タナカの読書メモです。
一冊たちブログ
井上ひさしさんの講演を聴いた話
一度だけ、井上ひさしさんを見たことがある。
近所で、平和のためのナントカ集会というのがあり、井上ひさしさんが講演をするというので見にいったのだ。
井上さんは壇上の真ん中、演題の向こうに腰を下ろして話していた。
一番後ろの席で聞いていたので、その姿はよく見えなかった。
でも、話は面白かった。
2時間以上、滔々としゃべり続け、飽くことがない。
予定時間をすぎてもまだしゃべる。
主催者が止めに入ってもまだしゃべる。
2度目に主催者が壇上にあがったとき、会場は笑いにつつまれた。
おそらく、井上さんは、主催者が再び止めにくるのを待っていたのだろうと思う。
笑いが生じるのを狙っていたにちがいない。
このとき、井上さんが話した内容はほとんど忘れてしまった。
ただ、フトコロから手帳をとりだして、「戦争を絶滅させること受合いの法律案」を読み上げたことは、よくおぼえている。
「戦争を絶滅させること受合いの法律案」は、デンマークの陸軍大将フリッツ=ホルムが、1928年に起草して、各国に配布した法律案のことだ。
手元の「世界史の散歩路」(綿引弘 聖文社 1989)に、この法律案が紹介されていたので、引用してみよう(余談だけれど、この本の著者、綿引弘さんは赤川次郎の先生であったらしく、この本の序文は赤川次郎さんが書いている)。
なお、この法律案は、もともと長谷川如是閑の雑誌「我等」に載せられたものらしい。
「戦争を絶滅させること受合いの法律案」
戦争行為の開始後又は宣戦布告の効力の生じたる後、十時間以内に次の処罰をとるべきこと。即ち下の各項に該当する者を最下級の兵卒として召集し、できるだけ早くこれを最前線に送り、敵の放火の下に実戦に従わしむべし。
1、国家の元首。但し君主たると大統領たるを問わず、尤も男子たること。
2、国家の元首の男性の親族にして16歳に達せられる者。
3、総理大臣、及び各国務大臣、並びに次官。
4、国民によって選出されたる立法部の男性の代議士。但し戦争に反対の投票を為したる者は之を除く。
5、キリスト教又は他の寺院の僧正、管長その他の高僧にして公然戦争に反対せざりし者。
上記の有資格者は、戦争継続中、兵卒として召集さるべきものにして、本人の年齢、健康状態を斟酌すべからず――。
上記の有資格者の妻、娘、姉妹等は看護婦または使役婦として野戦病院に勤務せしむべし。
(長谷川如是閑 雑誌「我等」(昭和4年1月号)の巻頭言)
「本人の年齢、健康状態を斟酌すべからず」の部分を読み上げるさい、「ここがいいんですよ」と、井上さんがうれしそうにいっていたのを思い出す。
井上ひさしさんが亡くなってから、毎日新聞(2010年5月30日)に山崎正和さんと丸谷才一さんによる追悼文が掲載された。
どちらも優れた追悼文。
そして、どちらもわが田に水を引くようなところがあるのが面白いところだ。
近所で、平和のためのナントカ集会というのがあり、井上ひさしさんが講演をするというので見にいったのだ。
井上さんは壇上の真ん中、演題の向こうに腰を下ろして話していた。
一番後ろの席で聞いていたので、その姿はよく見えなかった。
でも、話は面白かった。
2時間以上、滔々としゃべり続け、飽くことがない。
予定時間をすぎてもまだしゃべる。
主催者が止めに入ってもまだしゃべる。
2度目に主催者が壇上にあがったとき、会場は笑いにつつまれた。
おそらく、井上さんは、主催者が再び止めにくるのを待っていたのだろうと思う。
笑いが生じるのを狙っていたにちがいない。
このとき、井上さんが話した内容はほとんど忘れてしまった。
ただ、フトコロから手帳をとりだして、「戦争を絶滅させること受合いの法律案」を読み上げたことは、よくおぼえている。
「戦争を絶滅させること受合いの法律案」は、デンマークの陸軍大将フリッツ=ホルムが、1928年に起草して、各国に配布した法律案のことだ。
手元の「世界史の散歩路」(綿引弘 聖文社 1989)に、この法律案が紹介されていたので、引用してみよう(余談だけれど、この本の著者、綿引弘さんは赤川次郎の先生であったらしく、この本の序文は赤川次郎さんが書いている)。
なお、この法律案は、もともと長谷川如是閑の雑誌「我等」に載せられたものらしい。
「戦争を絶滅させること受合いの法律案」
戦争行為の開始後又は宣戦布告の効力の生じたる後、十時間以内に次の処罰をとるべきこと。即ち下の各項に該当する者を最下級の兵卒として召集し、できるだけ早くこれを最前線に送り、敵の放火の下に実戦に従わしむべし。
1、国家の元首。但し君主たると大統領たるを問わず、尤も男子たること。
2、国家の元首の男性の親族にして16歳に達せられる者。
3、総理大臣、及び各国務大臣、並びに次官。
4、国民によって選出されたる立法部の男性の代議士。但し戦争に反対の投票を為したる者は之を除く。
5、キリスト教又は他の寺院の僧正、管長その他の高僧にして公然戦争に反対せざりし者。
上記の有資格者は、戦争継続中、兵卒として召集さるべきものにして、本人の年齢、健康状態を斟酌すべからず――。
上記の有資格者の妻、娘、姉妹等は看護婦または使役婦として野戦病院に勤務せしむべし。
(長谷川如是閑 雑誌「我等」(昭和4年1月号)の巻頭言)
「本人の年齢、健康状態を斟酌すべからず」の部分を読み上げるさい、「ここがいいんですよ」と、井上さんがうれしそうにいっていたのを思い出す。
井上ひさしさんが亡くなってから、毎日新聞(2010年5月30日)に山崎正和さんと丸谷才一さんによる追悼文が掲載された。
どちらも優れた追悼文。
そして、どちらもわが田に水を引くようなところがあるのが面白いところだ。
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この本を読んでいたら、「戦争絶滅請合法案」がでてきたのでメモ。
佐藤優さんは、この法案には反対だという。
那覇大空襲のさい逃げ出した泉県知事のような連中ばかりだったら、それをカリカチュアできるだろう。
でも、世の中はそういう連中ばかりではない。
「私は陸軍中野学校出身者であるとか、あるいは外務省の幹部であるとか、政治家をいろいろ見ているんですが、戦争絶滅請合法案が上がってきたら、それでよしと、家族もそれで説得すると、家族もよしといって向かっていくやつが、ある程度の比率で出てくる」
「そうするとその連中がものすごいカリスマ性をもってしまって、一番最初に突っ込んでいくなかで、そういった連中が入ってきて俺も死ぬ、しかし一緒に死のうと。こういう感じになった場合に、ものすごく怖いことになっていく」
「ですから何かの思想操作によって、指導者自身が一兵卒になっていって、自分の家族を一番最初に殺すということをやるやつが出てくる可能性があると思われますね」
……
うーん、なるほどなあ。
ところで、この本は「徹底討論」と銘打ってあるけれど、そういう感じの本ではない。
発言者が丁々発止とやりあうのではなく、講演のような長い長い話を交互にくり返すという感じ。
それがつまらないというのではまったくない。
講演だから読みやすいし、知らないことがたくさん書かれていて、とても勉強になった。