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今回は、東野圭吾『手紙』を紹介します。東野作品は、2007年4月現在70%ぐらい読み終わったのですが、白夜行の次に好きな作品です。本書は、犯罪加害者の家族(特に弟の直貴の人生にどう影響するか)を描いたものです。
もし、殺人者の親類が現れたときに、自分は彼らを差別しない自信はないだろう。変な違和感といいますか、何か意識してしまうことがあるだろう。騒がず、何も内容に扱うんだろうし、当事者になりたくないといって避けるだろう。
殺人を犯すということは、自分のみならず、加害者家族の社会的な死を意味する。だから、加害者家族が社会的に差別を受けるのは、ある意味においては当たり前なのだ。つまりマイナスからのスタートになる。それを解消するには、一から社会的なつながりをひとつずつ築く必要がある。
主人公の直貴は、兄の殺人を抱えながら生きていかなければならない。うまくいったかと思ったら、兄の殺人がばれた途端地獄へ突き落とされるような日々が続いている。家族を持ったとき、どう生きるのかを決めないといけないんだろう。家族を守るためにはどうすればいいのか。兄とどう折り合いをつけていくのか。
やはり、兄と精神的につながりを断ち切ることは出来ないんだよね。兄の最後の手紙や刑務所でのボランティアを見ると明らかである。最後では、何気なく兄とつながったんだろう。最後は感動したなあ。