今日は「水晶の日本式双晶2」です。(2012.02.10に「水晶の日本式双晶」で一度書いておりました。)
水晶の日本式双晶は数多い鉱物の謎の中でも興味深い謎の一つだと思いますが、その日本式双晶の生成過程を物語る面白い標本がありました。
上の写真はブルガリアのマダン産の水晶の針状結晶の群晶です。面白い事にそれぞれの針状結晶の柱面には微細な針状結晶が張り付いています。そして、さらに面白い事に、写真の上の方に一つだけ目立った日本式双晶が付いています。
次の写真はその日本式双晶を正面にして撮ったものです。
次はその日本式双晶部分の拡大です。それをよく見てみると、非常に面白い現象が見えてきます。
次の写真で、それがどう面白いかがわかると思います。
それには、まず、右の方では針状結晶が日本式双晶の右の平板結晶に突き刺さっており、そして、左の方では針状結晶が日本式双晶の左の平板結晶に突き刺さり貫通しております。何と!面白い現象でしょうか!
この現象を見ていると、この日本式双晶は針状結晶ができた後で生成した事がわかると思います。それは突き刺さっているように見えますが、決してそうではなく、日本式双晶が後から針状結晶を取り囲むように成長した、と考えるのが自然だと思います。
そして、その日本式双晶の裏側にも微細な針状結晶が張り付いております。
その様を見ていると、まず最初に針状結晶の群晶が出来、次に日本式双晶が出来、最後に微細な針状結晶が出来たのだろうと推測されます。
ところで、ブルガリアのマダンには鉛と亜鉛の巨大な鉱脈が横たわっているそうで、そのマダン鉱床の閃亜鉛鉱には三つの世代が存在するらしく、世代ごとにその特徴が変わるらしいので、もしかすると、今日の水晶の生成過程の変化も関係しているのかもしれない!?、と思ってしまいました。
閃亜鉛鉱の特徴変化はどうも生成温度が次第に下がることと、鉄の含有率が低くなることに関係しているらしいので、その世代ごとの変化は同時に水晶にも影響を与えているはずです。そう考えると、日本式双晶の出来る成因の解明に繋がっていけるような気がしてしまいます。