ワンワン、と犬も鳴く。

ワンワン、とは泣かなくなった人達も昔はきっと泣いていた。
嬉しいときも、悲しいときも。

夜なのにおはよう。

2007-05-01 01:16:55 | にっきにき。
言葉は時として、矛盾を生じる。
現実が真(まこと)か、記憶が真か。
どちらに重きを置くかで発する言葉は変わってくる。
言葉を発するのは自分自身だ。つまり記憶に重きを置く方が、感情的には自然であると思う。

こんなことを考える出来事が最近私の身の上に起きた。
ひょんなことから私は「母のいとこ」に会うことになった。
※ひょん=私がインターンとして働いている外来センターに母のいとこがきてくれることになったのだ。
その「母のいとこ」にあたるその女性とは一応面識がある。
そぅ、かなり昔のことだが。
昔といっても、もう平成であったことには間違いない、それでも私は小学生だった。いや、幼稚園児だったかもしれない。記憶が定かでないくらい小さい頃だった。
その「母のいとこ」と私の関係は大広間におかずを一生懸命運んでいる女性とそれを邪魔するがの如くちょろちょろ動く少女という関係であった。
それが今回の再会では一転、患者と先生という関係だ。
どんな顔をして会えばよいのか悩んだ。
というより、正確にはどんな顔でどんな人だったのかを覚えておらず、おぼろげな記憶だけが頼りだった。

当日、予定の時間よりも少しだけ早く来てくれた「母のいとこ」がソファーに座って診療調査表を書いているよ、と受付の方がアイコンタクトで知らせてきた。
ついにこのときが来たかと多少の胸の高鳴りを押さえつつ近づく。
そこには一人の女性がソファーに座り、紙に文字を記入している姿があった。
見覚えがない。
もう一度受付に、この人か?と目配せした。
受付:うむ、という感じで頷く。
ここは一つ挨拶をせねばと近寄った。
「お久しぶりです」私は声をかけた。そう、見覚えのないその女性に。
その女性は私の顔を見て、一瞬止まった。
それから私の胸のネームプレートを確認してから初めて
「○○ちゃん?お久しぶりです」と、ようやく答えたのだ。

ざっと換算しても15年以上の歳月が私とその女性の間には流れていた。

私もそして「母のいとこ」もそれぞれのおぼろげな記憶からはかなり遠ざかってしまっていたようだ。

こんな二人でも、長い期間を経て再び出会ったのだから
「お久しぶりです」
という言葉を交わす。
しかし今回ばかりは互いの意見を尊重して
「はじめまして」
と言うべきだったのだろうかと今さらながら思う。