答えは現場にあり!技術屋日記

「三方良しの公共事業」をモットーに、辺境の高知のそのまた辺境から、土木技術者のオジさんが泣き笑いの日々を届けます。

『津波災害-減災社会を築く』を読む(その2)

2011年04月18日 | 読む(たまに)観る

 

『津波災害-減災社会を築く』の続き、

目次から引用した質問である。

 

1.50センチなら大丈夫なのか?

2.津波は「高い波」である?

3.津波は一度来たら終わる?

4.津波は引き波からやってくる?

5.津波は第一波が一番大きい?

6.高い海岸護岸や堤防があるから大津波警報が出ても避難しなくてよい?

7.インド洋大津波のような被害は日本では起こらない?

8.地震の揺れが小さいと津波も小さい?

 

このうち1と3と6と7は、今回の大津波でほとんどの人が理解したはずだ。

すなわち、

50センチの津波でも立っていられない、

津波は一度で終わらない、

高い堤防も大津波には無力である、

大津波は(この先も)日本でも起こる、

である。

問題はその他である。

正解は、

津波は「高い波」ではなく「速い流れ」であり、

津波はいつも「引き波」から始るとは限らないであり、

第何波の津波が大きくなるかは、いろいろな要素に左右される、

地震の揺れが小さい場合でも、大きな津波がくる場合がある

である。

 

たとえば理由はこうである。

 

「津波は高い波である?」

高さ4メートルの津波とは、「4メートルの水面の高さをもつ速い流れ」であるから、護岸や防波堤に衝突すると、前進できなくなって盛り上がるのである。正確に言えば、津波が護岸や堤防にぶつかった瞬間、津波の運動エネルギーがゼロになり(前進できなくなって水の運動が停止する)、これが瞬時に位置エネルギーに変換され、海面が盛り上がるのである。理論的には衝突前の1.5倍くらいに高くなる。つまり6メートル近くなるのである。(P.17)

 

「津波は引き波からやってくる?」

・・・・・・このように、プレート境界面の破壊過程によって津波の第一波の特徴が決まるのである。

 1937年から47年にかけて小学校の国語の教科書に使われた『稲むらの火』の記述の問題点はそこにある。文章自体が非常に津波をリアルに表現した素晴らしいものであったために、そこに書かれていることがすべて真実であるかのような錯覚を生み出してしまった。津波が来襲する様子を引き波で始まるように表現したため、読者は「いつも津波は引き波で始まる」ものと誤解してしまった。この教科書で勉強した人びとは、このように誤解したため、津波警報が出ると海に津波を見に行くという行為が、現在も後を絶たない。また、それが伝承され、若い人までもそれを信じてしまっている。(P.21~22)

 

「地震の揺れが小さいと津波も小さい」

 津波地震という厄介な現象がある。1896年の明治三陸大津波がそうであった。揺れが小さかったから津波を考えなかったということが、2万2000人の犠牲者の発生につながった。東日本の太平洋側で発生する近地津波のうち、津波地震によるものはおよそ30パーセントであると指摘されている。

 西日本の南海地震についても、1605年慶長南海地震では、古文書のどこにも地震による住宅被害などの記述がない。記述はすべて津波被害についてものもである。だから、高知、徳島、和歌山や三重各県の住民は、地震の揺れの大きさから津波の大きさを判断してはいけないのである。ただし、大きな津波をもたらす地震の場合、揺れが1分以上続くのが普通であるから、これは指標になりうる。(P.160)

 

東日本大震災直後、情報の洪水のなかに置かれていながら、私はこれらのことについて無知のままだったし、私の周りもまた誰ひとりとして知らなかった。

ご存じなかったかたは是非、覚えておいてほしい。わずかこれだけでも、かなり有用な知識だと私は思う。

そして出来得れば、『津波災害-減災社会を築く』を手にとって読んでみることをお薦めする。

 

 

津波災害――減災社会を築く (岩波新書)
岩波書店

 

 

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減災社会の構築 (危機管理アドバイザー尾下義男)
2013-04-05 11:06:59
「減災社会の構築へ向けて」
 我が国は、自然災害の多発国であり、多くの被害を繰り返し続けている。
そこで、被害を最小限に抑えるための科学・技術が発展し、さらには歴史的文化とも言える対策も講じられた。しかしながら、東日本大震災のような、過去に例を見ない未曾有のトリプル災害(地震・津波・原発)は太刀打ちできませんでした。それどころか普段なら対応できる分、「ここは大丈夫!」「もう災害は起きない!」という「正常化バイアス」を広げ、被害を拡大しました。災害リスクは、質的に変わり、「低頻度高被害型」の時代を迎えています。
 南海トラフを震源域とする巨大地震は「リスク」ではなく、必ずやってくる「必然」です。内閣府の試算では、全国の死者は最大32万人超に達し、圧倒的な自然の力を前にして、その大きな被害を免れ得ないとしたら、私たち国民は何にどう備えればよいのでしょうか。
これまでの防災対策は、ハード面に偏りがちでした。被災後に速やかに元の生活を取り戻す力、つまり、ソフト面のレジリエンス(resilience=復元力、回復力)を身に付けることが大切です。減災対策は、個人・地域・学校・企業・自治体・国が如何に防災行動力をアップし、さらに継続向上(PDCAサイクル)出来るかが大きな課題です。「靴を測って足を削る」の愚行から「悲観的に準備(想定外を想定できる能力=危機回避能力)」し、楽観的に実施(具体的対応能力=自らの判断で行動)する」を基本とした減災対策が強く求められます。
そのポイントは、
〇平時から計画的・持続的に取り組むこと。
〇目標の定量化と、実現方策を具体化して実行管理すること。
〇減災ビジョンを体系的・総合的に実施すること。
東日本大震災で明らかとなった教訓や最新の知見等を踏まえて、防災・減災対策を推進するには、国民の目線に軸足を置き、机上の空論の知的怠惰性を脱却し、防災リテラシー(災害から生命・財産を護るための対策と行動力)を基に、減災社会の構築(build a society mitigation)のために実践的、具体的に即効性のある対策が喫緊の課題です。つまり「尊厳ある生を守る」ことを理念とすべきです。地域の安全と安心を守るため日々研鑽を続け、より一層鋭意努めて行く所存です。ご指導ご鞭撻宜しくお願い申し上げます。 尾下拝

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