板の庵(いたのいおり)

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エッセイ:「マグロ漁師と鮨店のロマン(4)」2013.01

2013-01-23 20:34:53 | エッセイ


エッセイ:「マグロ漁師と鮨店のロマン(4)」2013.01


築地魚河岸では恒例の新春のマグロの初競りで222キロのマグロ1本を1億5540万円で「㈱喜興村:すしざんまい(木村清社長)」が競り落とす。これにはさすがの日本人も正直度胆を抜かれたのではないか。
どのTV局でも景気のいい正月トップの話題としてニュースやワイドショーなどで取り上げる。これを広告料に換算すると、広告効果は40億円とも言われ、スケールの大きな話である。

昨年の3倍の高値で、落札価格から行くと握り一貫当たり4~5万円になるという。これを大トロ418円、中トロ313円、赤身134円で客に提供したのだとか。築地の本店前では解体ショーを客に堪能させ、1人につき一貫を味わってもらったそうだ。しかもこの後、木村社長はこのマグロの握りを総理官邸にも届けたというから、味わった安倍総理の感慨(インフレ政策)やいかばかりであったか。

海外でも、この初競りの価格は扇情(せんじょう)的に報道され、マグロ好きの日本人は高値で追い、最後の一匹を食いつくすまで漁獲するとの誤解を招いていると。ご祝儀相場の意味がわからない彼らから見れば当然であろうと思う。

ご存じの通り、世界中でマグロ類の資源減少が懸念されている。世界で漁獲されたマグロの30%位を食いつくす世界一の消費国 日本。マグロ保護の国際会議での漁獲量割り当ては年々厳しくなるばかりだが、マグロ漁獲反対のシーシェパードがないだけにまだましだ。
大西洋、太平洋ともクロマグロの漁獲は減っている。最も注目されている漁場は西インド洋のソマリア沖である。海賊被害を恐れた台湾、中国船は日本近海の中西部太平洋に、欧州船は北部大西洋に漁場を移すことを望み、日本などに援助と協力を要請しているぐらいだ。
 
ところが、「すしざんまい」の木村社長は、なんとソマリア沖のマグロ漁場に向かったのだ。ソマリアは1990年代から内戦状態が続き、去年新政府が発足した。木村社長はここで漁業支援の意向を伝えた。私はTV放送を偶然見たが、武装した警察官らに護衛されながら木村社長は漁場の視察に向かったのである。

ソマリアの元漁業関係者は、漁業で若者が安定した収入を得、海賊が減って欲しいと理想を語る。社長はお隣のジブチ共和国ともすでに漁業分野の合意書を交わしていた。ソマリアの政情が安定したあかつきには、日本とソマリアの民間大使に祭り上げられそうな人物である。
一代で名(財)をなす「すしざんまい」木村社長は、ある意味命がけでの挑戦であり、マグロ好きの日本人のためにマグロを確保するのが自分の使命であると。人ごとながら感銘を受けた次第である。

こうしたもろもろの背景を理解すると、マグロ初競りの1.5億円の面白さがまた違った角度から眺められる。これは私の邪推に過ぎないが、社長が総理官邸に届けた握り鮨の持つ意味も見えてくるのではないか。


一方、このマグロを釣り上げた代々、大間で漁師をしている一家に生まれた竹内大輔さん(36才)だ。                                     
 1億5540万円のうち諸経費を引くと約1億4000万円、これに最高税率40%の所得税がかかり、手取りは8300万円ほど。さらに来年には住民税10%、少なくとも1400万円が引かれることになる。

船を買うために数千万円も借金し、釣れなければ燃料代で借金ばかりがかさんでいく。燃料代は年々上がって、1回の漁で少なくとも5万円程度はかかる。それでもマグロを釣らないと収入はゼロだから、休むわけにはいかないと。年間で数千万円の水揚げがある船がある一方で、300万~400万円しかない船もザラ。厳しい世界である。
 
マグロ漁は“稼ぎ”だけではなく、漁師としてのプライドを賭けた勝負でもある。「チャンピオンベルト(最高値記録)」を2010年までは父親(薫さん・2001年に2020万円を記録)が保持していた。それを息子が取り返してくれたのだ。 亡き父親は、常々大間の漁師にとってマグロ漁とは「男のロマン」だと言っていた。



(参考)
★マグロには様々な種類があり、クロマグロはマグロの王様とも呼ばれる。他に、ビンナガマグロ、キハダマグロ、メバチマグロ、ミナミマグロなどがある。マグロと呼ばれる由来は「真黒、末黒、目黒」が語源という説がある。マグロの視力は0.5ほどあり、泳ぐ速さは最高160km/hで日ハム新人大谷投手の球速と同じくらい。

★カジキ類は、マグロ類とは別類であるがマグロ類と同様な特徴をもち、肉質も似ていることから、日本では俗にカジキマグロともよばれている。
ヨーロッパやアメリカでは、マグロ類に近縁のカツオをマグロの仲間としてスキップジャックツナskipjack tunaと呼称する。

★目が黒いことから「目黒(まぐろ)」の意味とする説、背が黒く海を泳ぐ姿が真っ黒な小山に見えることから「真黒(まぐろ)」の意味とする説。
「鮪」の「有」は「外側を囲むという」意味で「鮪」の漢字には外枠を描くように回遊する意味がある。
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