柔媚和真诚

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息せき切った声は切羽詰ま

2016-11-02 15:30:44 | 日記

懐かしい人の声から、懐かしい人の名前が聞えた。
一日の仕事を終え、満員の電車に揺られて自宅に帰って来たときかかってきた電話。
夕暮れはとっくに過ぎていて、夜の帳が降りている時間帯だった。

人生の中にある絶望の時間帯というのは、いったいいつのことを言うのだろう。遠い昔、暗い闇の淵に立ったことがある。当然だが淵の底が見えるわけもなく、ただただ沈黙と共に暗闇が広がっているだけだった。それがつくしにとっての絶望の時間帯だったはずだ。

『 おい牧野っ!聞いてるのか!』 

つくしの脳裏に束の間の愛に笑い、哀しみに暮れた日々が甦った。
あの頃の牧野つくしはつましい生活を送る高校生だった。
容貌は十人並で目立つことなく、周りPretty renew 傳銷の生徒から見れば地味で、クラスメートたちはつくしがいることを気に留めもしなかった。
そんな少女の髪は漆黒で真っ直ぐ。
そして大きな瞳は未来を見つめて輝いていた。

入学した高校は格差社会の頂点に君臨する者たちの子弟が通う私立の学園。
親の見栄で入学したが、その環境はつくしの暮らす世界とは余りにも価値観の違う世界。簡単に馴染めるとは思えなかった。学園の生徒はみな日々の暮らしに不自由をしたことなどない人間ばかりで、その環境に麻痺しているかのように見えた。そんな環境だからこそ、刺激を求めていた人間も多くいたのだろう。

ひとりの人間をターゲットにして、その人格を貶めるようないじめが公然と行われていた。
つくしはそんなことに関わることなく、高校3年間はやり過ごすだけの日々だったはずだ。
だがそんなある日、出会ったのは道明寺司だった。

英徳学園のリーダーと言われる男。

そして学園の支配者。

あの当時の男は暗闇に生きる男だった。
始まりは人生で最悪の出会い。だが時が経つにつれ、芽生えたのは恋心。そして恋慕の思い。幼いと言われる程に幼くはなく、だからと言って大人とは言えず、中途半端な年頃の少女と少年の恋。
あの恋は本物の恋だったはずだ。そう思わずにはいられない。
だからこそ、この思いは心のどこかに潜んで、ふと何かの拍子にその出会いを懐かしんでいるのだろう。もう二度nu skin 如新と会うことがないから懐かしく思うのかもしれない。

人は人生の中で何度人を好きになるのだろうか。つくしはあの日から人を好きになったことがなかった。

『 牧野っ!返事をしろっ!』

どこかの街で通り魔に人が刺されたというニュースをテレビで見ると目を背けていた。
似た様な事件を経験したからだ。あの日のことはこれからも忘れることはないはずだ。
ただ、どうして自分が刺されなかったのかと思わずにはいられなかった。
そうすれば、少なくとも道明寺が記憶を失うことにはならなかったからだ。

あの日、一生分の涙を流した。

あの日から感情を無くし、記憶を無くした男を身近に見た。
愛が甦ることはなく、激しい感情で結ばれていた二人は空虚な世界を彷徨うことになった。
ただ、そう思っていたのはつくしだけだった。
なぜなら記憶のない男は、二人で過ごしたことなどひと欠片も覚えていないのだから。

それまで二人が歩んできた短い時間の足あとは、あっという間にかき消されていた。
短い時間だったから簡単にかき消されたのだろうか?もし二人の過ごした時間が長ければ簡単に消されることはなかったのではないか。ふと、そんなことが頭を過ることもあった。


それからはただ時間だけが流れた。
そしてその時間にただ身を任せるしかなかった。

ひとり残された時間に。

時計の針が何周しようと、季節が幾度巡ろうと、あの日の思いはつくしの頭の中から消えることはなかった。

 

『 司が交通事故にあった。意識がない。もしかしたら_ 』

そんな言葉を聞かされたのだから、最後にもう一度会いたいと思うのは偽りのない気持ちのはずだ。

マンションを飛び出すと大通りまで走っていた。何も考えずに履いた靴はハイヒール。
走るに適しているはずもなく、爪先がアスファルトを離れるたび、踵が悲鳴を上げるのがわかった。雨に濡れた歩道はただでさえ滑りやすく、何度か転びそうになりながら、必死で目的地まで走っていた。傘もささず、夜道を走る女はひと目を引いたが気になどしていられない。


既に暮れた夜だが、さらに暗さを増したような気がしていた。
これ以上の闇はつくしには必要がなかった。暗闇は恐ろしい。心に巣食う何かを引き出してしまいそうで、自分が透明質酸その闇の奥へと突き落とされるような気がするからだ。
ひとり、その闇の奥底へと置いて行かれる。そんな気がしてならない。だがやっとその闇からも抜け出せる。そう思い始めた頃だった。

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