漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「畏イ」<杖を振り上げる鬼>と 「猥ワイ」「隈ワイ」

2020年09月28日 | 漢字の音符
 イ・ワイ・エ・おそれる  田部           

解字 甲骨文は、鬼の面(田の字)を被った人が、杖のようなものを手に持ち振りあげている形。甲骨文の意味は、「刑具を持った鬼。信仰の対象になっている」とある[甲骨文字辞典]。金文は杖を下におろした形。恐ろしい鬼が杖を振り回すかたちから、それを見て、人が、おそれる意を表す。また鬼は鬼神としての一面もあることから、うやまう意ともなる。篆文から形が変わり、下部が長の下と似たかたちとなった。現代字は「田+長の下部」の形。漢字検索の手掛かりとなる部首は「田」。
覚え方 た()いち()れ()の()はらい()で畏イ
意味 (1)おそれる(畏れる)。「畏怖イフ」(畏も怖も、おそれる意)「畏縮イシュク」(おそれちじこまる)「後生可畏コウセイカイ」(後生畏る可(べ)し。後進の者は将来大人物になるかもしれないから畏れるべきである[論語])「畏敬イケイ」(おそれうやまう) (2)かしこまる(畏まる)。おそれ多い。うやまう。「畏友イユウ」(尊敬する友人)「畏愛イアイ」(うやまい親しむ)

イメージ  
 おそろしい鬼を人が「おそれる」(畏)
 鬼が杖を振り回し行動が「みだれる」(猥)
 「同音代替」(隈)
音の変化  イ:畏  ワイ:猥・隈

みだれる
 ワイ・みだりに  犭部
解字 「犭(いぬ)+畏(みだれる)」の会意形声。畏は、鬼が杖をふりまわし乱れた行動をする形、犭(いぬ)をつけた猥は、犬が乱れるように動くさまを、人に例えていう。秩序をみだす意から、みだら、けがらわしい意となる。
意味 (1)みだりに(猥りに)。秩序をみだして。むやみに。 (2)みだら(猥ら)。けがらわしい。「猥雑ワイザツ」(下品でみだらなこと)「猥褻ワイセツ」(みだらなこと)「猥談ワイダン」(性についてのみだらな話)

同音代替
 ワイ・くま  阝部
解字 「阝(おか)+畏(ワイ)」の形声。ワイは窐ワイ・エ(くぼむ。窪ワ・エ(くぼむ)から氵を省いた字)に通じ、阝(おか)がくぼんで曲がりこんだところをいう。
意味 (1)くま(隈)。山や川が曲がりこんだところ。奥まったところ。すみ。「隈曲ワイキョク」(すみ。くま)「界隈カイワイ」(そのあたりの奥まった所。そのあたり一帯。)「隈(くま)なく」(すみずみまで) (2)[国]くま(隈)。彩色を加えてぼかす。役者の顔の色どり。「隈取(くまど)り」(①ぼかし。②役者の化粧法)「隈笹くまざさ」(イネ科ササ属の一種。冬になると葉のふちが白く隈取られることから。熊笹とも書く)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れ、続いて調べたい漢字一字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音符「同ドウ」<まるい筒形... | トップ | 音符「侵シン」<はいりこむ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

漢字の音符」カテゴリの最新記事