漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「刃ジン」 <刀のやいば> と「忍ニン」「認ニン」「靭ジン」

2022年02月19日 | 漢字の音符
 ジン・ニン・は・やいば  刀部

解字  甲骨文は刀の先のほうに〇印をつけ、ここに切る部分である刃があることを示した指示文字(下の二股になった部分は刀の柄)。篆文は〇⇒短線になって刀の筆画の二画目に付いた。隷書(漢代)は短い線が斜め画と交差、旧字は斜め画と平行にノ印となり、現代字は交差した刃になった。刀は刀身の片側に刃がついており、刃の部分は鍛錬されて硬く刃先は鋭い。一方、刃の反対側のミネは厚く平らになっている。刃が両側にあるものを剣という。
甲骨文字の刀は、なぜ二股になっている方が柄なのか?

中国の古代刀は鍔(つば)の部分が伸びて柄の手を保護するようになっているものがあり、甲骨文字の刀はこのような鍔を描いているのかもしれない。[古代刀の検索サイトから]
意味 (1)は(刃)。やいば(刃)。切るために薄く鋭く加工した刀の部分。「刀刃トウジン」(刀のやいば)「刃物はもの」 (2)刃物で切る。「刃傷ニンジョウ」(刃物で人を傷つける)

イメージ  
 「刀の刃(は)」(刃・籾)
 「形声字」(忍・認・荵・靭・仞)
音の変化  ジン:刃・靭・仞  ニン:忍・認・荵  もみ:籾

刀の刃(は) 
<国字> もみ  米部
 籾
解字 「米(こめ)+刃(は)」の会意。刃のような尖った筋が外皮にある脱穀する前の米。
意味 (1)もみ(籾)。脱穀する前の外皮に包まれたままの米。もみごめ。「種籾たねもみ」(種子としてまく籾)「籾摺機もみすりき」(籾を摺って籾殻もみがらを取り去る機械) (2)もみがら。「籾殻もみがら」(脱穀して取り去った籾のから)

形声字
 ニン・しのぶ・しのばせる  心部
解字 「心(こころ)+刃(ジン・ニン)」の形声。ジン・ニンは、任ニン・ジン(たえる)に通じる。任に仕事などを引き受ける意味があるが、さらに仕事を引き受けて「たえる」意味がある。忍は耐える心、すなわち、しのぶ意となる。
意味 (1)しのぶ(忍ぶ)。つらいことを粘り強く持ちこたえる。「忍耐ニンタイ」(忍も耐も、たえる意)「忍従ニンジュウ」(がまんして従う)「忍辱ニンジョク」(恥をしのぶ)「忍苦ニンク」(苦しみをがまんする)「堪忍カンニン」(たえ忍ぶ。たえて許す) (2)むごい。「残忍ザンニン」 (3)[国]しのび(忍び)。しのばせる(忍ばせる)。めだたないように物事をする。「忍術ニンジュツ」「忍者ニンジャ
 ニン・みとめる  言部
解字 「言(ことば)+忍(たえる)」の会意形声。[字統]によれば、もと「言+刃」で[説文解字]に「なやむなり」とある字。認の字は[説文解字]になく、のち認識する(認める)意味で用いられるようになったという。
覚え方 「言(ことば)+忍(たえる)」で、耐えてねばり強く主張する意が転じて、主張が認められる意となる。
意味 みとめる(認める)。「認可ニンカ」「認定ニンテイ」「認識ニンシキ
 ニン  艸部
解字 「艸(くさ)+忍(たえる)」の形声。ニンという名の草。「荵冬ニンドウ」に使われる字。忍冬とも書く。
意味 「荵冬ニンドウ・すいかずら」とは、スイカズラ科のつる性常緑低木。忍冬とも書く。その葉は秋に少し残り冬を越すので「冬を耐え忍ぶ草」の意であり、生薬名となっている。解熱・利尿剤。また、花は金銀花といい薬用。「荵冬酒(忍冬酒)ニンドウシュ」(スイカズラの茎葉を干したものを焼酎にいれた薬用酒) 「荵冬文(忍冬文)ニンドウモン」(忍冬のようなつる草を図案化した文様)
 ※冬のスイカズラの写真は、GOOブログ「スイカズラ 冬を耐え忍ぶ姿 - 木曽Now2 」に紹介されている。
 ジン・ニン・しなやか  革部
解字 「革(なめしがわ)+刃(ジン・ニン)」の形声。ジン・ニンは、任ニン・ジン(たえる)に通じる。革カクは動物の皮を加工して、やわらかく強くした皮の加工品である「なめし革」をいい、靭ジンは、なめし革のようにしなやかで、かつ丈夫(たえる)なさまをいう。
意味 (1)しなやか(靭やか)。やわらかく強い。「強靭キョウジン」「靭帯ジンタイ」(骨の関節を結び付けている帯のような繊維性のやわらかく強い組織)「靭皮ジンピ」(樹木外皮のすぐ内側にある柔らかな部分) (2)[国]うつぼ(靭)。靫サイ・うつぼ(矢を入れて腰に付ける用具)の誤用。
仞[仭] ジン・ひろ  イ部
解字 「イ(ひと)+刃の旧字(ジン)」の形声。ジンは尋ジン(左右の手をひろげた長さ)に通じ、人が左右の手をひろげて長さを測ること。また、その長さ。仞は特に高さや深さの単位に使う。
意味 (1)ひろ(仞)。高さや深さの単位。周代で7尺または8尺。「千仞センジン」(=千尋)「千仞の谷」(千尋の谷。非常に深い谷) (2)はかる。高さ深さをはかる。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音符「言ゲン」<はっきりと... | トップ | 音符「金キン」<最初は銅の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

漢字の音符」カテゴリの最新記事