乃南アサの『地のはてから』上下巻を読みました。
前に読んでたヤツの感想の前に出張中に読み終わった作品の感想を書きます。
今回の出張はまず大連に入って、そこから上海に飛行機で移動です。
この中国国内線、特に大連発の便が評判が悪いのです。
なぜ評判が悪いかというと、定時運行が出来ないのです。
つまりいつも遅れる。
今回も時間にあわせて搭乗口に行ったら、案の定遅れておりました。
19:10発のフライトだったので搭乗時間は18:40。
でも搭乗時間が30分くらい遅れ、でも搭乗して全員が乗ったのにも関わらず、
全く飛行機は動き出さない。
で、一時間以上乗客を乗せたまま止まっており、大体二時間遅れでフライトして、
上海に着いたのは11時くらいになってしまっておりました。
で、大連-上海で到着するのは市内に近い虹橋空港ではなく、遠い浦東空港なので、
タクシーで約一時間かけてようやく市内のホテルに到着。
というコトで、日付が変わったくらいにホテルにチェックインというコトになりました。
なモンで、その間仕事でも、と思ったのですが、何故かバッテリーがきれてしまって
おり、読書するしかなかったというわけで、上下巻を読み終えてしまいました。
で、感想はというと、面白かったです!
この作品は『ニサッタ、ニサッタ』という作品に出てきたお祖母さんの半生を描いた
モノで、明治終わりから終戦後くらいまでの、お祖母さんが生まれてから旦那が
亡くなるくらいまでを描いております。
『ニサッタ、ニサッタ』ではかなり趣深いお祖母さんとして描かれておりましたが、
その半生はどうだったのか?に、作者もこころを魅かれたのでは?です。
福島の富農に生まれた父親と実家と縁の薄い母親。父親は家を出て東京に行き、
相場に失敗して実家にも迷惑をかけ、知床のウトロの近く(現在の距離感で)の
イワウベツに入植します。
当時の政府の出した甘言にのって入植した土地は、原生林に覆われ熊笹が生え茂る
とても人力で開拓出来るような土地ではありません。
更にそこをなんとか拓いたら、バッタが度々襲来し、入植者たちを飢えさせます。
そんな過酷な土地ながら、そこを故郷として育った主人公のとわは、アイヌの少年と
知り合い、いろいろなことを教わり、ただ父親の転落と母親の苦悩を見ながらも
すくすくと勝気に育っていきます。
父親の死、母親の再婚、口減らしのための奉公と奉公先の破たん、アイヌの少年との
再開、戦争、身近な人の死、結婚と、出産等々…。
所謂『激動の時代』を悪戦苦闘して乗り越えてきて発する一言、『生きていれば
なんとかなる』というとわ祖母ちゃんの言葉の重みがこの作品に詰まっております。
一時期住んでいた北海道。
でも知床には何回かしか行ったコトはありません。
札幌に住んでおりましたが、冬の寒さと雪はかなり難儀しました。
今の時代でそうなのですから、開拓時代の知床といったら、なんでこんな場所に
人間が住んでいられるのか不思議なほどです。
でもそんな環境のなかでも、必死に生きていこうとする姿と、その後の生き抜いた
姿というのは、本当に人間の凄味を感じられると思います。
そんな姿を上手く描写してくれる乃南さんは、やっぱり凄い作家さんだなぁと
思ってしまうのでした。
思わずさくっと読了してしまいましたが、今度もう一回、じっくりと読んでみたいなぁ
と思える作品でした。