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たら本で遊ぼう その4

たらいまわし本のTB企画。
通称「たら本」。

今回は、31回目から38回目まで。

◆「積読の山も誇りと本の虫
「千夜一夜物語」「聊斎志異」とそのほかたくさん。
一首詠むようにとの仰せなので、積読終了後という夢シチュエーションで。
見渡せば文も頁もなかりけり空の書棚の秋の夕暮

◆「ねこ・ネコ・猫の本
「85枚の猫」(イーラ 1996 新潮社)
写真集。これを読んだあと「猫さまとぼく」(岩合光昭 岩波書店 2004)を読むと楽しい。

◆「悪いやつ
「こわいわるいうさぎのおはなし」(ビアトリスク・ポター 福音館書店 2002)
ピーターラビットの絵本の一冊。
こいつは悪いやつだ。

◆「行ってみたいあの場所へ〜魅惑の舞台
「ゲド戦記」(ル=グウィン 岩波書店)のアースーシー世界。
竜をいっぺんみてみたい。

◆「おすすめ! 子どもの本」
・「ゆうれいは魔術師」(S・フライシュマン あかね書房 1994)
この作家は「シド・フライシュマン」と「S・フライシュマン」で検索結果が変わるから要注意。
「ドリトル先生」シリーズ(ロフティング 岩波書店)
子どものころはマンガしか読まなかったのだけれど、唯一これだけは読んだ。ドリトル先生のことはいまだに尊敬している。

◆「少女の物語
「少女神第9号」(フランチェスカ・リア・ブロック 理論社 2001)

◆「犬にかまけて
「ダーシェンカ」(カレル・チャペック メディアファクトリー 1998)
「赤いおおかみ」(フリードリッヒ・カール・ヴェヒター 古今社 2001)
「アンジュール ある犬の物語」(ガブリエル・バンサン ブックローン社 1986)
「カシタンカ」(チェーホフ 未谷社 2004)
・「若き日の哀しみ」所収の「少年と犬」(ダニロ・キシュ 東京創元社 1995)
「若き日の哀しみ」以外は、みんな絵本。今回、「たら本」の記事を書くにあたって、一作家一作品にしようと思っていたのだけれど、「ダーシェンカ」や「アンジュール」はどうしても入れたかった。「アンジュール」は字のない絵本で、絵の語る力が素晴らしい。「カシタンカ」も絵がいい。

◆「「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える
「ジーヴズの事件簿」(P・G・ウッドハウス 文芸春秋 2005)
とはいうものの、「ビンゴが馬鹿すぎてほんとうに頭にくる」といった知人がいたから、万人向きとはいえないかも(この感想には笑ってしまった)。

以上。
これ以降も「たら本」は継続中。
ずっと参加していたのだけれど、秋からばたばたしていたため、途中から参加できなくなってしまった。
でも、自分では思いつかないようなテーマにそって本を挙げていくというのは、とても楽しい。
いずれまた参加してみたいと思っている。


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若き日の哀しみ

「若き日の哀しみ」(ダニロ・キシュ 東京創元社 1995)

訳は山崎佳代子。

抒情にはつよい力がある。
たとえばいま瓦礫のなかに埋まっているとする。
そんなとき、きみはいま瓦礫に埋まっているね、といわれても、なんのたしにもならない。
それよりも、子どものころのことを思い出すんだといわれたほうが、勇気がわくかもしれない。

マロニエの並木道のこと、寝小便のこと、姉の恋や、幼い婚約者や、野原や、梨のこと、きのこや、お金がたりないことを知っているのに知らないふりをして薬をもらってくることや、飼い犬との別れのことなど。

本書は、作者のダニロ・キシュが自身の子ども時代を作品化したもの。
短篇というより、断片といいたくなるような作品がいくつもおさめられている。
人称も、一人称だったり、三人称だったりするけれど、それでいて統一感が損なわれていないのは、強い抒情性のためかもしれない。

キシュには「死者の百科事典」という作品があり、その表題作は、スウェーデンのとある図書館を訪れた主人公が、死者の百科事典という事典のなかに、故人となった父の記述をみつけるというものだ。

死者の百科事典の記述法は、故人の経歴を書くのではない。
そのときその場の感覚や、一度しかおこらなかったとこなどをゆるがせにしないで書かれている。
ストーリーよりも、比喩をつかい情景を掬いとる。
これはまさに、本書の書きかたとおなじ。

死者の百科事典には掲載基準がある。
ほかの事典類に名前がでるようなひとは載せてもらえない。
キシュはなにかの事典に名前がでたりするだろうから、本書によって、自分で、死者の百科事典にふさわしい文章を書いたのではないか、などと想像してしまう。

キシュは1935年、いまはないユーゴスラビアに生まれ、1989年、移り住んだパリで亡くなった。
父はユダヤ人で、強制収容所に送られ帰らなかった。

本書は、登場人物の名前以外すべて実在するものだという。
「素材を悲愴感からどう解き放つか」、訳者の山崎佳代子さんは、キシュがどんな手法をつかい、どれほどの注意を払ってそれを成し遂げようとしたか、巻末で解き明かしてくれる。
とてもいきとどいた、すばらしい解説だ。

「死者の百科事典」にあった「若き日の哀しみ」の広告には、まず「少年と犬」を読んでみてください、と書いてあったように思う。
これは、少年と犬との別れを書いた作品で、一読、涙を禁じえない。

「この手紙をディンゴに読んでやって、僕のせいじゃなかった、どうしても連れていってやるわけにはいかなかった、けっしておまえのことは忘れないと話してやってください」

引用しただけで涙がでそうだ。

また、本書におさめられた作品のいくつかは、雑誌「婦人之友」に連載されたものだそう。
こんな作品が連載されていたことに驚きを感じる。


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