答えは現場にあり!技術屋日記

「三方良しの公共事業」をモットーに、辺境の高知のそのまた辺境から、土木技術者のオジさんが泣き笑いの日々を届けます。

(私的)ODSCの今

2014年03月08日 | CCPM

 

ODSC。

工事の「目的・成果物・成功基準」。

 

 O=目的(Objectives)

 D=成果物(Deliverables)

 SC=成功基準(Success Criteria)

 

白状してしまうと、形骸化しているのである。

DとSCはともかく、Oが持つ意味は非常に大きい。

にもかかわらず、我が社では形骸化しているのである。

のみならず、私が「なあ考えてくれよ」と言うのを止めれば、自然消滅必至でさえあるのだ。

 

ここでODSCについてもう一度おさらいする意味で、原点である『新版三方良しの公共事業改革』(三方良しの公共事業推進研究会、岸良裕司著、日刊建設通信新聞社)から引用させていただく。

 

 だが、たとえば、「橋をつくる」という工事の目標をODSCで議論していくと、

(中略)

 建設業という業種は自然を相手にする仕事だ。きわめて不確実性が高く、目標期限通りに、約束のものを仕上げること自体の難易度もきわめて高い。だから成果物である「橋をつくる」ことがつねに大きく意識されるのは、当然のことなのだ。

 しかし、よく議論をすすめていくと、「橋をつくる」というのは工事の成果物にすぎないとわかる。これをODSCを使って整理していく。

 工事の本当の目的はなんだろう?

 地域住民の利便性を向上させること、地域住民に安心・安全な道路を提供すること、地元経済を活性化すること、利益を上げること、発注者との信頼関係を構築すること、若手代理人を育成すること、ベテラン親方の技術・知恵を継承すること、などがある。

 ここで明らかなのは、施工者・発注者のいずれの視点から考えても、橋をつくることは、目的達成のための手段にすぎないということだ。

(中略)

だから、手段と目的を履き違えないためにも、成果物と目的を明確に区別し、強く工事の目的をもって仕事を進める必要があるのだ。

(P.57~58)

 

ふむふむなるほど。してみると、やはりDとSCがセットになってこそOの威力が増すということになり、すなわちODSCでなければならないということなのだな、と改めて納得。

しかしなんである。

久しぶりに読み返すとちょっと新鮮。

CCPMに初めて取り組んだあのときの興奮が蘇ってきた。

あのとき、つまり2006年12月8日。

最初につくったODSC。

イヤイヤしぶしぶつくったのがこれである。

 

目的(O)

 早期完了させ良いものを造る

 新しく取り組む二次製品の技術習得

成果物(D)

 構造物

 完成書類

成功基準(SC)

 評価点80点

 2月末現場作業完了

 規格値50%以内

 

「日本一拙い」と、アチラコチラで紹介するたびに、そう卑下するODSC。

あらためて書いてみると、そのお粗末さに笑いが込みあげてくるが、これが当時の現実。

そのときのファシリテーターとの会話を再現すると、

 

「ふだん、どんなふうな目的をもって仕事をしてますか?」

(なんちゅうこと聞くが?おおの面倒くさい)

「そんなん考えて仕事したことないですよ。与えられた仕事を早く終わらせてイイものをつくる。それだけです」

(そんな面倒くさいことちゃっちゃと終わらせて、その面白そうなCCPMたらゆう工程引きを早う教えてよ)

 

そんな不真面目な生徒が2回目につくったODSCはというと、

 

目的(O)

 耕作者の立場にたったほ場整備をする

 地域住民に「ありがとう」

   といってもらえるような仕事をする

 発注者との信頼関係をつくる

 耐久性のある土構造物をつくる

 若い技術者が向上する

 利益をあげる

 災害ゼロを達成する

 工期を短縮する

 上司と部下が助け合って仕事を進める仕組みをつくる

成果物(D)

 地域とのつながり

 発注者からの信頼

 ほ場

 水路

 道路

 完成書類

成功基準(SC)

