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男性不妊症専門医が学術活動ならびに雑感を徒然と綴ります。

AID

2014-07-30 23:15:11 | 日記
諏訪マタニティークリニックの根津先生が受精着床学会で発表される演題が話題になってます。この報道を聞いた当事者、そして当事者以外の方はどのように感じられたか知る術もありませんが、絶対に忘れてもらって困るのは、義理の父から精子提供を受けての治療を行うまでには計り知れない苦悩と葛藤があるということです。ただ単に興味本意でとらえてほしくないという思いは強いですが、多くの人にすべてを理解してもらうのは大変難しいでしょう。しかしながら、無精子症と診断され、確率が低いがこれしか手段がないと選択肢をつきつけられ、一縷の望みをかけて、治療に挑んだものの、希望叶わず、現実を理解した上で、ご夫婦そして家族皆で悩みつくした上での選択なのです。簡単にとらえてもらっては困るし、軽薄な言葉で侮辱されるのもどうかと思います。

男性不妊治療が最近メディアに取り上げられることも増えました。テレビや雑誌では成功例ばかりを取り上げます。絶望の中にかすかな希望が見えるという意味では、悪いことばかりとは思いませんが、実際は成功しない症例のほうが遥かに多く、その術前後には一人一人全く異なったドラマがあります。私は術者の立場でしかご夫婦に関わっていませんが、少しでもつながりがある人間として、今回の発表に大きな違和感を感じています。産まれてくる子供の福祉が最優先されるのは当然のこととして、当事者の苦悩がないがしろにされているような気がして、とても残念な思いです。この世の中は他人にはわからない(理解してもらえない)悩みをかかえている人ばかりだと思います。思いやり、そして多様性を認める社会であって欲しいと切に願います。雑感でした。

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7 コメント

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Unknown (じろー)
2014-07-31 00:47:53
先生、ありがとうございます。
まさに、無精子症で夫婦の遺伝子を残す事の出来ない私達にとっては、胸に迫る先生のコメントです。私も現実がはっきりするまでは、AIDをしてまで…なんて思っていました。でも、子供を持つという誰しもが当たり前に叶っている事が不可能になった時の気持ちは、当事者でしか分かるはずがありません。人間の本能なんですね、子を授かりたい!って気持ちは…
他人かどうこう言う事ではありません。
夫婦二人が決めたのでれば、それが夫婦にとってただしい選択なのだと思います。
だって、その選択は決して楽な道のりではないんですもの。
先生にmicroTESEをして頂いた旦那や私にとって、本当に心が救われた先生のコメントでした。
本当に本当にありがとうございます(^-^)
御飯ま美味しかったー☆(^-^)v
Unknown (○子)
2014-07-31 07:51:22
英クリニックでお世話になっております。
私達夫婦も結婚14年目、治療歴も10年を超え
今年初めに初めて授かった我が子も
染色体異常により妊娠5ヶ月で死産して
年齢的にも最後の望みをかけて
頑張っています。

先生の番組も拝見し、沢山寄せられる
ブログコメントも拝見しました。
色々な意見はあると思いますが私も
藁をも掴む想いの今、今回の発表を聞いて
正直羨ましいです。
切に子供を生みたいと思っている人が
どんなに頑張っても生めない辛さは
経験した人にしかわからない。
言葉ではちっぽけ過ぎて伝えられない。
そんな人を助ける事が何故いけないのか…
簡単に出した答えじゃないことが何故
わからないのか…
石川先生これからもどうか少しでも
多くの人に幸せを掴ませて下さい!!
私もボーダーラインです。 (小金井市民)
2014-07-31 12:50:07
私もボーダーラインに今たたされてます、先月の採卵はロング法により15個採卵し八個は正常の卵のうち、あまり授精が進んでないのが二個。卵は七個奇形ありました。これが35の現実です。主人もボーダーラインすれすれ。私も主人も高齢だからしかたないけど、やっぱり議会や行政が妊よう性の低下を抜きにして助成金制度をつくり、男子の問題を戦後長い間放置してきたからこそ問題だとかんじます。こなき三年は去るを重く受け止めてるのは男性不妊の家庭だからこそAIDを使わざるえないのは現実なのに、医者を増やしていくことや助金制度の見直し、全面保険適用をなぜ先にマスコミは考えないのでしょうか?それらを踏まえてのAIDだとかんじます。正常な精子そして卵子について語れる性教育を今こそ望みます。
Unknown (ともみ)
2014-07-31 12:56:53
私の旦那は2回の精液検査で2回とも精子0個でした。
無精子症と診断されてからいろいろと調べました。

ここからどのように治療をしていくのか、その治療でも良い結果が出なかったら次の選択肢は何なのか。

子供を普通には望めないとわかってからとっても苦しかったです。まだ治療への第一歩を歩き出そうとしている段階ですが、できる限りのことはしたいと思います。

患者さん(私たち)、その家族、そして望まれて生まれてくる赤ちゃんが幸せならこの選択肢も視野に入れたいと思い始めています。

先生の病院に8月初めてお世話になります。
どうかどうか希望の光がありますように。
救われました (匿名)
2014-07-31 17:11:38
先生の意見に心救われました。涙が止まりません。ありがとうございます。いつも応援しています。
Unknown (あこ)
2014-08-04 21:15:22
石川先生、ありがとうございます。
心ない言葉のあまりの多さに傷つきながら、ネットでたくさんの方の意見を見ていました。
当事者がその決断をするまで、どれだけ絶望を味わい、どれだけ悩み苦しんだか…
何も知らない人達に侮辱されるのは、本当に悲しい。

とは言っても、私は義父からの精子提供を受けているわけではないのですが。
第三者提供でのAIDを選んだ私は、義父からの精子提供を選んだ方々の気持ち、よーく分かります。

石川先生のこのブログ、とても嬉しいです。
言いたいことを代弁してもらいました。
本当にありがとうございます。
感動しました (さくら)
2014-08-12 23:46:59
私は当事者ではありませんが、妊娠を心より望み高度医療の力を借りた一人として、今回のニュースに対する感情的な心ないコメントに心を病んでおりました。
そんな中先生のブログを拝読し、心から感動いたしました。本当に、本当にその通りだと思います。
どうか、該当のご夫婦そしてそのご家族にはご自身の選択に自信と誇りを持っていただきたいです。

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