のこしたいもの

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芸術について(1)

2016年10月19日 | 文化

芸術とは

近現代日本社会で言われている「芸術」に対して違和感と混乱を感じる人も多いはずである。
世間に飛び交っている言葉で今ひとつ混乱する言葉に「芸術」という言葉がある。「芸術とは何ぞや」と構えてしまうと混乱を増すばかりで答えが出てこないのでごく一般的に新聞・雑誌などマスコミを通じて頻繁に流れてくる言葉から類推してゆこうと思う。

一番耳にする言葉は「アーティスト」。英語文化に浸りきっている日本人はアーティスト=芸術家と思っている。では紫式部や清少納言、ノーベル文学賞を受賞している作家、著名な建築家、書道家、工芸家等々についてはアーティストという言葉は自然に耳に入ってくるだろうか。入ってくる人もいるだろうけれど僕的には少々無理がある。西欧人にとってはごく自然に受け入れられているようだが日本人には不自然な感じが強い。「アーティスト」が「アート」となっても同様である。「源氏物語」「枕草子」「能」「狂言」「歌舞伎」をアートといってもピンとこないのである。
何故だろう。
語源から見てみると
とは 1.学問や武術・伝統芸能などの、修練によって身につけた特別の技能・技術。技芸。 2. 人前で演じる特別のわざ。演芸・曲芸など。
とは 1.人が身につける特別の技。技術。「剣の―」 2.手段。方法。てだて。すべ。「もはや施す―もなし」3.策略。計略。はかりごと。たくらみ。「―をめぐらす」4.人知をこえた不思議なわざ。
と言う事になる。
又、芸術の事を「コトバンク」では
本来的には技術と同義で,ものを制作する技術能力をいったが、今日では他人と分ち合えるような美的な物体,環境,経験をつくりだす人間の創造活動,あるいはその活動による成果をいう。」としている。
語源とコトバンクの定義にさして矛盾を感じないけれども自分なりに「コトバンク」の定義を考えてみる。

コトバンクの前段「本来的には技術と同義で,ものを制作する技術能力」について。
そういった事が人々に受け入れられるのは、芸術と技術を一体のものとした文化を育んできた思想基盤を持つ西欧社会での事であろうと思う。自然にたいする考え方、処し方が全く異なる日本でそういう芸術観がすんなり受け入れられるものなのだろうかという点に疑問が残る。それが現在の日本で受け入れられているのは西欧社会と東洋社会の歴史的な力関係に行き着く。科学・技術をテコにした圧倒的物事力の前に西欧的思想を受け入れるしか欧米諸国と対等に伍してゆくことが出来なかったという事情があるのだろう。その結果、西欧的思想は日本人の日常生活のあらゆる面に浸透し地域固有の文化まで独自性・多様性が失われつつあるのが現在の状況である。

コトバンクの後段「今日では他人と分ち合えるような美的な物体,環境,経験をつくりだす人間の創造活動,あるいはその活動による成果をいう。」について。
現代に生きる日本人ならずとも芸術、技術と技能の結びつきは受け入れざるを得ない。と言うのは科学・技術が尊重され又尊重されるに足る歴史を持つ西欧社会では科学・技術の成果は無理なく芸術と結びついていたのだろうし、西欧人に限らず人間の感覚に訴える何かを備えていた。そして科学・技術の成果たる芸術作品成立の裏には国籍を超えた人間の心を魅了する物語も秘められていたと思うからである。
日本においても人の心を打つ芸術作品は文学、音楽、工芸、建築、芸能等なんであれ作品を成立させている修練と技に裏打ちされている。日本人にとっておなじみの職人技とか熟練技とかにしても工夫と修練に支えられている事は万人が認めるであろう。日本では技能・技術に対する評価、考え方が西欧社会とは異なっていたにすぎないのではないかと思う。
後段の表現は、つまるところ日本では技術という面を前面に押し出すことを控えているだけの事である。洋の東西を問わず人々が受け入れやすい表現となっているだけで根本的には芸術=技術であるといっていることに変わりはないように受け取れる。

結局のところ冒頭で述べた違和感は
今日、日本で一般的に理解されている芸術と技術の関係が欧米での通念をそのまま持ち込まれたものだからではないだろうか。明治以前の日本での様々な文学、絵画、工芸、建築などにつて芸術という記述があったであろうか。後世の評論などで記述されるだけで原作や当時の評価に芸術という記述は僕の知る範囲ではなかったと思う。恐らく芸術という概念もなかったのではないだろうか。
以上のようなことが日本で芸術という言葉が用いられるようになった背景としてあったのだろう。
宗教におけるキリスト教、イスラム教などに対して日本では固有の宗教として神道、仏教があるように何らかの固有概念を感じさせる呼称を確立しておけば僕の感じるような違和感はなくせたのではないかと思う。

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