答えは現場にあり!技術屋日記

「三方良しの公共事業」をモットーに、辺境の高知のそのまた辺境から、土木技術者のオジさんが泣き笑いの日々を届けます。

『無名碑(上)』(曽野綾子)を読む

2014年07月18日 | 読む(たまに)観る

 

無名碑 上 (講談社文庫 そ 1-3)
曽野綾子
講談社

 

夜の文庫本は、どうも老眼に堪えてしかたがない。

でもって朝、という目論見だが、あまり変わりはないようだ。

「だから文庫本(を読むの)は止めとけ言うたやろ・・・」

と独りごちるがしかたない。

文庫本、しかも中古でしか手に入らないものを読もうとしたのだから、他に選択肢はないのである。


早朝、『無名碑』(曽野綾子、講談社)を読んでいる。

物語はただ今のところ、時は昭和30年代。

まさに、私が生まれて育った時代である。

主人公はゼネコンの土木技術者で、

奥会津の田子倉ダムを経て名神高速工事に従事中。

その筋立ては、なんというか、いかにもメロドラマっぽく、とても私が好みとするようなものではないのだが、

随所に表れる土木工事の描写と、それに関わる人間たちの思いが興味深い。

綿々とつづく土木の系譜の末席に連なるものとして、興味深くおもしろいのである。


 竜起は眠っていても、頭だけはこの問題を考え続けているような気がした。夜、寝ようとすると、頭の芯まで疲れているのに、神経は焦立って、なかなか眠れない。竜起は前よりも酒は飲むことが多くなった。酒を飲むと、軽い酔覚めの頃に寒々と睡魔に捉えられた。すると間もなく、夢を見る。思いがけぬやり方で、茨木橋をかける方法を思いつく。その方法はきわめて明晰であった。どう考えても不備な点はない。竜起はこの方法を書き留めておかねばならぬ、と思う。時には、夢の中で思い付いたことは、すぐさま起き上って書かねばだめなのだ、と自分に言い聞かしていさえする。眠りの残像現象か、明らかな覚醒か、わからないほどの微かな境目の一刻にも、その思いつきはまだ鮮やかに論理的に頭に残っている。寝ていても、自分は働いていたのだ、と思いながら、竜起は起き上がる。雨の音が、高らかに周囲に響いていた。

 竜起は、夢を思い出し、それに縋ろうとする。あそこには完璧な計算と、思いがけぬアイディアが完成していた筈なのだ。しかし、何ということだ!ついニ、三分前迄は、確固として見えていたものが、すでに跡形もない。

(P.334~335)

 

ということでそんな『無名碑』。

上巻は読了した。

老眼にもメゲず、つづいて下巻へと読み進むのだ。

 

 二人は手をとり合って歩いていたが、老人が行ってしまうと容子は竜起に子供のように尋ねた。

「あなたが、あそこにダムを作るのね」

「僕も作る」

「名前は書かないのね。あなたの仕事は」

「そうだよ、小説家とは違う」

 竜起は思い出して笑った。

「書かないのがすてきだわ。名前は残らないほうがいいの」

「僕の仕事は一生どんなにいい仕事をしても個人の名前は残らない」

「でも、私たちの子供が覚えていてくれるでしょうね。私、子供に教えるつもりよ。このダムはね、お父さんが作ったのよ、って」

「それで充分じゃないか」

(P.128)

 

 

 

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