【高齢の人たちを世話する】
「子供らよ,言葉や舌によらず,行ないと真実とをもって愛そうではありませんか」。
(ヨハネ第一 3:18)
親も成人した子どもたちも,どのように「災いの日々」に備えることができますか
どんな場合に,親は子どもからの積極的な助けを必要としますか
高齢の親の介護をしている人を助けるため,実際にどんなことができますか
昔は元気で自分のことは何でも自分でできた親がそうできなくなったとしたら,子どもの心は痛みます。
親が転倒して腰の骨を折ったとか,認知症の症状が出て徘徊しているとか,重い病気と診断された,ということもあるでしょう。
親としても,体や状況の変化に伴って人に頼らざるを得なくなるのは,受け入れ難いことかもしれません。
「女から生まれた人は,短命で,動揺で飽き飽きさせられます」。
(ヨブ 14:1)
では,何ができますか。どのように親を世話できますか。
高齢者の世話について,ある資料はこう述べています。
「老化の問題について話し合うのは容易ではないが,家族で対応策を話し合い,考えをまとめておくと,どんな事態にもよりよく対処できる」。
老化に伴う問題は避けられないので,そうした話し合いは非常に有益です。ある種の事柄は前もって準備し,決めておくことができます。
それは簡単なことではありませんが,そうした決定を下すため,どのように家族として協力できるでしょうか。
【「災いの日々」に備える】
ほとんどの高齢者の場合,自分で自分のことができなくなり,助けや介護を必要とする時が来ます。
「あなたの若い日に,あなたの創造者を覚えよ。わざわいの日が来ないうちに,また「何の喜びもない」。
と言う年月が近づく前に。太陽と光,月と星が暗くなり,雨の後にまた雨雲がおおう前に。その日には,家を守る者は震え,
力のある男たちは身をかがめ,粉ひき女たちは少なくなって仕事をやめ,窓からながめている女の目は暗くなる。
通りのとびらは閉ざされ,臼をひく音も低くなり,人は鳥の声に起き上がり,歌を歌う娘たちはみなうなだれる。
彼らはまた高い所を恐れ,道でおびえる。アーモンドの花は咲き,いなごはのろのろ歩き,ふうちょうぼくは花を開く。
だが,人は永遠の家へと歩いて行き,嘆く者たちが通りを歩き回る。こうしてついに,銀のひもは切れ,金の器は打ち砕かれ,
水がめは泉のかたわらで砕かれ,滑車が井戸のそばでこわされる。ちりはもとあった地に帰り,霊はこれを下さった神に帰る」。
(伝道の書・コヘレトの言葉 12:1~12:7)
そうなったら,親も成人した子どもたちも,どんな世話が最善で,何が行なえるかを見極めなければなりません。
家族全員が集まり,どんな助けが必要か,実際にどうするか,どのように皆で協力できるかを話し合うのは賢明なことです。
全員が,よく現実を踏まえ,率直な意見交換を行なう必要があります。親は幾らか援助を受ければ自宅で引き続き安全に生活できるでしょうか。
家族各自は責任を果たすために,どれほどのことができるでしょうか。
例えば,毎日親を世話できる人もいれば,経済的な援助ができる人もいるでしょう。一人一人が自分の役割を理解すべきです。
しかし,時と共にその役割は変化するかもしれず,交替で責任を果たすことも考慮する必要があるかもしれません。
実際に親の介護を始めたなら,親の病状についてできるだけ多くのことを知るようにしてください。
進行性の病気であれば,今後どんなことが生じ得るかを知ってください。
「賢い者は聴いて,さらに多くの教訓を取り入れ,理解のある者は巧みな指導を得る人である」。
(箴言1:5)
高齢者介護を扱う政府機関と連絡を取ってください。家族の負担を軽くし,より良い世話を可能にする地域的な介護支援の取り決めがないか,調べてください。
これからどうなるかを考えて,孤独感に襲われたり,気が動転したりするかもしれません。
そのような時には信頼できる友人に打ち明けてください。何よりも,神に心を注ぎ出してください。神は,どんな状況にも対処できるように,平安な思いを与えてくださいます。
