わたしも国語教師ですが、ジャン・クリストフは読んでいません……。

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