● 2012年10月27日の日本経済新聞土曜版「エコノ探偵団」の内容は、「先進国の経済成長率、なぜ低い?」。需要・供給両面から、先進国の経済成長率が鈍化している要因を解説しています。なかでもインパクトが大きいのは人口、つまりは労働力。人口の問題については、翌28日の同紙「けいざい解読」では「アジアに迫る高齢化ドミノ」と題して、生産年齢人口の変化と不動産価格のあいだに関係があることを紹介しています。実際、日本の生産年齢人口比率は、1990年代前半にすでにピークアウト。その少し前に不動産市場を中心としたバブルが発生し、まもなく崩壊しました。
● わが国全体では生産年齢人口は減少しているとはいえ、仔細にみると地域間で濃淡があります。全国の市町村について、生産年齢人口比率と人口1人あたり課税対象所得額の関係を調べてみると、きれいな正の相関関係が描かれます。「稼ぎ手」の比率が高ければ、人口あたり所得も多いのです。注意すべきは、地域間に差異はあっても全国的に高齢化が進行しているということ。現在のところ「稼ぎ手」の比率が相対的に高い地域であっても、その比率は着実に低下していきます。
● 前掲の「けいざい解読」でも言及しているとおり、日本を後追いするかたちで、人口構成の変化による経済社会へのインパクトが見込まれているのがアメリカと中国。アメリカでは、長期にわたって生まれた大量のベビーブーム世代が高齢者の仲間入りをしてきます。中国は、「一人っ子政策」によるいびつな人口構成のまま高齢社会を迎えなくてはなりません。2012年9月29日の the Economist(印刷版)では、アメリカの当該世代を“sponging boomers”と呼んでいます。あられもない直截な表現ですが、日本にとって他人事とはいえません。同記事がさらに憂慮しているのは、政治的意思決定への影響のこと。所得再分配にかかわる政策を決定するのは多数派、つまり圧倒的な規模であるうえに投票率の高い高年齢層です。以前の本欄でも紹介したとおり、これもやはり日本にとって他人事ではありません。