「あなたの重荷を主(神)にゆだねよ,主(神)はあなたを支えてくださる。神は従う者を支え,とこしえに動揺しないように計らってくださる」。
(詩編55:22)
「何事も思い煩ってはなりません。ただ,事ごとに祈りと祈願をし,感謝をささげつつあなた方の請願を神に知っていただくようにしなさい。
そうすれば,一切の考えに勝る神の平和が,あなた方の心と知力を,キリスト・イエスによって守ってくださるのです」。
(フィリピ・ピリピ4:6,7)
高齢の親の世話に関してどんな選択肢があるかを,当人を含め家族が事前に調べておくのは良いことです。例えば,実際的なのは,どんな方法でしょうか。
親が子どもと同居することですか。介護施設に入ることですか。それ以外の方法がありますか。
実際的な方法が分かれば,老齢に伴って生じる「難儀と有害なこと」に備えることができます。(詩 90:10)
そうしないと,問題が生じた時に急いで決定せざるを得なくなるでしょう。
ある専門家は,「そのような決定をそのタイミングで下すのは,ほぼ例外なく,最悪なことだ」と述べています。
急いで決定することを迫られると,家族は緊張し,意見が衝突するかもしれません。
しかし,事前に決めておけば,状況の変化に対応することは容易になるでしょう。
「相諮ることによって計画は堅く立てられる。巧みな指導によってあなたの戦いをせよ」。
(箴言20:18)
今の生活について,またそれを変える必要があることについて親に話すには,勇気がいるかもしれません。
それでも,そういう話し合いが助けになった,と言う人は少なくありません。
なぜでしょうか。問題が生じる前であれば,難しい事柄でも話しやすく,敬意をもって相手の話を聞くことができます。
また,実際的な計画も立てやすくなります。
家族が自分の気持ちを率直に述べられるようなくつろいだ雰囲気があれば,互いを身近に感じ,愛の絆を確認できるでしょう。
高齢者はいつまでも人に頼らずに生活したいと思うものです。
しかし,必要が生じた場合にどんな世話を受けたいかを子どもに話しておくのは,非常に有益なことです。
【状況の変化に対応する】
高齢者の家族は多くの場合,親が主体性を保てるようにしたいと思っています。料理や掃除ができ,きちんと薬を飲むこともコミュニケーションもできるなら,
子どもが親の生活にいちいち口を出す必要はないでしょう。しかし,次第に歩行が困難になったり,買い物ができなくなったり,
物忘れがひどくなったりしたら,ふさわしい対応が必要でしょう。
高齢の人たちは,思考が混乱したりうつ的になったりすることがあります。耳や目が遠くなったり,もの忘れがひどくなったりします。
トイレをきちんと使えなくなることもあります。そうしたことが起こっても,良い方法はあるものです。早めに医者に診てもらいましょう。
子どものほうから積極的に働きかける必要があるでしょう。さらに,以前は親が自分独りで行なっていたことを積極的
に援助する必要が生じるかもしれません。親が最善の世話を受けられるよう,子どもは親に代わって話したり,書類の書き込みを援助したり,
病院などに車で連れて行ったりする必要があるでしょう。
「あなたの手に善を行なう力があるのに,それを受けるべき人から控えてはならない」。
(箴言3:27)
親の健康問題が一時的なものでないなら,親の介護の仕方や生活の仕方を変える必要があるかもしれません。
変化が少なければ少ないほど,親としては順応しやすいことでしょう。親元からかなり離れている場合は,兄弟姉妹か近所の人に定期的に訪ねてもらい,
親の様子を知らせてもらうだけで十分かもしれません。助けが必要なのは料理と掃除だけですか。家を少し改造すれば,もっと楽に,そして安全に移動したり入浴したりできますか。
ホームヘルパーがいれば,独りで生活できるかもしれません。それでも危険が伴うのであれば,常時助けが得られるようにすることが必要です。
状況はどうであれ,地元でどんなサービスを活用できるかを調べてください。
「勤勉な者の計画は必ず益をもたらし,性急な者はみな必ず窮乏に向かう」。
(箴言21:5)
2017-05-13の追記