漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「米ベイ」<こめつぶ> と「迷メイ」と「粥シュク」<かゆ>

2021年08月04日 | 漢字の音符
 ベイ・マイ・こめ  米部         

解字   甲骨文の第一字は斜線と六つの点からなり、斜線が穀物の穂の枝の部分、六点がその実を表わし、実のついているイネ科の穂の象形。第二字は十に四つ点の形。この形が篆文に引き継がれ現代字の米になった。甲骨文字が使われた殷インで米は栽培されておらず、穀物の実の意味。日本では「こめ」の意となる。米は部首ともなる。現代中国ではコメは大米、アワは小米と表記される。
意味 (1)こめ(米)。よね。稲の実。「玄米ゲンマイ」「精米セイマイ」「米櫃こめびつ」「米穀ベイコク」(こめ。また、穀物一般) (2)メートル。長さの単位。「5米」(五メートル) (3)「亜米利加アメリカ」の略。「米国ベイコク

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 「こめ・穀物の実」
(米・粟)
 「形声字」(迷・謎・麋)
音の変化  ベイ・マイ:米  メイ:迷・謎  ゾク(会意):粟  ビ:麋

こめ・穀物の実
 ゾク・ショク・ソク・あわ  米部

解字 篆文は𠧪(実を示す記号)に米(穀物の実)がつき、細かい穀物の実の意。現代字は「覀(実の意)+米(穀物の実)」の会意で、細かい実をつけるあわ。粟は五穀の一つであり、穀物の総称としても用いられる。
あわ(粟)
意味 (1)あわ(粟)。イネ科の一年草。果実は小粒で黄色。 (2)穀類の総称。「粟帛ゾクハク」(穀物と絹織物)「粟米ゾクベイ」(穀物・粟と米)(3)つぶ。「粟散ゾクサン」(小さくて散らばる)「粟粒ゾクリュウ・あわつぶ」「粟立(あわだ)つ」(毛穴が粟粒のようにふくれる。鳥肌立つ)

形声字
 メイ・ベイ・マイ・まよう  辶部
解字 「辶(ゆく)+米(ベイ・マイ)」の形声。迷メイは慣用音で、漢音はベイ・呉音はマイ。マイは「昧」および「眛」の呉音であるマイ(くらい・はっきりしない)に通じ、ゆく道が暗くはっきりしないこと。すなわち、迷う意となる。「迷メイ・マイ」と「昧・眛マイ」の古代音は、ともに明紐脂部(復元音:miei)で同一。
意味 (1)まよう(迷う)。「迷路メイロ」「迷子まいご」 (2)こまる。「迷惑メイワク」 (3)奇妙な「迷答メイトウ
 メイ・なぞ  言部
解字 「言(ことば)+迷(まよう)」の会意形声。よくわからない言葉。新指定の常用漢字のため二点しんにょうだが、一点しんにょうも可。
意味 なぞ(謎)。なぞなぞ。「謎語メイゴ」(なぞを含んだ語)
 ビ・ミ・なれしか  鹿部

解字 甲骨文字は鹿の頭を発音を表す眉ビ(まゆ)にした字で、鹿の種類を指す文字。甲骨文字では鹿よりも捕獲頭数が多く、元は小型の鹿種を指していたと思われる[甲骨文字辞典]。金文も基本は甲骨文字を受け継いでいる。篆文になり「鹿(しか)+米(ベイ⇒ビ)」の形声になった。これは眉の発音を米に置きかえた字で、この字が現在に続いている。現在の意味は、「なれしか」「おおじか」となっている。
意味 (1)なれしか(麋)。おおじか。大型の鹿の一種。古くはトナカイの類をさすといわれる。「麋鹿ビロク」(大鹿と鹿) (2)眉(まゆ)に通じ、まゆ。「須麋シュビ」(=鬚眉シュビ。ひげとまゆげ) (3)湄(ほとり。みぎわ)に通じ、ほとり。みぎわ。川辺の草地。「河の麋(ほとり)に居る」(詩経・小雅) (4)糜(かゆ)に通じ、かゆ。「麋粥ビシュク」(かゆ。糜も粥も、かゆの意)
<紫色は常用漢字>

   シュク・イク <かゆ>  
 シュク・イク・かゆ  米部

解字 篆文は「米(こめ)+鬲レキ(三本足のうつわ)+左右にタテの波線」の会意。鬲は土製または金属製の三本足の煮沸用具。ここに米をいれ、たっぷりの水で煮ている形。左右の波線は立ち上る蒸気と思われる。この字が現代のシュク・イク(かゆ)で、左右の波線は弓二つになっている。現代字は下の鬲がとれた粥になった。
意味 Ⅰ.シュクの発音。かゆ(粥)。米に水を多めにいれて、やわらかく煮た食べ物。「豆粥トウシュク・まめがゆ」(大豆をまぜた粥)「茶粥ちゃがゆ」(茶の煎じ汁、または茶葉の袋をいれて炊いた粥)「粥腹かゆばら」(粥を食べただけの腹。力がはいらない意)
Ⅱ.イクの発音。(古語で売る意の字(𧶠イク・ショク(うりあるく)のイクという発音に通じ)ひさぐ(粥ぐ)。物を売って商売をする。「粥文イクブン」(文章を書いてお金をもらう)

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 「かゆ」
(粥・鬻)
音の変化  シュク・イク:粥・鬻
 シュク・イク・かゆ・ひさぐ  鬲部
解字 「鬲(三本足のうつわ)+粥(かゆ)」の会意。三本足のうつわで粥を炊くこと。粥の本字で「かゆ」を表す。
意味 (1)シュクの発音。かゆ(鬻)。=粥。 (2)イクの発音。ひさぐ(鬻ぐ)。売る。あきなう。「鬻売イクバイ」(物を売る。商売をする)

参考 米は部首「米こめ・こめへん」になる。漢字の偏(左辺)などについて、米や穀物を表す。常用漢字で10字、約14,600字を収録する『新漢語林』では101字が収録されている。主な字は以下のとおり。
常用漢字 10字
 米ベイ(部首)
 粉フン・こな(米+音符「分ブン」)
 粒リュウ・つぶ(米+音符「立リツ」)
 粗ソ・あらい(米+音符「且ソ」)
 粘ネン・ねばる(米+音符「占セン」)
 粧ショウ・よそおう(米+音符「庄ショウ」)
 精セイ・くわしい(米+音符「青セイ」)
 糖トウ(米+音符「唐トウ」)
 粋[粹]スイ・いき(米+音符「卒ソツ」)
 糧リョウ・かて(米+音符「量リョウ」)
常用漢字以外の主な字
 糊コ・のり(米+音符「胡コ」)
 粟ゾク・あわ(米を含む会意)
 粥シュク・かゆ(米を含む会意)など。

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

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