漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「氏シ」 <前かがみになった人>

2017年01月25日 | 漢字の音符
 シ・うじ  氏部
上段が昏コン、下段が氏
解字 上段・昏コンの甲骨文字第1字は、「人が前かがみになった形+日(太陽)」で、太陽が人のかがんだ形よりも低い位置にあり、日暮れの頃を表す。第2字は人の腕の先に横線(手)をつけた形で、これが後の氏にあたる[甲骨文字辞典]。篆文から第2字が変化した「氏+日」の昏になった。音符「昏コン」を参照。
 一方、下段の氏は甲骨文字では単独の形はない[甲骨文字辞典]。カッコ内は昏から日を省いた形を参考のため掲載した。金文で人の腕の手が肥点になり、篆文で肥点⇒横線になり、現代字で氏となった。氏は人が前屈みになった状態であり、金文に「示(祭壇=神)+氏(前屈みになった人)」 の祇(祭祀の意)があることから、祭祀の執行者である代表者の呼称⇒氏族全体の意味、という形で「うじ(氏)」の意が成立したものと思われる。
意味 (1)うじ(氏)。みょう字。姓。同じ血族の集団。「氏族シゾク」「氏名シメイ」 (2)神社の共同体の仲間。「氏子うじこ」 (3)姓名の下に添える敬称。「山田氏やまだシ

イメージ   「前かがみの人」 (氏・祇)
        「同音代替」 (紙・舐)
音の変化  シ:氏・紙・舐  ギ:祇

前かがみの人
 ギ  示部
解字 「示(祭壇=神)+氏(前かがみの人)」 の会意形声。前かがみになって神にいのること。土地の神、さらに天の神に対して国つ神の意となる。
意味 (1)くにつかみ。土地の神。「天神地祇テンジンチギ」(天つ神と国つ神。すべての神=神祇ジンギ) (2)梵語の音訳字。「祇園ギオン」(①昔、釈迦の為に建てられた寺。②京都の八坂神社及びその付近)「祇園祭ギオンまつり」(京都・八坂神社の祭礼)

同音代替
 シ・かみ  糸部
解字 「糸(いと状のもの)+氏(シ)」 の形声。音符の氏(シ)はどの字音の代替か、いろいろ調べたがぴったり合う字が見つからない。後漢末の字典である[釋名シャクミョウ]に、「紙は砥也。平滑なこと砥石の如し。後漢蔡倫、漁網木皮を以て紙と為す」とある。とりあえず、この説に従うと、氏(シ)は砥シ(平滑・砥石)に通じ、繊維を漉いて作った平らで滑らかな「かみ(紙)」をいう。
 紙の字は篆文にあることから、BC200年前から存在する。ところが蔡倫が紙を書写可能で実用的なものにしたのは、後漢時代のAD100年頃とされており、約300年の開きがある。紙が書写材料となる以前は包装紙だったとされ、前漢時代のBC50年頃の遺物が見つかっている。それは紙質が厚く麻の繊維の筋が確認されたという。後に見つかった紙は墓の中で鏡を包むのに使われていたという。以前の紙は字を書く紙でなく、包み紙だったとすれば音符「氏シ」は、どんなイメージをもって同音代替されたのか、興味深いテーマである。
意味 かみ(紙)。「和紙ワシ」「洋紙ヨウシ」「紙幣シヘイ」「紙背シハイ」(紙のうら)「紙幅シフク」(紙のはば。定められた原稿用紙の分量)
 シ・なめる・ねぶる  舌部
解字 「舌(した)+氏(シ)」 の形声。シは匙シ(さじ)に通じ、匙に食べ物をのせて口にいれ舌で触れて味わうこと。舌でふれることから「なめる」意となる。
意味 なめる(舐める)。ねぶる(舐る)。「舐筆シヒツ」(筆をなめる)「舐犢シトク」(親牛が子牛をなめる。犢トクは子牛)
※味わう意の「なめる」は、「嘗める」を使う。
<紫色は常用漢字>                
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