 地域住民の「ありがとう」という言葉

 「よくやった」という社長の言葉

 監督職員からの感謝の言葉

 休業災害ゼロ

 工事評定点80点以上

 工期内検査

 規格値50%以内


そして7年後、この前完成した現場のODSC。

 

目的(O)

 崩壊地を緑の山に復旧して

    災害に強い森林をつくる

 崩壊地を復旧することで

    県道が安心して通れるようになる

 地元住民の方々に喜んでもらう

 発注者から高い評価をもらい

    今後の法面工事の受注につなげる

 発注者との信頼関係を築く

 地域住民との信頼関係を築く

成果物(D)

 災害に強い森林になるための

       基盤となるインフラ

 地域住民との信頼関係

 発注者との信頼関係

 会社及び技術者の法面工事の実績

成功基準(SC)

 81点以上の工事評定点をもらう

 「次も礒部組がやってほしい」と

    発注者及び地元住民の方々に言ってもらう

 無事故無災害で工事を完成させる

 この工事の実績が活きて別の工事を受注する

 

教科書どおりにいくと、「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「成長と育成の視点」「経営理念」「社会貢献」など6つの視点を入れると、良い工事の目的ができあがるということになっているのだが、

多すぎるとかえって焦点がボヤケてしまうという考えから、今は、3つ程度でもいいよ、ということにしている。

しかし、対象たる工事は公共事業であることから、「事業の目的」だけは必須項目。

あと「地域(顧客)の視点」も必ず入れてね、ということが決まりごと。

さして難しくはない(と私だけは思っている)。

だが、見事なほど形骸化しているのである。

のみならず、私が「なあ考えてくれよ」と言うのを止めれば、自然消滅必至でさえあるのだ。

推察すれば、7年前の私がそうだったように、「面倒くさい」のだろう。

「そんな余計なものを」なのだろう。

現場を進めるに伴うもろもろは、形而下、すなわち「形があるもの」であるのに対して、

「工事の目的」を考えるということは、時として「なんだかよくわからないモヤモヤっとしたもの」を言葉にするという試み。おのれときちんと向き合わないことには具象化しない。

慣れないと「面倒くさい」ことこのうえないし、たぶん、苦手とする人も多いだろう。

だいいち、「そんな余計なもの」考えなくても現場は進むのである。

いやむしろ、「そんな余計なもの」にかける時間はもったいないのだと考えるほうが、(狭義の)技術者的には正解なのかもしれない。

だが、私はこれを止める気がない。

「工事の目的はなんですか?」

これからもそう言いつづけていきたいと思っている。

手段と目的を履き違えないために、つまり、土木という仕事は”「場」という「モノづくり」”なのだ、ということを忘れないために。

とともに、「今という時代の土木技術者」的にはこれ(のようなもの)が必要ではないかと思うから。

そして、「言葉のチカラ」をバカにしてはいけないと、Webで5年間呻吟しつつ書いてきた私が実感しているから。

何より私と私の環境にとって、今現在の実情がどうあれ、必須だと信じるゆえ。

あきらめる気はないのである。



付記

ちなみに私、このODSC(のようなもの)を国あるいは地方自治体が発注する全工事に適用する、なんていう考えや動きにはまるっきり賛成してません。

何故かというと、それこそ形だけになるのが目に見えているから。

「上のもんがやれっていうから」

と行政の担当職員。

「役所がやれっていうから」

と業者の担当技術者。

どんな理想を掲げてもこの手のものは、いざ実践し始めると絵に描いた餅となり、

文書主義のなかにあまたある文書の一つになり、

果ては「アリバイづくり」の道具と成り下がります。

(多くの場合、っていう注釈はつけるべきでしょうが)

コイツはあくまでも個人や企業が独自でやってナンボ。

ただ、それを発注者に披瀝して共有してもらう、だとか、住民に見てもらう、というのはすごく効果的だし重要だと思いますが、それはまた別の話し。

なんでもかんでも、施策として役所に採用させればいいってもんじゃあない、って私は思います (^o^)

 

    

    新版・三方良しの公共事業改革

    三方良しの公共事業推進研究会

    岸良裕司著

    日刊建設通信新聞社 

 

 

 

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